理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-19-2
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口述演題
腰部脊柱管狭窄症術後のJOABPEQと歩行能力,体幹筋力の回復経過
1年間の前向きコホート観察研究
竹中 裕人神谷 光広西浜 かすり伊藤 敦貴横地 恵太鈴木 惇也後藤 慎森 匡宏伴 留亜橋本 美紀鈴木 達也古田 国大花村 俊太朗花村 浩克杉浦 英志
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抄録

【はじめに,目的】

欧米において腰部脊柱管狭窄症(Lumbar Spinal Stenosis(LSS))術後の治療成績の回復経過は,RDQ(Roland Morris Disability Questionnair)などを用いた機能障害やVASを用いた疼痛に関してのレビューが報告されている。本邦では日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOA Back Pain Evaluation Questionnaire(JOABPEQ))が開発されたが,JOABPEQの術後回復経過を検討した研究は少なく,歩行能力や体幹筋力を検証した研究は見当たらない。本研究では,LSS術後のJOABPEQと歩行能力,体幹筋力の回復経過を明らかにすることを目的とした。

【方法】

研究デザインは,1施設の前向きコホート観察研究である。対象は2013年11月から2016年3月までに,LSS手術を受けた121症例の内,術後1年まで観察可能であった44名(67.2±9.4歳,男性28名)とした。術式は,除圧術24名,除圧固定術20名であった。主要評価項目はJOABPEQ,副次的評価は,歩行能力を6分間歩行距離(6MD:6 Minute Walking Distance),体幹筋力,RDQ,疼痛を腰痛・下肢痛・下肢しびれのVASとした。測定時期は,術前,術後6ヶ月,12ヶ月とした。JOABPEQは,疼痛関連(疼痛),腰椎機能(腰椎),歩行機能(歩行),社会生活(社会),心理的障害(心理)から構成される質問紙評価である。体幹筋力は,徒手筋力計mobie(酒井医療社製)を用い,座位で伸展と屈曲の等尺性筋力を測定した。統計学的解析は,Rコマンダー2.8.1を用い,反復測定の分散分析を行った。また,有意水準は5%とした。

【結果】

JOABPEQ全ての項目は,術前に比べ6ヶ月,12ヶ月で有意に改善していた(p<0.01)。JOABPEQ得点の平均値の経過は(術前,6ヶ月,12ヶ月),疼痛(56,90,92),腰椎(65,82,82),歩行(39,86,86),社会(44,79,78),心理(52,72,72)であった。6MD,体幹伸展筋力,RDQ,腰痛・下肢痛・下肢しびれのVASも同様に,術前に比べ6ヶ月,12ヶ月で有意に改善しており(p<0.01),体幹屈曲筋力は,術前に比べ12ヶ月で改善傾向にあった(p=0.06)。

【結論】

JOABPEQと歩行能力,体幹筋力は,RDQ,疼痛と同様の回復経過であることが明らかとなった。Fritsch.(Eur Spine J.2016)は,LSS術後のRDQと疼痛は術後3ヶ月に回復し5年まで継続が期待できると報告しており,本研究も同様に,RDQ,疼痛の回復は術後6ヶ月から12ヶ月まで継続していた。本研究は観察研究のため,今後より良い回復経過を目指した,リハビリテーション介入研究を検討していく予定である。

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© 2017 日本理学療法士協会
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