理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-RS-01-6
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口述演題
徳島県理学療法士会会員の喫煙率および喫煙に関する実態調査
田野 聡高岡 克宜鶯 春夫柳澤 幸夫
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抄録

【はじめに,目的】慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,日本における死因の第10位であり,徳島県においてはCOPDの死亡率が全国的に高い。COPDの原因の9割は喫煙であり,治療の基本は禁煙である。現在,多くの医療関連団体が喫煙率を調査し,禁煙宣言を行い受動喫煙防止に努め,喫煙率が低下している。しかし,同じ医療従事者である理学療法士(PT)の喫煙率を調査した報告は少ない。そこで本研究では,徳島県PT会会員の喫煙率および喫煙に関する実態を把握することを目的とした。【方法】対象は,徳島県PT会会員で施設等に所属する773名とした。調査期間は,平成27年3月16日から2か月間とし,自記式アンケート調査票を送付し郵送にて回収した。調査項目は,基本属性,喫煙状況,施設の禁煙対策,呼吸器疾患に対する理学療法実施の有無,COPDの原因の認知度,徳島県のCOPDによる死亡率の認知度の他,喫煙者に対してはファーガストロームニコチン依存度(FTND)や自覚症状(咳,痰,息切れ)とした。分析は単純集計とクロス集計を行い,現在の喫煙の有無により2群に分け,施設の禁煙対策,呼吸器疾患に対する理学療法実施の有無,COPDの原因の認知度,徳島県のCOPDによる死亡率の認知度をχ2検定を用いて比較検討した。なお,有意水準は5%未満とした。【結果】607名(男性396名,女性211名)について分析した(有効回答率78.5%)。喫煙者は133名(21.9%),過去喫煙者は53名(8.7%),非喫煙者は421名(69.4%)であった。喫煙率を性別・年代別にみると,男性は30.8%で50歳代(45.5%)が最も多く,女性は5.2%で20歳代(7.0%)が最も多かった。施設の禁煙対策として敷地内全面禁煙は367名(60.5%)であった。呼吸器疾患に対する理学療法実施者は288名(47.4%)で,喫煙者が有意に少なかった。COPDの原因の認知度は「知っている」472名(77.8%)で,喫煙者の「知っている」が有意に多かった。徳島県のCOPDによる死亡率の認知度は「知っている」208名(34.3%)であった。喫煙者のFTNDの平均値は2.2±1.8点,ニコチン依存中等度以上は32名(24.1%)であった。自覚症状が「ある」および「ときどきある」と回答した者は,痰86名(64.7%),咳83名(62.4%),息切れ48名(36.1%)であった。【結論】今回の調査により徳島県PT会会員の喫煙率は21.9%であり,国民の喫煙率19.3%よりも高く,男性においては医師や看護師に比べて高い結果となった。喫煙者の多くが,COPDの主原因が喫煙と知りながら喫煙を続けており,喫煙者の6割はCOPDの症状である咳と痰を有していた。PTは,COPDだけに限らず喫煙が起因となるがん,虚血性心疾患,脳血管障害などの疾患に携わることが多い。人々の健康を守る医療従事者としての立場からも,自身の禁煙を心がけ,受動喫煙防止に取り組むことは重要である。今後,禁煙に関する啓発活動を行い,喫煙の害に関する正しい知識を得ることにより,PTの喫煙率の引き下げを図りたいと考える。

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© 2016 日本理学療法士協会
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