国際保健医療
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研究報告
フィリピン人技能実習生のメンタルヘルスに関連するリスク要因:文化変容方略に着目して
前田 憲次
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2018 年 33 巻 4 号 p. 303-312

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抄録

目的

  本研究は、文化変容方略に着目しつつ、フィリピン人技能実習生のメンタルヘルスに関連するリスク要因を明らかにすることを目的とした。

方法

  メンタルヘルス(精神健康度、仕事と家庭生活の満足度)、文化変容方略(日本文化の重視度とフィリピン文化の重視度)、文化変容ストレス、ソーシャルサポート、仕事のストレス及び個人の基本的属性を変数として用い、フィリピン人技能実習生に対する(個別)自記式質問紙調査を行った。質問紙に回答した180名(男性115名、女性49名、性別未回答16名)のうち、回答に欠損のなかった132名(男性95名、女性37名)のデータを分析した。

結果

  分析の結果、性別、婚姻状況、子供の有無、日本語レベル、文化変容方略及び文化変容ストレスが、フィリピン人技能実習生のメンタルヘルスに有意に関連していた。さらに、ソーシャルサポートが、日本語レベルと文化変容方略(日本文化の重視度)に有意に関連していた。

結論

  (a)性別(女性より男性)、(b)独身であること、(c)子供がいること、(d)日本語レベルが低いこと、(e)日本文化を重視する程度が低いこと、(f)文化変容ストレスの程度が高いことは、フィリピン人技能実習生のメンタルヘルスを悪化させるリスクとなり得ることが示唆される。ソーシャルサポートが低いことは、日本語レベルと日本文化の重視度を下げるリスクとなり得ることが示唆される。したがって、日本語レベルを高めつつ、日本文化に慣れ親しんでもらえるようなサポートを行うことは、フィリピン人技能実習生のメンタルヘルスを保持増進するための方策の1つであると考えられる。さらに、母国の家族からの心理的サポートを得やすい環境づくりも重要であると考えられる。

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© 2018 日本国際保健医療学会
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