理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-17-5
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複合性局所疼痛症候群に対し脊髄刺激療法を施行した症例の治療経験
―Neglect-like syndromeに対する理学療法介入―
中野 正規島原 範芳赤松 和紀
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抄録

【はじめに】

近年,複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)に対する脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)が報告されている。今回,腰椎椎間板ヘルニアの術後痛によりCRPSの診断を受け,SCSを実施した症例を担当した。理学療法では疼痛に対する心理情動的側面の影響も大きいと推論され,治療介入に際しては,多角的な治療介入を試みた。本症への治療経験に若干の知見を交えて報告する。

【症例紹介】

2009年に腰椎椎間板ヘルニアの診断を受け,数回にわたる手術療法を施行。術後リハ目的にて入退院を繰り返す。2015年,腰椎固定術後に腰痛の改善を認めるが右足趾に強い疼痛が出現。外来リハビリを継続していたが2016年2月CRPSの診断を受け,SCSの施行が決定する。

外来リハ通院時の評価として疼痛強度は腰部VAS23(安静時),69(動作時),右足趾VAS100(安静時),測定不能(荷重時)。日常生活動作能力ならびに機能障害評価としてFIM122,PDAS41,ロコモ25 57点。心理情動面の評価としてPCS44点,HADS31点,TSK50点,PSEQ15点,GESE2点。その他,EQ-5D 0.473点であった。右下肢の機能的評価については右足関節自動背屈可動域-25°,筋力MMT2,右下肢荷重率15%,10m歩行では両松葉杖歩行にて73秒であった。

【治療経過】

SCS施行後3週目に再入院。入院時評価は,腰部VAS28(安静時),62(動作時),右足趾VAS72(安静時),61(荷重時),FIM113,PDAS35,ロコモ25 57点,PCS38点,HADS18点,TSK37点,PSEQ26点,GESE3点,EQ-5D 0.587点と改善が見られた。右下肢の機能面においても右足関節自動背屈可動域10°筋力MMT3,右下肢荷重率26%と機能面での改善が見られた。10m歩行では右膝装具着用にて両松葉杖歩行が74秒と著変なかったが術前には困難であった右足趾の接地が可能となっていた。SCS施行と術後介入の効果は限局的であり,また,治療中の患者の発言や行動などのエピソードから,患肢への無視様症候群(neglect-like syndrome:NLS)を強く疑い評価を追加した。結果,運動無視(moter neglect:MN)225,認知無視(cognitive neglect:CN)29と運動無視が強く疑われた為,感覚評価を見直し身体図式などの評価も追加した。

【考察】

NLSは感覚機能の低下や認知の歪みによって生じるとされており,本症例はNLSが痛みに影響していると考えられ,患肢への感覚入力を意識した介入を試みた。結果,患肢の荷重率と歩容の改善が見られた。現在,治療継続中の為,詳細は本学会にて報告したい。

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© 2017 日本理学療法士協会
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