理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-05-4
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口述演題
変形性膝関節症保存例における多角的評価の因子構造
理学療法初期評価時の痛みに着目した因子の検討
田中 創西上 智彦今井 亮太森岡 周
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抄録

【目的】

変形性膝関節症(膝OA)では,単に加齢に伴う構造的変化だけでなく,機能障害,認知的要因,心理社会的要因などが痛みや能力障害の低下に関与する。したがって,多面的な評価が必要であることは言うまでもない。しかし,実際にこれらの多角的評価がどのような因子構造を持つかは明確でない。本研究の目的は,膝OA患者における痛みに着目した初期評価時の多角的評価項目を探索的因子分析することで因子構造を検討することである。

【方法】

対象は医療機関7施設を受診し,膝OAと診断された46名(男性:15名,女性:31名,平均年齢:69.1±11.6歳)とした。理学療法開始時に評価を実施した。評価項目は年齢,性別,膝OAの重症度分類(K-L分類),安静時・運動時における痛みの強度(Numerical Rating Scale:NRS),痛みの破局的思考(Pain Catastrophising Scale:PCS),痛みに対する自己効力感(Pain Self-Efficacy Questionnaire:PSEQ),膝関節疾患特異的尺度(日本語版Oxford-knee score:OKS),身体知覚異常(The Fremantle Knee Awareness Questionnaire:FreKAQ)とした。最尤法・バリマックス回転にて因子分析を行い,初期解の固有値およびスクリー基準をもとに因子数を求め,各因子を解釈可能なものに定義した。なお,統計学的検討にはRを使用した。

【結果】

因子分析による固有値およびスクリー基準から6因子モデルが妥当と判断された(累積寄与率76%)。1因子はPCSが高値であり「破局的思考」と定義した(寄与率21.2%)。2因子は安静時痛,動作時痛NRSとOKSが高値であり「痛み関連能力障害」と定義した(寄与率13.7%)。3因子は年齢とKLが高値であり「加齢変化」と定義した(寄与率11.8%)。4因子は性別が抽出され「性差」と定義した(寄与率10.4%)。5因子はFreKAQが高値であり「自己身体知覚」と定義した(寄与率9.5%)。6因子はPSEQが高値であり「自己効力感」と定義した(寄与率9.4%)。全ての評価項目はいずれかの因子に属していた。

【結論】

膝OA保存例の初期評価時における痛みに着目した多角的評価項目の因子分析の結果,6因子モデルが妥当であった。今回抽出された「破局的思考」,「痛み関連能力障害」,「加齢変化」,「性差」,「自己身体知覚」,「自己効力感」は痛みを多面的に捉える上で必要な評価項目であることが示唆された。また,全ての評価項目がいずれかの因子に属しており,今回の多角的評価は膝OA患者の初期評価において包括的に診ていくための十分条件であることが示唆された。しかし,累積寄与率は76%であり,その他の因子を包括した視点および評価が望まれる。

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© 2017 日本理学療法士協会
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