理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-NV-09-5
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口述演題
脳卒中患者の退院時転倒恐怖感に影響を与える因子の検討
西尾 尚倫石山 大介篠原 淳照屋 康治山本 裕子山田 実
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抄録

【はじめに,目的】転倒恐怖感は脳卒中発症後に生じやすい心理状況であり,日常生活活動の制約や社会参加困難を引き起こす要因であると報告されている。しかしながら,脳卒中患者を対象に転倒恐怖感の関連要因の検討を行った研究は少なく,身体機能や精神機能,高次脳機能障害などがどのように関連しているかについては不明な点が多い。そこで本研究は,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)を退院する脳卒中患者の転倒恐怖感に影響を与える因子を多変量解析によって検討することを目的とした。【方法】デザインは横断研究とした。対象は,2014年11月から2015年8月までに当院回復期リハ病棟を退院した脳卒中患者42例(年齢53.9±12.6歳,女性26.2%)とした。除外基準は,Mini-Mental State Examination(以下,MMSE)23点以下の症例,質問紙に回答不能な重度な高次脳機能障害を有する症例とした。退院時の調査項目として,転倒恐怖感を日本語版modified Falls Efficacy Scale(以下,mFES)を用い評価し,最高四分位(132点)以上を転倒恐怖感なしと定義した。その他の調査項目は,年齢,性別,Body Mass Index(以下,BMI),発症から入院までの期間,入院期間,MMSE,Brunnstrom Recovery Stage(以下,BRS),感覚障害の有無,高次脳機能障害(注意障害,半側空間無視,記憶障害,失語症)の有無,視覚障害の有無,10m最大歩行速度,6分間歩行距離,Functional Independence Measureの運動項目合計点(以下,m-FIM),Self-rating Depression Scale(以下,SDS)とした。なお,SDSは先行文献を参考に40点以上をうつ症状ありと定義しカテゴリー化した。統計解析としては,従属変数にmFESを,説明変数にその他の変数(単変量解析によって有意差が認められた項目)を投入したロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行った。なお,有意水準は5%とした。【結果】mFESの最高四分位を従属変数とした単変量解析にて有意差を認めた変数は,年齢,BMI,入院期間,BRS,10m最大歩行速度,6分間歩行距離,m-FIM,SDSであった。またロジスティック回帰分析の結果,6分間歩行距離(単位変化量50m)とSDSが抽出され,それぞれのオッズ比(95%信頼区間)は1.92(1.19-3.09),0.09(0.01-0.60)であった。【結論】回復期リハ病棟退院時の脳卒中患者における転倒恐怖感には,身体機能に加えて精神機能も関連していた。このことから,退院時の転倒恐怖感を軽減させるためには,入院中に身体機能を向上させるだけではなく,退院に向けた精神的サポートも合わせて進めることが重要であると考えた。

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© 2016 日本理学療法士協会
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