理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-03-4
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口述演題
運動器理学療法における膝痛に関する機能分類の現状
文献レビュー
市川 崇亀尾 徹
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抄録

【はじめに,目的】

運動器理学療法の臨床実践において,診断名・病理と機能障害が解離していることは明らかである。また,一つの治療手技ですべての患者の問題を解決することは困難である。機能障害が理学療法の重要な主要対象であるにも関わらず,診断名・病理や一つの治療手技に対して効果検討を行う研究報告が散見される。この問題に対して,海外では理学療法の対象を機能障害の側面からSubgroup化し,それ毎に介入・研究を行っている。このことにより,治療効果に改善が認められたとの報告が多数存在する。今後,日本の運動器理学療法のエビデンスをより構築していくには,海外と同様にSubgroup化し,同じSubgroup毎に効果検討を行う必要があると考える。そこで本研究は,理学療法士により機能分類し,分類に基づいて治療している方法が現状どのようなものがあるのかを,膝痛に着目し,文献レビューを行うことを目的とした。

【方法】

対象言語は英語と日本語とした。英語と日本語の7つのデータベースを用い,2016年10月10日までの系統的検索を行った。検索用語は膝痛,分類,理学療法/徒手療法/徒手理学療法/徒手的理学療法に相当する用語を英語と日本語で選択した。対象は膝痛を有する患者に対して,機能分類に基づいて治療を行っている症例報告および機能分類に関する研究論文とした。

【結果】

631編の論文から,最終的に8編が選択され,4つの機能分類が同定された。8編のうちMovement System Impairmentを使用した論文が4編,Mulligan Conceptを使用した論文が1編,Mechanical Diagnosis and Therapyを使用した論文が2編,McConnell Testを使用した論文が1編であった。日本語の論文は0編であった。

同定された4つの機能分類に基づいた治療の特徴を調査した。その結果,Mechanical Diagnosis and TherapyはLoading Strategy,他のMulligan Concept,McConnell Test,Movement System ImpairmentはModified Movement Strategyを機能分類する際の特徴としていた。また,それぞれ適応や禁忌は異なっていた。日本で作成された機能分類は無かった。

【結論】

本研究で,膝痛に関して理学療法士が使用している機能分類は4つ同定された。また,それぞれ適応・禁忌が存在し,一つの機能分類に基づいた治療ですべての患者に対応することは出来ないと判断された。これより,患者の問題を解決するには様々な機能分類に基づいた治療を適材適所で癒合して使用することが必要であるといえる。さらに疼痛メカニズムや敏感度,重症度,症状の動態を考慮すると,今回同定された機能分類に基づいた治療でも対応できない患者もいると推察される。また,本研究より同定された機能分類は,海外の社会的文化や風習,身体的特徴を主とし作成されたものであり,日本のそれとは異なる。そのため今後,日本独自にSubgroupを修正し,日本で臨床実践していくためのフローチャートの作成が望まれる。

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© 2017 日本理学療法士協会
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