理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-SK-05-4
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歩行能力と短下肢装具に対する使用満足度の関係性について
強瀬 敏正森田 直明澤野 良太脇本 忠春田口 孝行
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キーワード: 生活期, 短下肢装具, 満足度
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抄録

【はじめに,目的】脳卒中片麻痺患者は短下肢装具を使用することで歩行の安定性,歩行速度が改善し,生活期に移行しても装具が継続的に使用されている。しかし,彼らの歩行能力は様々で,使用環境も変化しており装具に対するニーズや満足度は多様化している。本研究では生活期片麻痺患者を対象として歩行能力と装具に対する満足度との関係性を明らかにすることを目的とした。【方法】対象者は介護老人保健施設のデイケアにてリハビリを利用し,短下肢装具を使用する片麻痺者26名(年齢63±9歳)とした。MMSEにて23点以下,失語症や検査項目が実施できない者は除外した。検査項目として,TUG・6MD・至適/最大歩行速度(至適歩行速度/最大歩行速度の割合:%)を実施した。また,満足度は装具の使用によって得られる歩行の①スピード②安定性③耐久性それぞれの満足度を4段階(1:満足していない・2:あまり満足していない・3:満足している・4:非常に満足している)で聴取した。分析の際には1・2の回答者を満足していない群(A群),3・4の回答者を満足している群(B群)に分類した。統計ソフトR 3.2.0を用い,①~③についてTUG・6MD・至適/最大歩行速度におけるA・B群間の差の検定にMann-Whitney U検定を用いた。有意水準は5%とした。【結果】①~③のA・B群の人数はそれぞれ,①6名,20名,②2名,24名,③5名,21名であった。①で満足していない者(A群)は満足している者(B群)よりも6MDの値が有意に低かった。(p<.05)③で満足していない者(A群)は満足している者(B群)よりも6MDの値が有意に低く,TUGの値は有意に高かった。(p<.05)①,③で至適/最大歩行速度は有意差を認めなかった。②はA群が2名のため統計処理は行わなかった。【結論】①スピード,③耐久性に満足していない者の,6MDが有意に低かったことや,③耐久性に満足していない者のTUGが有意に高かったことから,通常であればこれらの満足を得るために歩行距離の延長や動的バランス能力・複合動作能力を向上させる理学療法の実施が考えられる。しかし,今回の対象者の特性として生活期片麻痺患者であるため,身体機能面へのアプローチでは大きな改善は困難と思われる。そのため,患者の歩行を必要とするニーズを正確に把握し,環境整備や生きがい支援も含めた生活再構築への介入の工夫が必要と考えた。今回,至適歩行速度と最大歩行速度の差(割合)を算出することで,「速く歩くこともできる」という意識が装具使用歩行の①スピードの満足に繋がると仮説を立てたが棄却された。このことから生活ニーズに合致した歩行速度の獲得が満足を得るためには必要であると考えた。②安定性に関しては,短下肢装具は歩行の安定性を補う効果があることから,装具に対する安定性への満足は概ね得られていたと考えられる。

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© 2016 日本理学療法士協会
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