理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-TK-08-4
会議情報

ポスター
当施設における車いす選定時の評価基準の検討
楠元 陽士當利 賢一當寺ケ盛 孟野尻 晋一坂本 佳山永 裕明
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】車いすの選定を考える場合,除圧動作の可否は車いすの種類や付属品を決定する上で重要な指標となる。しかし,この除圧動作の可否を一般的な観察のみで評価することは容易ではない。そこで今回,体圧分布測定器を用いて,圧力分布を可視化することで客観的にその可否を評価することを試みた。さらに,評価の簡便化のため除圧動作の可否を定期の身体機能評価の項目で表現できないかを考え,統計学的に検討した。【方法】対象は当施設入所中の脳卒中利用者21名とした。車いす上での除圧動作の可否は,座位での動的体幹運動の可否にて評価した。評価には,体圧分布測定器SRソフトビジョン分布版(住友理工株式会社)を用い,体幹の前屈,左右への側屈を行った際の座圧分布を測定した。開始肢位を足底接地の端座位で両上肢を組んだ状態とし,そこから最大到達範囲の前屈,側屈を行ってもらい開始肢位に戻るまでの座圧の変化を評価した。動的体幹運動の可否は,正確性を期するため,複数のセラピストにて判断した。各運動すべてにおいて座圧の変化が十分に観察できた者を除圧動作可能群,それ以外を除圧動作困難群とした。そして,この2群を定期の身体機能評価(10秒間立ち上がり回数,手すりあり・なしの立位保持時間,座位ステッピング回数)のいずれかを用い,簡便に判別することを目的にROC曲線を使用した。【結果】除圧動作可能群は9名,除圧動作困難群は12名であった。ROC曲線の結果より,10秒間立ち上がり回数,手すりあり・なしの立位保持時間,座位ステッピング回数の各曲線下の面積(AUC)は0.72,0.58,0.66,0.68であった。10秒間立ち上がり回数のカットオフ値は左上隅からの距離を利用した方法により3回であった。【結論】除圧動作困難群のほとんどは麻痺側への体幹運動が不十分であり,非麻痺側寄りの座圧分布をとっていたため,非対称性の座位姿勢から痛みや変形などを誘発しやすいと考える。このため,車いす選定の際には,座高,肘掛け,背張りなどの調整が可能でトータルコンタクトによる座圧分散効果,座位の安定性の向上を図りやすいモジュール型の車いすの選択が望ましいと考える。また,ROC曲線下の面積より,身体機能評価のうち10秒間立ち上がり回数が最も除圧動作可能群・困難群の判別に優れており,そのカットオフ値は3回であった。実際に除圧動作の可否を評価するために利用者の入所ごとに体圧分布測定器を用いることは容易ではないため,簡便な評価としてこの10秒間立ち上がり回数を用いることができれば,入所時の車いす選定を迅速に行う上で有用であると考える。今後は,本研究の結果に加え,下腿長などの身体寸法,駆動方法などを考慮して,保有する車いすの中から簡便かつ適切に車いすの選定が実施できるシステムの構築を目指していきたい。

著者関連情報
© 2016 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top