理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-ED-01-4
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口述演題
急性期でのリハビリテーション多介入が,大腿骨近位部骨折患者の在院日数と医療費に与える影響
~急性期・回復期を通して~
八木 保
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抄録
【はじめに,目的】日本の社会保障費抑制は喫緊の課題である。疾患別リハビリテーションも医療費の一端を担うが,これまでリハビリテーションと医療費の関係に着目した報告は少ない。また,病床機能の分化が進むなかで,急性期・回復期を通しての報告も少ない。今回,代表的な運動器疾患である大腿骨近位部骨折を対象とし,急性期でのリハビリテーション介入量がその後の在院日数と医療費に与える影響を検証することを目的とした。【方法】対象は大腿骨近位部骨折受傷後,急性期にて骨折観血的手術もしくは人工骨頭挿入術を実施し,同施設内にある回復期リハビリテーション病棟を経て2014年4月~2015年9月に自宅退院した71施設1,704例。15歳未満,死亡,リハビリテーション非実施,入退院時BI(Barthel Index)・入院経路・認知症高齢者の日常生活自立度判定基準・BMIが不明の患者を除外した。これらの患者を,急性期病棟での1日あたり単位数4.0単位を基準に2群(4.0単位以上:多介入群239例,4.0単位未満:少介入群1,465例)に分けた。まず患者背景として年齢,性別,BMI,入院時BI,Charlson Comorbidity Index,入院経路,認知症高齢者の日常生活自立度判定基準について両群に有意差があるか検証した(年齢,BMIはマンホイットニーU検定,その他はカイ二乗検定)。次に,有意差が認められた変数を共変量として傾向スコアマッチング法を実施した後,在院日数,退院時BI,BI利得,医療費の中央値を比較した。統計学的処理はウィルコクソンの符号順位検定を用い,有意水準はp<0.05とした。【結果】患者背景で有意差が認められた入院時BIと入院経路を共変量として傾向スコアマッチング法を実施した結果,各群239例となった。被説明変数のうち有意差が認められたのは,急性期在院日数(多介入群16.0日,少介入群22.0日,p<0.01),急性期医療費(多介入群1,371,352円,少介入群1,484,650円,p<0.01),回復期在院日数(多介入群37.0日,少介入群44.0日,p<0.05),総在院日数(多介入群58.0日,少介入群69.0日,p<0.01)であった。総医療費は有意差が認められなかった(多介入群2,529,610円,少介入群2,768,512円,p=0.157)。【結論】急性期で4.0単位以上の介入を行うことで,急性期・回復期を通して少介入群よりも短い在院日数で十分な利得を得ることができ,早期自宅復帰に繋がる。また,多介入による在院日数短縮が入院単価の高い急性期での医療費削減に寄与する。回復期および急性期・回復期を通しての総医療費には有意差が認められなかったが,回復期リハビリテーション病棟の診療報酬体系が出来高払いであり,在院日数短縮のインセンティブが働かないことも一因である。社会保障費増加が喫緊の課題として取り上げられるなか,医療費はリハビリテーションの価値を図る指標として重要である。
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© 2016 日本理学療法士協会
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