理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-44-4
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起立板を使用したストレッチ時間の違いが脊柱形態と重心動揺に及ぼす影響
梶原 侑馬森田 正治黒川 幸雄
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抄録

【はじめに,目的】立位における脊柱のアライメント・可動域・平衡機能は腰痛に影響を与えるとされている。リハビリテーションや健康増進の現場では様々な運動介入が行われているが,難易度が高く目的とした効果が得られないものも存在する。そこで今回,実施頻度が多く簡便な下腿三頭筋静的ストレッチ(SST)が筋硬度及び脊柱アライメント・重心動揺に及ぼす影響について検討した。【方法】整形外科疾患を有さない健常男性31名を対象とした。平均年齢は24.3±3.2歳,平均身長は170.8±5.6 cm,平均体重は64.2±7.2kgであった。足関節訓練起立板を使用し,対象者は起立板調整角度30度で自重を利用しSSTを60秒及び120秒で行った。60秒と120秒の順序は無作為とし,各介入は10分以上休息をとった。SST介入前後の測定として,下腿三頭筋の筋硬度は筋弾性計PEK-1(井元製作所)を用いた。また,脊柱測定はSpinal Mouse(インデックス社)を用い,胸椎後弯角,腰椎前弯角,仙骨傾斜角,可動域の値を採用した。重心動揺はグラビコーダGS-7(アニマ社)を使用し,開眼にて,足位は閉足直立とした。統計解析として,下腿三頭筋SSTの介入前後変化は一元配置分散分析反復測定法を用い多重比較(Bonferroni法)も行った。腰椎アライメントあるいは可動域と重心平均中心変位あるいは総軌跡長との相関分析はピアソンの積率相関分析を用いた。有意水準は5%とした。【結果】下腿三頭筋の筋硬度はSST後に有意差を認めなかった。脊柱のアライメントにおいて,胸椎後弯角はSST後の有意差を認めなかったが,腰椎前弯角・仙骨傾斜角は120秒SST介入後に有意に高値を示した。前屈可動域はSST介入後に腰椎で有意に高値を示した。伸展可動域は有意差を認めなかったが胸椎・腰椎において可動域が大きくなる傾向にあった。開眼重心動揺において外周面積・総軌跡長・単位面積軌跡長では有意差を認めなかったが外周面積では増大傾向,総軌跡長では低下傾向,単位面積軌跡長では低下傾向にあった。SST後の重心平均中心変位は有意に前方へ移動した。腰椎アライメントあるいは可動域と重心平均中心変位あるいは総軌跡長の間には相関関係を認めなかった。【結論】生理的腰椎前弯不足・可動域低下は腰痛など様々な障害を引き起こすことが報告されている。本研究において120秒のSSTは,腰椎前弯不足を改善させ,脊柱特に腰部の可動域改善に有効であった。SSTは筋硬度には影響を与えなかったが,足圧中心の前方変位を増加させた。SST効果は期待できたが,足圧中心前方移動が腰椎アライメント・可動域の要因にまでは及ぼさなかった。120秒以上のSSTがニュートラルポジションの崩れを改善させ腰痛改善・予防に有効である可能性が示唆された。

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