理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-19-3
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口述演題
腰部脊柱管狭窄症患者における痛みの破局的思考と連続歩行距離の関連について
和田 崇松本 浩実谷島 伸二尾崎 まり萩野 浩
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抄録

【はじめに,目的】

腰痛は個人のquality of lifeを低下させるだけでなく,経済面に影響を及ぼす社会的な問題である。腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal stenosis,LSS)は,腰痛を生じる疾患の中でも頻度の高い疾患であり,下肢痛や腰痛,感覚低下および筋力低下を呈する。さらに,間欠性跛行により連続歩行距離が減少することで日常生活での活動範囲が制限される。近年,腰痛などの痛みに関連する因子として痛みをネガティブに捉える傾向を示す痛みの破局的思考が注目されており,痛みの強度や日常生活動作との関連が示唆されている。しかしながら,痛みの破局的思考と連続歩行距離の関連を示す報告はない。よって,本研究では,LSS患者における痛みの破局的思考と連続歩行距離の関連を明らかにすることを目的とする。

【方法】

2015年10月から2016年7月に入院した術前LSS患者30名(男性:16名,女性:14名,平均年齢:69.2±8.7歳)を対象とした。患者背景,LSSの罹患部位,罹病期間などをカルテより収集した。アンケートにてLSSによる下肢痛および腰痛の強度をnumerical rating scale(NRS)を用いて評価した。歩行負荷試験は,片道90mの歩行路を往復し,痛みなどにより歩行不可となるまでの連続歩行距離を測定した。完遂は500mとした。また,日本語版pain catastrophizing scale(PCS)を用いて痛みの破局的思考を評価した。まず,対象者全体におけるPCSと各変数間の相関分析をPearsonの積率相関係数およびSpearmanの順位相関係数を用いて行った。サブ解析として男女別に同様の解析を行い,PCSと有意な相関が認められた変数については制御変数を設定した偏相関分析を実施した。有意水準は5%未満とした。

【結果】

対象者全体におけるPCSは平均34.4±8.9であった。対象者全体において,PCSは年齢(r=0.36,p=0.031)と有意な相関を認めた。サブ解析の結果,男性LSS患者において,PCSは罹患椎間数(r=0.66),腰痛NRS(r=0.54),連続歩行距離(r=-0.56)と有意な相関を認めた(p<0.05)。年齢,罹患椎間数,罹病期間,下肢痛NRS,腰痛NRSを制御変数とした偏相関分析の結果,男性LSS患者においてPCSは連続歩行距離(r=-0.67,p=0.025)と有意な相関を認めた。

【結論】

男性LSS患者において痛みの破局的思考が重度のものは,連続歩行距離が低下しており日常生活での活動範囲が減少している可能性がある。

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© 2017 日本理学療法士協会
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