理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-NV-17-3
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クモ膜下出血後患者における超早期離床と脳血管攣縮の関連
本間 敬喬濵本 学陶山 昭彦
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抄録

【はじめに,目的】近年,早期の日常生活動作(以下:ADL)獲得と社会復帰を図るため,十分なリスク管理のもとに可能な限り早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められている。しかし,クモ膜下出血(以下:SAH)後患者において離床時期は明確でない。また,SAH後の重篤な合併症として,遅発性脳血管攣縮があり,一般的に発症4~14日後に生じるとされている。近年,発症14日以内のSAH患者における早期離床の有用性が報告されているものの,超早期からの離床が脳血管攣縮の有無やその他の事象へ影響している報告は少ない。今回,一般的に脳血管攣縮期開始とされる発症4日後より早い,超早期の離床が脳血管攣縮の出現やその他の事象に影響を与えているか検討した。【方法】平成24年10月~平成27年10月までに入院したSAH患者の内,死亡例や離床が困難であった症例を除外した91例(男性34例・女性57例,58.9±13.8歳)を対象とした。離床定義を車椅子乗車日とし,4日以内の早期離床群(早期群26例)とそれ以降の遅延離床群(遅延群65例)と群分けを行った。これら2群間で年齢,性別,在院日数,脳血管攣縮の有無,退院時modified Rankin Scale(以下:mRS)を比較した。また重症度にはHunt&Kosnik分類,Fisher分類を用いた。統計解析にはMann-WhitneyのU検定,t検定,Fisherの正確検定を用い,有意水準は5%未満とした。【結果】両群間における年齢性別に有意差は認めなかった。脳血管攣縮の有無に関しては早期群26例中3例(11%),遅延群65例中17例(26%)と早期群においてやや少ない傾向だが有意差は認めなかった(p=0.17)。在院日数に関しては早期群28.5±9.2日,遅延群62.4±54.0日となり(p<0.01),退院時mRSは早期群0.3±0.9,遅延群1.6±1.9となり(p<0.01),早期群において退院時の転帰が良いという結果になった。また,重症度としてのHunt and Kosnik分類は早期群1.9±0.7,遅延群2.4±0.8となり(p<0.01),Fisher分類は早期群2.3±0.8,遅延群3.0±0.6(p<0.01)と早期群において重症度が低い傾向であった。【結論】本研究の結果より,脳血管攣縮期以前である発症4日以内の超早期離床は,脳血管攣縮出現と関連が少ないことが示唆された。その他,早期離床群の特徴としては,入院時の重症度が低く,理学療法介入がより早期から可能であったことから,在院日数が短縮し退院時の転帰が良好な傾向にあることが推察された。入院時重症度が低い症例において,十分なバイタル管理下で,脳血管攣縮期以前から離床を行うことで,より早期にADLが拡大し,廃用予防や院内生活リズムが形成され,家族へ安心感を与えられると考えられた。これらより,SAH患者において超早期離床が脳血管攣縮の出現に関連性が少なく,安全な離床が可能であることが示唆された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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