理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-NV-14-1
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脳卒中片麻痺者の歩行自立度に影響を及ぼす歩行中の関節運動の分析
~各相における三次元動作解析装置を用いての検討~
佐瀬 隼人石井 健史伊藤 貴史
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抄録

【はじめに,目的】脳卒中片麻痺者では,歩行自立の可否が自宅復帰を規定する主要因となることが多く,理学療法では歩行自立を目標にした治療プログラムを実施する機会が極めて多い。歩行自立を判断する基準として,歩容や歩行速度・持久力,筋力や感覚,高次脳機能,環境因子等が報告されている。特に脳卒中片麻痺者の歩行分析では,歩行周期の変化や下肢の関節運動を矢状面上で捉えた報告が多い。一方,体幹回旋運動が歩行能力向上に寄与した報告や歩行予後に体幹機能が関連するという報告もある。しかし,体幹の関節運動を含めて歩行解析をした報告は少ない。歩行中の体幹回旋運動は身体のバランスに関与しているという報告もあり,水平面上での関節運動の特徴を捉えることは重要と考えられる。そこで本研究では,脳卒中片麻痺者の歩行中の関節運動を分析することで,歩行自立を判断する一助にすることを目的とした。【方法】対象は,入院または通所リハビリを利用していた脳卒中片麻痺者18名とした。包含基準はT字杖と短下肢装具を使用し歩行見守り以上で可能なものとした。除外基準は,両側に運動麻痺を呈している者,重度の高次脳機能障害を有する者,体幹及び下肢に著明な整形外科的疾患の既往がある者,研究方法の指示理解が困難な者とした。対象者の属性は,男性14名,女性4名,平均年齢(標準偏差)62.5(11.1)歳,歩行自立群9名,見守り9名であった。測定方法は,10m快適歩行を実施してもらい,三次元動作解析装置(酒井医療株式会社製,マイオモーション)を用いて各関節運動を測定した。測定項目は,胸椎・腰椎・股関節・膝関節の各関節角度とした。関節角度の測定時期は,歩行開始5m以降で定常歩行している歩行周期の麻痺側立脚初期(以下,heel contact)と麻痺側立脚後期(以下,toe off)の各相それぞれ3回の平均値を算出した。統計解析は,測定項目に対して,2群間の差をみる目的で対応のないt検定及びMann-WhitneyのU検定を実施した。なお,有意水準は5%とした。【結果】統計解析の結果,麻痺側toe off時の腰椎の屈曲角度(測定値[°]:自立群11.4/見守り群18.1)及び胸椎の非麻痺側への回旋角度(自立群9.8/見守り群2.5)に2群間の有意な差を認めた(p<0.05)。その他の項目においては有意な差を認めなかった。【結論】今回の研究において,歩行自立群は見守り群に比べ,麻痺側toe off時に有意に腰椎を伸展及び胸椎を非麻痺側へ回旋していることが明らかになった。歩行中の骨盤と胸部は反対方向へ回旋することによりバランスを保っているといわれている。歩行見守り群では体軸内回旋が十分に行えておらず,正中を推進方向へ近づけることができずバランスが不安定になっていると考えられる。今回,下肢関節角度に有意な差を認めなかった。これに関しては,装具を使用したことで股関節・膝関節が制御できていたことが一因として考えられる。

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