理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-RS-11-2
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「息こらえ法」と「ペーパーバックリブリージング法」における経皮的二酸化炭素分圧と経皮的動脈血酸素飽和度の変化
田崎 正倫石坂 正大梅田 啓鈴木 悠久保 晃
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抄録

【はじめに,目的】

呼吸苦を示す病態には,低酸素状態が特徴であるが高二酸化炭素血症による場合も報告されている。一方で,人間が呼吸苦を訴える際,低酸素血症が影響しているのか,高二酸化炭素血症が影響しているのか不明な点が多い。本研究は,健常者でも行える「息こらえ法;Breath Hold(以下:BH法)」と「ペーパーバックリブリージング法;;Paper Bag Rebrething(以下:PB法)」における経皮的二酸化炭素分圧(以下:tcPCO2)と経皮的動脈血酸素飽和度(以下:SpO2)を同時に測定することで,課題間の違いを明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は,呼吸器疾患の既往のない健常成人男性13名とした。年齢は24.6±3.0歳(平均±標準偏差)とした。

測定は,BH法から開始し,安静時間15分の後,PB法を実施した。各測定方法ともに被験者が呼吸苦を呈した時点またはSpO2が90%を下回った時点で検者が終了させた。各測定終了時にBorg Scaleを用い呼吸困難感・疲労度を評価した。

測定方法として,PH法とPB法において呼吸状態を変化させ,tcPCO2とSpO2を評価した。tcPCO2は経皮的血液ガス分析装置TCM4(ラジオメーター社製)に測定し,同時に経皮的酸素飽和度モニターにてSpO2,脈拍数を測定した。

統計学解析は,BH法とPB法の課題による要因と課題開始時,課題終了時,課題後ピーク時の時間的要因の2要因とした2元配置分散分析を行い,有意水準は5%とした。

【結果】

常成人13名の課題実施可能時間はBH法は93.5±24.1秒であり,PB法は126.1±23.1秒であり,10名は息こらえの方が早く課題を終了した。BH法よりPB法が早く終了した対象者は3名(3秒,5秒,6秒)であった。課題終了時のBorg Scaleは,両課題とも中央値15(最小13-最大19)で有意差はみられなかった。課題開始時,課題終了時,課題後ピーク時のSpO2(%)はそれぞれ,息こらえが97.9±0.9,94.3±2.9,91.1±3.6であり,PB法が97.4±1.4,90.2±3.0,86.8±4.6であった。tcPCO2(mmHg)は,息こらえが42.0±2.1,42.0±2.3,44.2±2.5であり,PB法が39.8±4.0,43.9±3.4,47.1±3.6であった。統計学解析の結果,SpO2,tcPCO2,脈拍数のすべてにおいて有意な主効果と交互作用がみられた。

【結論】

BH法とPB法は課題終了時の呼吸苦はBorg Scaleで同程度であるが,PB法の方が長い時間継続することが可能であった。PB法の方がSpO2とtcPCO2の変化は大きく,課題終了後にも変化がみられた。健常者における呼吸苦は,息こらえ法ではSpO2が低下する低酸素血症を示し,PB法ではSpO2とtcPCO2が高値を示す高炭酸ガス血症が関係していた。

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