2023 年 29 巻 p. 341-346
本研究では,まず,昭和56年8月石狩川洪水を対象とした掃流砂と浮遊砂を一体的に扱う非静水圧準三次元洪水流・河床変動解析の解析結果を基に,複断面蛇行河道において複断面的蛇行流れが生じる機構と低水路線形との関係を明らかにした.そして,これらの知見を踏まえ,令和2年7月球磨川豪雨を対象に,複断面蛇行河道において低水路線形が及ぼす洪水流の流れ構造と河道被害との関係について分析を行った.その結果,低水路線形と堤防線形の蛇行度または位相に差があり,蛇行頂部付近の上流側に広い高水敷がある河道区間では,大規模洪水時に高水敷と低水路の流れの混合が生じ,複断面的蛇行流れが発生し得ることを示した.そして,令和2年7月球磨川豪雨においては,複断面的蛇行流れによる主流位置の変化が内岸側の河道被害発生の一因となったことを示した.本研究の成果として,大規模洪水時に複断面的蛇行流れが生じた際の流れ構造の変化や,複断面的蛇行流れが生じ得る河道区間の特徴を調べることは,今後の治水・河川環境・河川空間の利用を総合的に考慮する上で重要となる情報を与えることを示した.