理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-17-3
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口述演題
JHEQは人工股関節全置換術(THA)後の満足度を捉えるか?
八木 宏明砥上 恵幸富永 俊克城戸 研二
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抄録

【はじめに,目的】近年,患者立脚型の評価法の有用性が認識され,わが国においては,日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(以下,JHEQ)が導入されるようになった。JHEQは,痛み,動作,メンタルの3つの下位尺度から構成され,「痛み」は,Visual Analogue Scale(以下,VAS)および6つの質問,「動作」と「メンタル」は,それぞれ7つの質問で成り立っている。「痛み」のVASおよび各質問は,0から4点に点数化され,最高84点となり,数量化され,点数が高いほどQOLが高いとされる。また,もう1つの特長として,股関節の状態(不満足度)に関する評価があり,これは合計点には含まれず,単独の指標として,VASにて評価を行い,点数が高いほど不満が強いことが示される。本研究の目的は,THA後の患者満足度を,JHEQを用いて,果たして本当に捉えることが可能かを検討することを目的とした。

【方法】2015年1月から2015年12月の期間に,当院整形外科にクリニカルパスにて入院し,THA(前外側進入)が施行され,自宅退院をした,39例(男性:4例,女性:35例,平均年齢:67.5±8.1歳),39関節を対象とした。再置換例は除外した。退院時および術後3ヶ月の整形外科医師による診察時(以下,術後3ヶ月)に,JHEQによる評価(自己記入)を実施し,退院時と術後3ヶ月におけるJHEQの変化と,それぞれの時期における,不満足度とJHEQ合計点および下位尺度間の関連性を検討した。統計学的手法は,t検定またはWilcoxonの符号付順位和検定,Spearmanの順位相関係数を用いて,統計学的解析には,R.2.8.1を使用し,有意水準は5%未満,相関係数0.5以上を相関ありとした。

【結果】術後平均在院日数は,22.3±5.7日,術後3ヶ月時点は,平均105.8±12.1日であった。退院時と術後3ヶ月におけるJHEQの変化では,不満足度および合計点,下位尺度間に有意な差は認められなかった。不満足度とJHEQ合計点および下位尺度間の関連性は,退院時では,不満足度と痛みのみに負の相関(ρ=-0.50 p=0.00)(痛みが強いと不満足度は高い)が認められた。術後3ヶ月では,全ての項目間で,相関は認められなかった。

【結論】福井らは,THAにより,最も期待できる効果は,痛みの改善であり,術後の満足度に最も反映されていたものも,痛みの改善であったと述べており,本研究も同様の結果となった。THA後のJHEQを用いた調査では,術前と術後を比較した報告が多く,その場合は,有意な改善を示しているが,本研究では,退院時と術後3ヶ月という術後間での比較であり,JHEQにおいて,有意な改善を認めなかったと推察する。本研究の結果では,疼痛が改善され,動作が遂行しやすくなり,メンタルが充実してきているTHA後においては,満足度をJHEQで捉えることは,難しいのではないかと考えられた。THA後の満足度を幅広く捉えるには,ICFでいうところの「参加」面からの検討が必要であると考える。

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© 2017 日本理学療法士協会
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