理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-07-1
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地域別にみた肩関節周囲炎患者の運動機能について
足立 真澄吉村 洋輔山科 俊輔
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抄録

【はじめに,目的】

肩関節周囲炎は,肩関節構成体の退行変性を基盤として発生し,肩関節の疼痛と運動障害を主徴とする症候群である。それらの経過は,疼痛や可動域制限が残存することや頭上の棚の物に手が届く,結帯動作,引き戸の開閉というADL動作が困難となることが多いとされている。個人の特性でみると男性より女性で発症しやすいこと,60代から80代で年齢が上がるにつれて障害がみられ,仕事をしている人ほど障害が少なかった。そのため個人の生活背景,地域特性といった環境因子を考慮しなければならない。これらの個人特性を反映できる評価として患者立脚肩関節評価法Shoulder36 Ver1.3(以下Sh36)があり,疼痛,自動可動域,筋力などと相関があると報告されている。しかし,個人特性の中の地域特性に関しては検討が希薄であるのが現状である。地域特性は,実際に他県の都市部,農村部,山間部の地区別では肩の障害発生に著明な差は認めないと報告されているが,個人の特性が環境に左右されているため検討が必要である。よって本研究は地域別に見た運動機能の違いを記述することを目的とした。

【方法】

対象は地域在住の肩関節周囲炎患者11例(平均73.8±9.2歳),男性5名,女性6名とした。発症より5か月以内の患者6名,5か月を超えている患者5名であった。在住地域の中で駅周辺の地域で人口2000人以上を都市群(4名),山間部の地域で2000人以下の地域を地方群(7名)と分けた。腱板損傷,外傷,神経症状を合併している症例は除外した。評価方法は,主観的評価はSh36を用い回答を得た。本評価表は36項目の質問を6つのドメインに分類し,各領域について重症度0から4の5段階の平均値を計算し,値が大きいほど困難なく動作が行える事を示す指標である。客観的評価は自動,他動可動域(肩関節屈曲,伸展,外転,外旋,内旋),疼痛にて地域によって運動機能に違いがあるかを調査した。疼痛は,安静時痛,運動時痛をVisual Analog Scale(VAS)にて評価した。今回,症例数が少数であるため統計解析は行わず2群間比較を行った。

【結果】

全体では自動,他動可動域の屈曲,外転,伸展よりも外旋,内旋で10°以上の制限がみられた。Sh36では疼痛3.7,可動域3.6,健康感3.7,日常生活機能3.7であったが,筋力3.1,スポーツ能力2.6と他の項目より低かった。年齢が上がるにつれてSh36の筋力の値が3.2以下と低下した。地域別では地方群に比較し都市群の方がSh36の筋力2.8,健康感3.6,スポーツ能力1.3と低かった。都市群では,地方群に比較し自動可動域の外転20°,外旋10°差があり低下がみられた。疼痛は安静時痛は0,運動時痛は5以上はなかった。

【結論】

地域ごとに体操やレクリエーションなどを行うことで肩関節周囲炎の発生予防につながると考える。外来初診時に地域別に改善項目を評価し,予防プログラムを考案することで肩関節周囲炎患者を早期に改善させられる可能性がある。

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© 2017 日本理学療法士協会
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