理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-06-5
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術式の異なる腰部脊柱管狭窄症術後患者の体幹筋力の推移
―年代別標準体幹筋力を基にした検討―
伊藤 敦貴神谷 光広西浜 かすり竹中 裕人鈴木 惇也鈴木 達也横地 恵太森 匡宏伴 留亜後藤 慎橋本 美紀宮地 庸祐古田 国大花村 俊太朗花村 浩克
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抄録

【はじめに,目的】

当院では腰部脊柱管狭窄症患者(以下LSS)に対し,腰椎後方侵入椎体間固定術(以下除圧固定術),または棘突起縦割椎弓切除術(以下除圧術)を施行している。

我々はこれまでに,早期理学療法介入が体幹筋力の低下を予防したことを明らかにした。しかし,LSS術後患者の体幹筋力特性を把握しリハビリテーション介入の効果を判定するには,年代別標準体幹筋力(以下標準値)を考慮する必要性がある。そこで本研究では,標準値を基に術式の異なるLSS患者の術前,術後1,3,6か月間の体幹筋力の推移をみたのでここに報告する。

【方法】

対象は,2013年11月から2016年3月のLSS手術ののち,術前後評価を行うことができた除圧固定群25名(男性12名,女性13名,平均68.6±9.2歳),除圧群34名(男性22名,女性12名,平均68.6±10.2歳)とした。術後リハビリテーションとして入院中と退院後の受診時(術後1,3,6か月)に体幹筋力測定を行い,その結果に基づいて活動性を高めるように指導を行った。体幹筋力測定は術前,術後1,3,6か月に,徒手筋力測定器mobie(酒井医療社製)を用い,端坐位にて体幹伸展と屈曲の等尺性筋力を測定した。そして,体幹筋力の値をmobie Project(酒井医療)により集計された各年代平均値で除した値(%)を使用した。統計解析ソフトは,Rコマンダー2.8.1を用いた。術前,術後1,3,6か月の筋力の比較には分割プロットデザインによる分散分析を用いた。有意水準は5%未満とした。

【結果】

体幹屈曲筋力,伸展筋力共に交互作用は認められず,測定時期による主効果のみを認めた。

体幹屈曲筋力(除圧群・除圧固定群)は,術前(93%・91%),術後1か月(98%・81%),術後3か月(104%・89%),術後6か月(103%・96%)であり,術前に比べ,術後6か月,術後1か月に比べ術後3か月,6か月の時点で有意に上昇した。(p<0.05)

また,体幹伸展筋力(除圧群・除圧固定群)は,術前(88%・80%),術後1か月(96%・84%),術後3か月(105%・92%),術後6か月(105%・103%)であり,体幹伸展筋力は,術前に比べ術後3か月,6か月,術後1か月に比べ術後3か月,6か月の時点で有意に上昇した。(p<0.05)

【結論】

術式の異なるLSS術後患者の体幹筋力を標準値と比較した推移(術前,術後1,3,6か月)をみた。術式による差は認められなかったが,時期による差は認めた。術後3か月より有意に上昇した。統計学的有意差は認められなかったが,除圧固定群は体幹屈曲,伸展筋力共に術後6か月の時点でも標準値に達していなかった。

除圧固定群が術後6か月の時点でも標準値に満たなかった理由としては,術後3か月間の硬性コルセット着用による体幹の運動制限が考えられる。

また,当院での術後リハビリテーション介入は入院している1から2週間のみの実施であったため,今後は退院後のリハビリテーション実施よる介入効果を検討していきたい。

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© 2017 日本理学療法士協会
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