理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-07-3
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肩関節周囲炎患者の夜間痛に関連する因子
横断的研究結果
伊藤 創葉 清規川上 照彦
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抄録

【はじめに,目的】

五十肩あるいは凍結肩とも呼ばれる肩関節周囲炎は,成人の2-5%が罹患するといわれている。肩関節周囲炎の特徴的な症状として夜間痛が挙げられる。夜間痛とは,夜間に起こる肩の疼痛の事を表し,患者の睡眠を妨げることで生活の質を著しく低下させると言われている。夜間痛の臨床的特徴に関して,統一された見解がなく,アライメントとの関連を検討した報告は散見される程度である。今回,肩関節周囲炎患者に対し,夜間痛に関連する因子を調査することにより,理学療法を行う上での一助とする事が研究の目的である。

【方法】

対象は当院で2015年11月~2016年6月の期間に理学療法介入を行った片側性肩関節周囲炎患者45名(男性23名,女性21名,平均年齢61.2±11.1歳)とした。評価者は14名(理学療法士12名,作業療法士2名)とし,対象者の評価は,各評価者が自己記入式の評価表に記載する方法で実施した。基本情報として,性別,年齢,罹病期間,評価項目として,夜間痛・安静時痛の有無,肩関節動作時痛の程度(Visual analogue scale,以下,動作時痛VAS),肩関節屈曲・伸展・外転・下垂位外旋の関節可動域(以下,ROM),結帯動作,特殊検査として,impingement-sign,painful-arcを評価した。また,カルテから初回診察時に撮影したレントゲン肩関節正面像を用いて,肩峰骨頭間距離(以下,AHI),肩峰烏口突起間距離を計測した。夜間痛の有無については,先行研究をもとに問診評価で行い,夜間就寝時に疼痛があり睡眠を妨げる程度の痛みがある症例を夜間痛有とした。ROMは,東大式ゴニオメーターを用いて患側,健側共に計測した。結帯動作は,C7-thumb-distanceを採用し,テープメジャーにて患側,健側共に計測をした。AHI,肩峰烏口突起間距離は,放射線画像情報システムSYNAPSEを用いて計測した。肩峰烏口突起間距離の計測は,予備研究を行い,角度が大きいほど肩甲骨前傾,小さいほど後傾と定義した。基本情報及びその他の評価項目で夜間痛あり群,なし群の2群間で有意差があった項目を独立変数,夜間痛の有無を従属変数として,ロジスティック回帰分析にて解析した。統計処理はR2.8.1(CRAN freeware)を使用し,有意水準は5%とした。

【結果】

夜間痛を有する症例は45例中17例であった。夜間痛あり群,なし群の2群間で差が認められた項目は,動作時痛VAS,肩関節下垂位外旋,impingement,AHI,肩峰烏口突起間距離であった(p<0.05)。差が認められた5項目を独立変数とし,ロジスティック回帰分析を行った結果,夜間痛に関連があった因子は,AHI(オッズ比:1.80,95%信頼区間:0.90-3.60),肩峰烏口突起間距離(オッズ比:1.69,95%信頼区間:1.20-2.37)であった。

【結論】

肩関節周囲炎患者の夜間痛を有する危険因子は,AHIが狭く,肩甲骨前傾位傾向であることであった。

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© 2017 日本理学療法士協会
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