理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-SK-04-2
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マッスルスーツ着用時の荷物持ち上げ動作における重量物の重さ,足幅の違いが腰部に及ぼす影響
山本 悠太劉 振井上 奈美小川 晃毅柿内 睦福田 章人小林 宏森田 正治
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抄録

【はじめに,目的】荷役運搬作業は腰痛をはじめとする業務上疾患を引き起こす原因となっている。藤村らは介護領域でも作業関連疾患の危険を認め,作業負担の軽減の重要性を指摘している。東京理科大学で開発されたマッスルスーツ(以下MS)は持ち上げ動作時の腰部負担を目的として開発され,実際に幾つかの企業や団体で使用されているが,活用方法の妥当性に関する先行研究は少ない。そこで今回,健常成人男性を対象にMSの装着の有無と重量物の重さや足幅の違いとの関連を確認することを本研究の目的とした。【方法】対象は整形外科的疾患をもたない健常成人男性3名(年齢22.0±0.0歳,平均身長172.6±3.1cm,平均体重62.9±1.6kg,BMI21.1±1.6)とした。20kg,30kgの重量物を用いて足幅を0cm,20cm,40cm,60cmに変化させた計8種類で持ち上げ動作を計測した。取っ手付きコンテナ(縦36.2cm,横52.8cm,高さ15.8cm床から持ち手までの距離12.0cm)を用意し,重錘により重量を20kgと30kgに設定した。視線を正面に向けた裸足解剖学的姿勢を開始肢位とし,高さ40cmの台上の重量物を持ち上げた時の腰部モーメントを各5回測定し,その平均を算出した。持ち上げ時は肘関節伸展位で上肢による代償が出現しないように指示した。計測はVICONを使用し,計測後にMSの装着感及び動作を行いやすい足幅について聴取した。【結果】腰部モーメントのピーク値はMS非装着時が1723.4 Nm,MS装着時が1390.9 Nmであり,MS装着時の腰部モーメントは非装着時に比べて低値を示した。MS非装着時の腰部モーメントは20kg時1442.8Nm,30kg時2003.9Nmであった。MS装着時の腰部モーメントは20kg時1209.4Nm,30kg時1572.4Nmであった。重量物の重さによる腰部モーメントの変化では,MS装着時,非装着時ともに20kgよりも30kgの重量物を持ち上げた時の方が腰部モーメントは高値を示した。足幅を変化させた際のMS非装着時の腰部モーメントは,0cm幅1837.8Nm,20cm幅1668.7Nm,40cm幅1682.0Nm,60cm幅1705.0Nmであった。MS装着時はそれぞれ0cm幅1351.7Nm,20cm幅1390.0Nm,40cm幅1503.2Nm,60cm幅1318.6Nmであった。足幅の違いによる腰部モーメントの変化では,MS非装着時は各重量ともに20cm,40cm時の腰部モーメントが低値を示した。対象者に足幅の広さに応じた持ち上げやすさについて聴取したところ,足幅20cm,40cmでの持ち上げ時が最も動作が容易との回答が得られた。【結論】荷物の持ち上げ時の足幅と腰部モーメントは密接な関係にあり,人間はしらずしらずのうちに腰部負担がかからない足幅をとっていると考えられる。しかし,MS装着時はいずれの重量物においても足幅による腰部モーメントの違いは見られなかった。このことからもMSは重量物や足幅の影響に関係なくさまざまな環境下での適用可能な装置として有用であることが確認できた。

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