理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-07-4
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肩関節周囲炎における肩関節屈曲角度の改善例・非改善例のX線画像の比較
益満 俊宏中野 洋平川合 健太
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抄録

【はじめに,目的】

肩関節周囲炎による可動域制限に対しリハビリテーションを必要とする症例は多い。症例の中には,可動域制限が改善していく症例と,改善に難渋する症例がある。診療でよく行われる画像診断として単純X線画像があり,肩関節周囲炎患者のほとんどが施行されているが,改善・非改善の予後予測についての報告は少ない。今回我々は肩甲上腕関節のアライメントに着目し,X線画像と肩関節屈曲の改善度の関係を比較し検討したので若干の文献的考察を加え報告する。

【方法】

対象は当院で肩関節周囲炎と診断され,理学療法を施行した初診時肩関節屈曲120°未満の14例(男性3例3肩関節,女性11例11肩関節,年齢57.9±12.1歳,肩関節屈曲91.2°±23.0°)であった。上肢帯に骨折の既往のある者,腱板損傷が疑われる者,著明な石灰沈着を認める者,著明な円背を呈する者は対象から除外した。測定項目は初診時肩関節屈曲角度,肩関節外旋位でのX線前後像におけるgleno humeral angle(GHA)とした。GHAは上腕骨長軸と肩甲骨の関節上結節と関節下結節を結んだ線が成す角度で,3回計測した平均値を数値として用いた。また,150日間の理学療法施行後,120°以上に到達したものを改善群(7例),到達しなかったものを非改善群(7例)と分類し比較した。改善群・非改善群とGHAとの差については対応のないt検定を用い,危険率5%未満を有意とした。

【結果】

改善群のGHAは5.3°±2.4°で,非改善群は10.8°±4.3°だった。また,p<0.05で両者に有意差を認めた。

【考察】

林らはX線画像上で肩関節のアライメントを評価し,軟部組織の状態を予測し制限因子を特定する報告をしている。赤羽根は肩峰下滑液包や烏口上腕靭帯などの上方支持組織の癒着により肩甲骨が下方回旋位になるとGHAの値は増大すると報告している。また杉本らは,烏口上腕靭帯周囲は滑膜が豊富で炎症が波及しやすく,瘢痕化に伴い物理的特性が変化しやすくなると述べている。上方支持組織の癒着が生じると肩峰下での腱板の滑走が障害され,上腕骨大結節と烏口肩甲アーチとの間にインピンジメントが起こるとされる。本研究では非改善群のGHAが改善群と比較し大きかったため,肩関節上方支持組織の癒着の有無と肩関節屈曲の改善の予後に関連があることが示唆された。

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