理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-NV-14-3
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口述演題
脳卒中患者の体力改善のための至適運動強度推定式の考案
後藤 健志黒木 恒輔須間 理恵子横枕 崇藤原 和志中濵 亮士中村 隼平阿比留 友樹立丸 允啓友田 秀紀森山 雅志小泉 幸毅赤津 嘉樹山本 美江子大野 重雄
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抄録

【はじめに,目的】体力改善には嫌気性代謝閾値(以下,AT)に相当する運動強度が有効であると報告され,ATの測定には呼気ガス分析器が用いられるが,脳卒中患者ではリスク管理の側面から適応に課題があり,結果的に至適運動強度の設定が困難で客観的な体力評価・改善計画が立案しにくい。本研究の目的は,臨床で評価しやすい項目を用いてATに相当する体力改善のための至適運動強度推定式を考案することである。【方法】対象は平成27年1月~9月に当院回復期病棟に入院した脳卒中患者の内,測定データに欠損値のない18名(年齢56.4±10.6歳,男性13名・女性5名,下肢Br.stageIV1名・V4名・VI9名・麻痺なし4名)とした。評価項目は属性(年齢,性別),身体特性(身長,体重,BMI),能力評価{6分間歩行テスト,30秒椅子立ち上がりテスト,体重あたりの非麻痺側膝伸展筋力(以下,膝伸展筋力),1日あたりの平均歩数(以下,歩行量)}とした。膝伸展筋力の測定は等尺性筋力測定器を用いた。また呼気ガス分析器AT-1100を用いて,下肢エルゴメータを使用し10watt/分の漸増負荷による運動負荷試験を行った。呼気ガス諸量は酸素摂取量(以下,VO2),二酸化炭素排出量(以下,VCO2),分時換気量(以下,VE),AT時のwatt・時間等を算出した。ATの決定は呼吸商≧1かつVE/VCO2が増加せずにVE/VO2が増加する点とした。解析はAT時のVO2と各項目間の相関係数を分析した。またAT時のwattを目的変数,年齢,性別とステップワイズ法により選択された項目を説明変数とし,多重共線性の問題に配慮して重回帰分析で推定式を算出した。推定式の精度は自由度調整済決定係数(以下,調整済R2)により検証した。統計ソフトはJMPver.9を用い有意水準は5%とした。【結果】AT時のVO2は10.7±3.1ml/kg/min,wattは52.7±19.0,時間は201.9±123.4secで,AT時のVO2と有意な相関のあった項目は歩行量であった。ステップワイズ法より選択された項目は体重,膝伸展筋力,歩行量であった。重回帰分析から得られた推定式は,AT時のwatt=(0.31*年齢)+(18.6*性別)+{(年齢-56.4)*(性別-0.72)*(-0.58)}+(1.06*体重)+(43.3*膝伸展筋力)+(0.002*歩行量)-77.1であった(調整済R2=0.72)。【結論】結果よりAT時のVO2と歩行量に有意な相関があり,体力と歩行量との関連が示唆された。また年齢,性別,体重,膝伸展筋力,歩行量から下肢エルゴメータでの高精度の至適運動強度推定式が得られた。下肢エルゴメータの駆動力は体重,膝伸展筋力に関連があると考えられ,歩行量は下肢エルゴメータのwattと正の相関があると報告されており(加藤,2005),推定式に体重,膝伸展筋力,歩行量が選択されたことは妥当であると考えた。今回の推定式は,日常的に評価しやすい項目で構成できたことから,幅広い対象者に普及できる可能性が示唆された。今後更に年齢や性別での層別化と合わせて評価項目を再考し,推定式の妥当性・精度向上を行いたい。

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© 2016 日本理学療法士協会
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