理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-NV-21-2
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SPEX膝継ぎ手付長下肢装具を使用した2症例
~Gait Judge Systemによる筋電図波形を用いた歩行練習の報告~
西川 和宏成田 孝富勝谷 将史
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抄録

【はじめに,目的】長下肢装具(以下:KAFO)におけるSPEX膝継ぎ手では,ジョイントのネジ調節により軽度の膝屈伸可動性と膝伸展補助機構を求めることが可能とされている。しかし,SPEX膝継ぎ手における,角度設定の指標に関する研究報告はなされておらず,療法士も角度設定の評価判定に悩んでいる現状がある。そこで,今回脳卒中片麻痺患者がSPEX膝継ぎ手付KAFO装着時の膝継ぎ手の角度条件の違いによる下肢の筋電図波形の変化を検証し,今後のSPEX膝継ぎ手付KAFOでの適切な膝継ぎ手の角度設定における指標を導き出して歩行練習へ活用することを目的とした。【方法】症例1:放線冠出血の40歳男性,BRS:上肢II,手指II,下肢II。第52病日から当院入院。症例2:脳幹梗塞の50歳男性,BRS:上肢III,手指III,下肢II。第28病日から当院入院。2症例ともに感覚:表在深部とも中等度鈍麻,高次脳機能障害:明らかに障害は認めない。本人用のSPEX膝継ぎ手付KAFOを使用して,膝継手の固定(以下,膝固定)と,遊動(以下,膝5°,10°)にした条件で1週間間隔おきに計測を実施した。計測には,Pacific Supply社製のGait Judge Systemを使用した。歩行介助による下肢の筋活動をモニタリングした中で,膝継ぎ手の角度設定と筋電図波形による振幅と活動のタイミングが,正常歩行に近い筋活動のタイミングを認めた場合は良好な設定角度と判断した。筋電図の貼付場所は,大腿直筋(RF),内側広筋(MV),ハムストリングス(SM),前脛骨筋(TA)に貼付して記録した。また歩行はT字杖歩行で実施した。【結果】2症例ともに,正常歩行に近いパターンでの筋活動のタイミングと収縮様式が得られ,筋電図波形の振幅に関しても増大を認めた角度設定として,KAFO導入時(第61病日/第74病日)は膝固定の設定が良好な結果を認めた。第2期(第68病日/第88病日)では膝5°,第3期(第73病日/第116病日)では膝5°と足関節背屈5°遊動,第4期(第82病日/第123病日)では膝10°と足背屈5°遊動またはAFO足背屈5°遊動へと段階的に角度調整を行いそれぞれに良好な結果を認めた。【結論】今回脳卒中片麻痺患者2名において,身体機能の改善に合わせた膝継ぎ手の角度調節を行ったことで,正常歩行に近い筋活動のタイミングが筋電図波形から得られ,2症例とも歩行能力は順調に改善を図れた。これらは,今後のSPEX膝継ぎ手付KAFOを使用した歩行練習を行っていく中で,膝関節の段階的な自由度の制約を行うための指標となり,セラピストの主観的な判断だけで行われる歩行練習からの一助になると示唆される。また今回,介助歩行を行っていた際にセラピストが感じる下肢の筋活動の反応と,Gait Judge Systemの筋電図から得られる波形の反応においてもそれぞれ合致した結果を導き出せたことは今後の歩行練習にとっても有意義なものと考える。

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