理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-NV-07-2
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リハビリテーション適応となった被殻出血症例の頭部CT画像による運動機能の予後予測―第2報―
―初期画像と経過画像のCT分類による運動機能および能力とその変化の調査―
長谷川 絵里小笹 佳史迫 力太郎藤井 杏美石井 舞子下名 久美子田畑 隼人大野 範夫
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抄録
【はじめに,目的】被殻出血の運動機能予後は脳卒中外科研究会のCT分類が有用である。しかし,回復期リハビリテーション病棟(以下,回リハ病棟)入棟時では必ずしも発症時のCT画像が参照できるとは限らない。そこで我々は,入棟時のCT画像(血腫が吸収しきれていない,高吸収域と低吸収域が混在している画像)から運動機能予後を予測できることが回リハ病棟のような急性期病棟の後方施設にとって有用であると考えた。第1報において,発症時のCT画像(以下,初期画像)と完全に低吸収域となったCT画像(以下,経過画像)を脳卒中外科研究会のCT分類を参考に,血腫吸収の傾向を調査した。今回は,初期画像と経過画像から退棟時の運動機能および能力とその変化を調査した。【方法】対象は,2010年10月から2014年7月に回リハ病棟入棟した被殻出血症例83例中,初期画像と経過画像が得られた45例。年齢は64.0±11.8歳(平均±標準偏差),性別は男性28例,女性17例。平均在院日数は129.4±53.7日,発症から入棟までの平均日数は26.0±13.5日。発症時のCT画像を,脳卒中外科研究会のCT分類で,分類し(以下,初期分類),経過画像を初期分類に照らし合わせてI~V(以下,経過分類)に分類した。調査項目は,退棟時の屋内歩行能力と下肢Brunnstrom recovery stage(以下,BRS),初回・終回のBBSとFIM運動項目とした。歩行能力は可能と困難に分け比較した。下肢BRSはI~VIを比較した。BBSは望月らによる歩行可能となるカットオフ値47点を参考に,初回値を3段階に終回値を3段階とし6グループに分けて比較した。FIM運動項目は全て監視(5点)の65点を基準とし,初回65点未満で終回65点以上,初回・終回ともに65点未満,初回・終回ともに65点以上の3群に分け比較した。検討に際し,初期分類のIIa,IIbはII,IIIa,IIIbはIII,IVa,IVbはIV,Va,VbはVとした。初期分類I~Vと経過分類I~Vを対応させ,それぞれの項目を人数の割合で比較,検討した。【結果】歩行能力は初期分類と経過分類で完全に一致したものではなかったが,類似した傾向が得られた。ほかの3項目でも初期分類と経過分類で概ね似た傾向となった。その中で下肢BRSでは経過分類IにおいてstageIII,経過分類IIにおいてstageII,経過分類IIIにおいてstageIIIの人数に明白な違いがみられた。FIM運動項目は初期分類・経過分類IVとVで異なった傾向となった。【結論】今回の調査項目において,初期分類と経過分類を比較すると概ね似た傾向が得られた。下肢BRSで違いが認められたことに関しては,今回画像分類において,松果体レベルでの損傷部位の検討のみにとどまったが,錐体路の損傷を表す放線冠での低吸収域の検討をする必要性を感じた。また,低吸収域の大きさも影響があることが個別症例の検討から認められた。今後,松果体レベル以外の画像と低吸収域の大きさの検討を加味することで,より詳細な運動予後予測ができることが示唆された。
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© 2016 日本理学療法士協会
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