理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-ED-03-3
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口述演題
当院卒後教育における中堅層への教育活動の成果と課題
吉川 創松浦 道子新田 勉錦見 俊雄
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キーワード: 卒後教育, 中堅層, 卒後研修
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抄録

【はじめに,目的】当院は平成27年度80名の療法士が在籍し,うち理学療法士(PT)は35名(男18名,女17名)である。理学療法士数の増加に伴う卒後教育体制の確立は重要課題で,当院においても療法士の急増を受け,平成24年度より教育体制の構築を進めている。当院の教育体制は,OJTを重視し,初期教育群(1~3年目相当)は基本的臨床能力の習得,中期教育群(4・5年目相当)は自己完結臨床能力の習得,後期教育群(6~9年目相当)はチームリーダー能力の習得を目標と段階的に区分けをし,各々のレベルに応じた研修・課題を課している。しかし,中堅層にあたる後期教育群に関しては,管理職者や外部講師による臨床現場指導以外は自己研鑚が主となっている。そこで今回,新たに後期教育群に対し,リーダーの人材育成,責務の認識を深めることを目的に,卒後教育の一環として集合研修を実施した成果と課題を報告する。【方法】対象は後期教育群PT5名(男5名)で平均年齢32歳。平均経験年数8.6年。研修テーマは,リーダーシップと人材育成に焦点を絞り,内容はグループワークを中心に,リーダーシップの理解,チームビルディング等の座講を含め二回実施。研修の効果判定はカーク・パトリックの4段階評価を用い,レベル1として質問紙法5項目に対し5段階(評定尺度法5点~1点)の満足度調査,レベル2としてレポート課題を課し理解度を評価。レベル3として行動変容度評価を行い,レベル4の成果の可否,達成度合を確認した。【結果】カーク・パトリックの4段階評価のレベル1:研修の満足度調査の平均点は①研修内容4.4点②難易度3.2点③理解度4.0点④職務活用4.6点⑤研修時間2.2点で,研修満足度としては概ね高い結果であった。レベル2:理解度評価では,キーワードが,レポートに反映されているかで習得度合を評価した。キーワードはリーダーシップ,コミュニケーション,マネジメントを挙げ,全員が課題内にいずれも組み込まれていた。レベル3:行動変容に関しては,研修後全員が,特にコミュニケーション面と後輩指導で意識的に行動していると回答を得た。レベル4:行動変容からの成果として,各々が臨床現場で意識的に行動していることが確認されたが,具体的な業績指標の設定が新たな課題として挙がった。【結論】今回のグループワークを取り入れた全員参加型の研修は,対象者相互の連帯感やチーム認識の強化,個人の意識向上が図られ,今後の臨床現場教育に活かせる場になったと考える。中堅層の卒後教育において,臨床現場指導に併せ適宜集合教育を組み入れ,意見交換や振り返りの場を設けることが,自己研鑚と併せ,日々の臨床への新たな意識付けになると考えられ,中堅層への教育の一つとして,グループワークを中心とした集合研修の有効性が示唆された。また,今回の研修結果を踏まえて,研修後の客観的評価として捉える方法を確立することが課題となった。

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© 2016 日本理学療法士協会
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