理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-SN-02-3
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肥満を持つ子どもの身体特性と多職種チームアプローチの紹介
横山 美佐子伊東 真理田久保 由美子加藤 チイ橘田 一輝田久保 憲行
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抄録

【はじめに,目的】肥満は生活習慣病の危険因子であるが,小児においても同様であり動脈硬化性変化や早期死亡のリスクも報告されている。また,学童期の肥満は,高率に成人期の肥満に移行するため早期から肥満の改善・予防が重要である。しかしその要因は,運動不足,過食,心理的問題,家庭環境,遺伝的要因など多岐にわたるため,運動療法,食事療法のみではその改善が困難である。そのため,平成24年より学童期の肥満児に対して,医師・理学療法士・管理栄養士・看護師の多職種によるチームによる取り組みを開始した。今回,その取り組みを紹介し,その一環として肥満を持つ子どもの身体特性を検討したので報告する。【方法】対象は,中等度から高度肥満の児7名(男/女:4/3)(肥満群)と対照群として健常な児12名(男/女:4/8)(非肥満群)とした。多職種チームによる取り組みは,長期休み中の1日のプログラムと2週間毎の週末に行う90分プログラムで構成する。持続可能で遊戯性のある楽しみながらできる中等度の運動療法を60分実施している。身体特性を明らかにするため,プログラム開始前に臨床的背景因子として,身長,体重,体脂肪率を測定した。また,得られた値から肥満度を算出した。身体特性として,動脈硬化変化の指標として血管内皮機能(RHI・F-RHI),運動機能の指標として握力,等尺性膝伸展筋力の体重比,身体活動量を平日および休日の1か月分の歩数,運動強度別(1-3METsを低強度・4-6METsを中等度・7-9METsを高強度)の総身体活動時間を測定して1日の平均値を算出した。統計学的手法として,臨床的背景因子および身体特性における両群間の比較には対応のないt検定を用い,有意水準は危険率5%未満を有意差ありとした。【結果】体脂肪率および肥満度で,肥満群は非肥満群に比べて有意に高値であった(39.5±14.4vs18.2±4.8%,47.0±3.2vs1.9±9.2%)。F-RHIは,肥満群(-0.025±0.10)は非肥満群(0.17±0.23)と比べて有意に低下していたが,RHIは両群間に有意な差はなかった。等尺性膝伸展筋力は,肥満群(41.5±14.2%)は非肥満群(65.0±12.3%)と比べて有意に低下していた。握力は,両群間に有意差を認めなかった。身体活動量は,平日の歩数は,肥満群は11073±2185歩,非肥満群は15518±3180歩,休日の歩数は,肥満群は8106±1569歩,非肥満群11175±4601歩で,平日,休日ともに肥満群は非肥満群に比べて有意に低かった。また,運動強度別の平日と休日の検討では,平日の中強度活動のみ肥満群(31.0±6.1分)は非肥満群(43.0±11.6分)に比べて有意に低下していた。【考察】肥満児は,非肥満児と比較して下肢筋力が低下しているため,平日の学校生活において活動が困難で,休み時間は教室内で過ごすことが多いと考えられる。さらに,活動量の低下により,血流の増大が望めず,血管内皮機能の成長を阻害している一因となっている可能性がある。

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© 2016 日本理学療法士協会
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