理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-RS-10-3
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高齢呼吸器疾患患者の身体機能に身体虚弱が及ぼす影響
平塚 智康河野 裕治辻 有佳子伊藤 瞬平青柳 陽一郎加賀谷 斉堀口 高彦
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抄録

【はじめに,目的】高齢患者では加齢や病態特性の影響から骨格筋量が低下するため,身体虚弱の状態に陥りやすいことが報告されている。本邦の人口動態の高齢化に伴い,今後は高齢呼吸器疾患患者が急増することが予想されることから,高齢患者のデータの蓄積が急務となる。これまでに我々は高齢呼吸器疾患患者を対象に,予後予測因子である6分間歩行距離(6MWD)には10m歩行速度と膝伸展筋力に中等度の相関があることを報告した。特に身体虚弱者の運動能力には筋力の影響が大きいと考えられるが,これまで十分に検討されていない。本研究では,高齢呼吸器疾患患者における6MWDと身体機能指標との関連に身体虚弱が及ぼす影響を検討した。【方法】研究デザインは関連研究とした。症例登録は2014年4月以降に当院呼吸器内科よりリハビリ依頼があった入院患者連続症例とし,本研究では2015年7月までの登録症例を解析対象とした。評価項目は属性として性別,年齢,Body Mass Index(BMI),改訂長谷川式簡易知能スケール(HDS-R),身体機能として握力,膝伸展筋力,10m歩行速度,6MWD,Timed up and go test(TUG),Functional reach test(FRT)を計測し,肺機能は肺活量,%肺活量,一秒率,最大吸気圧,最大呼気圧を計測した。解析には,まず対象を身体虚弱の有無で2群に分けた。身体虚弱の判定にはBMI<18.5,10m歩行速度>0.8m/s,握力が男性<26kg,女性<18kgを用い,3項目中2項目以上該当する虚弱群,それ以外を非虚弱群とした。両群の比較にはMann-Whitney検定にて,また6MWDと各指標との関連にはPearson積率相関係数を用いて検討した。統計ソフトはSPSS ver 21.0を用い,有意水準は5%とした。【結果】虚弱群は52例(男性25例,82.2±7.5歳),非虚弱群は52例(男性36例,72.9±9.7歳)であった。虚弱群は非虚弱群と比べ身体機能,肺機能ともに有意に低値を示した。6MWDと各因子との関連は,両群共に10m歩行速度,膝伸展筋力,TUG,最大吸気圧,最大呼気圧で有意な相関を認めた。膝伸展筋力は非虚弱群より虚弱群で強い相関を認めた(虚弱群:r=0.679 vs非虚弱群:r=0.406)が,その他の因子との相関係数には両群で0.1以上の差を認めなかった。【結論】虚弱患者は非虚弱患者と比べ身体機能,肺機能共に低かった。さらに6MWDと下肢筋力の関連は虚弱患者でより強いことが示された。高齢呼吸器疾患患者に対する運動容能改善を目的とした運動処方には,まず身体虚弱の有無を確認し,虚弱患者には下肢筋力トレーニングを中心としたプログラムが有効である可能性が示唆された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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