理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-04-3
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股関節疾患に対する整形外科手術後の歩行自立度とバランス能力の関連性
石井 悠太郎原 歌芳里荒井 知野阿久津 美帆谷畑 和幸中澤 萌廣澤 暁齋藤 涼平望月 久
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抄録

【はじめに,目的】

整形外科手術を施行された患者において,術後の理学療法が歩行自立度に大きく影響することは明らかである。術後の歩行自立度に影響を及ぼす要因としてバランス能力や関節可動域が想定され,これらと術後の歩行自立度の回復過程との関係性を明らかとなれば,術後理学療法介入の方向性を示すことができると考える。本研究は整形外科手術後患者の歩行自立度とバランス能力,股関節可動域(以下ROM)の関係を明らかにすることを目的とした。

【方法】

本研究の対象は2016年8月から9月に当院にて股関節に対して整形外科的手術を施行された者10名(77.0±9.5歳)とした。荷重制限のある者,指示理解が困難である者は除外した。術後1週目に対象者の歩行自立度,ROM,バランス能力を測定した。バランス能力の指標としてIPS(Index of Posture Stability,望月ら(2000))を測定した。IPS測定では安定域の左右径,前後径,中央および前後左右への重心移動時の矩形動揺面積を記録した。測定には重心動揺検査装置(重心バランスシステムJK101II,株式会社ユニメック)を用いた。歩行自立度は,独歩,杖歩行,サークル歩行,ピックアップ歩行器歩行の4段階を順序尺度として数値化し,歩行自立度およびROMと,IPSおよびIPS測定の際に得られる諸変数(以下,諸変数)との関連性をSpearmanの順位相関係数,変数間の差を対応のあるt検定を用いて検討した。統計処理にはSPSS statistics 23を用い,有意水準は5%未満とした。本研究では足圧中心位置を重心位置とした。

【結果】

術後1週目の歩行自立度とIPSおよび諸変数との間に有意な相関は認められなかった。IPS測定時に得られる諸変数間の検討において,安定域の左右径と前後径との間にr=0.77(p<0.05)の有意な相関が確認された。患側および健側への重心移動時の矩形動揺面積の間に有意な差は認められなかったが,患側への重心移動距離(17.0±18.9mm)は健側への重心移動距離(49.4±14.3mm)より有意に小さかった。また,IPSと患側への重心移動距離との間にr=0.82(p<0.05)の有意な相関が認められた。

【結論】

今回の研究では,術後1週目の歩行自立度およびROMと,IPSおよび諸変数との間に相関は認められなかった。これは,術後1週目の歩行自立度がピックアップ歩行器に偏っていたこと(6/10),ROM以外の要因が大きく関連することが考えられる。今回の結果から,患側への重心移動距離が小さい者では,左右方向のみならず,前後方向への重心移動距離も減少していることが分かった。また,重心移動距離は患側が健側に対し有意に少なかったが,最大重心移動時の矩形動揺面積に有意差はみられなかった。これらから,患側への重心移動距離を増加させることで左右方向への重心移動量が増加し,前後方向への重心移動距離が増加すると推測される。このことは患側への荷重練習がバランス能力を向上させることを示唆している。今後は術後1週目以降の測定を行い,理学療法介入後の歩行自立度変化の要因を検討していきたい。

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© 2017 日本理学療法士協会
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