理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-RS-11-1
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健常男性成人における肺気量位の違いが最大吸気力に与える影響および口腔内圧との関係
鈴木 悠屋嘉比 章紘久保 晃石坂 正大
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抄録

【はじめに,目的】

肺気量位とパフォーマンス,全身および局所的な筋力発揮の関係については多くの論文で述べられている。しかし,肺気量位の違いによる,吸気力の発揮については明確にされていない。今回,肺気量位の違いが最大吸気力に与える影響について検討した。また,吸気筋力測定に使用される口腔内圧計にて最大吸気口腔内圧(MIP)を測定し,自作の吸気力測定装置との関係を検討した。

【方法】

対象者は男性健常成人50名,年齢19.3±0.5歳,身長171.1±5.8cm,体重63.1±10.9kg(平均±SD)とした。最大吸気力の測定として自作の吸気力測定装置(シリンダー2l校正器を固定台に置き,足趾筋力計と固定)を使用した。測定開始時の肺気量位は最大吸気位(全肺気量位),安静呼気位,最大呼気位(残気量位)の3条件とし,最大随意吸気努力を行い,最大吸気力を測定した。また,口腔内圧計によりMIPを測定した。測定姿勢は立位とした。

統計処理は肺気量位の測定条件を要因とし,一元配置分散分析を行い,下位検定としてBonferroni法を用いた。自作の吸気力測定装置で測定した吸気力と口腔内圧計によるMIPはPearsonの相関係数を肺気量位ごとに求めた。なお,有意水準はすべて5%とした。

【結果】

最大吸気力値は最大吸気位で1.5±1.3kg,安静呼気位で5.9±2.4kg,最大呼気位で6.9±2.0kgであった。肺気量位の3条件で有意な主効果を認め,最大呼気位,安静呼気位,最大吸気位の順に有意に高かった(p<0.05)。また,口腔内圧計によるMIPと最大吸気力の関係は,安静呼気位条件でr=0.641(p<0.05),最大吸気位条件でr=0.735(p<0.05)と強い相関が認められた。しかし,最大吸気位条件では有意な相関関係が認められなかった。

【結論】

今回の検討により肺気量が高くなることにより,最大吸気力が小さくなることが示唆された。最大吸気位での最大吸気力は,横隔膜や外肋間筋など吸気筋が収縮し,筋長が短くなり,張力が得られず,吸気筋力が発揮されないことが考えられる。また,安静呼気位条件,最大吸気位条件では口腔内圧計によるMIPとの強い相関がみられており,呼吸筋力と関係することが示唆された。しかし,最大吸気位条件での吸気力は横隔膜を主とした吸気筋が働かず,呼吸筋力とは独立した関係であることが考えられる。肺気量位が最も高い最大吸気位条件での最大吸気力は口輪筋などの口腔周囲の筋が働くことが考えられる。

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