理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-KS-13-2
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口述演題
足趾底屈筋に対する徒手的ストレッチングおよびセルフストレッチング効果の比較検討
佐伯 純弥中村 雅俊八木 優英市橋 則明
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抄録

【はじめに,目的】

Medial Tibial Stress Syndrome(MTSS)の好発部位である脛骨後内側面には長趾屈筋(FDL)が付着し,その付着確率はヒラメ筋(SOL)よりも高いことから,FDLへの伸張ストレスがMTSS発症に関連することが疑われており,FDLの柔軟性を獲得することがMTSS予防につながる可能性がある。我々の過去の研究で,中足趾節関節背屈,足関節外がえし,背屈でFDLが最も伸張されることが明らかとなった。しかしながら,前述したストレッチにより筋の柔軟性が獲得されるかは明らかでない。一方,スポーツ障害の予防のためには,セラピストではなくアスリート自身によるコンディショニングの管理が重要である。本研究では,足趾底屈筋に対する徒手的ストレッチングとセルフストレッチングの即時効果を比較検討することを目的とした。

【方法】

一般成人男性13名(24.5±2.6歳,173.3±5.1 cm,65.0±3.6 kg)を対象とした。クロスオーバー比較試験を用いて,足趾底屈筋に対する徒手的ストレッチングおよびセルフストレッチング介入をランダムに実施した。徒手的ストレッチングは理学療法士が中足趾節関節背屈,足関節外がえし,背屈の順に動かした。対象の膝関節は屈曲位とした。セルフストレッチングは中足趾節関節背屈,足関節外がえし位で保持可能な新規装置を用い,荷重位,膝関節屈曲位にて介入側の足関節を背屈させた。介入時間は5分とし,介入間には72時間以上の休息時間を設けた。各介入前後にせん断波エラストグラフィー(Supersonic Imagine社製)を用いて,組織の硬さの指標である弾性率をFDL,長母指屈筋(FHL),後脛骨筋(TP)およびSOLにおいて測定した。なお,弾性率は組織が硬いほど高値を示す。統計解析として,ストレッチングによる筋弾性率の変化を,介入種別および測定時期を変量とした反復測定二元配置分散分析およびBonferroni多重比較検定を用いて検討した。有意水準は5%とした。

【結果】

二元配置分散分析の結果,FDL,FHLおよびTPには交互作用が認められず,介入効果にストレッチング方法による違いは認められなかった。FDLおよびFHLにおいては介入による主効果が認められ,事後検定の結果,ストレッチング介入後に弾性率は有意に低値を示した。TPにおいては介入による主効果はなく,ストレッチング効果が認められなかった。一方,SOLにおいては二元配置分散分析の結果,交互作用が認められ,介入効果にストレッチング方法による違いが認められた。事後検定の結果,徒手的ストレッチング後に弾性率が有意に低値を示し,セルフストレッチング前後で弾性率に有意差が認められなかった。

【結論】

新規装置を用いた足趾底屈筋のセルフストレッチングは,FDLおよびFHLに対して,セラピストによる徒手的ストレッチングと同等の柔軟性改善効果を有することが明らかとなった。一方,セラピストによる徒手的ストレッチングでは,足趾底屈筋と同時にSOLも伸張されることが示された。

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