理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-NV-08-3
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口述演題
急性期脳卒中リハビリテーションにおけるPusher現象例の臨床的特徴
島田 幸洋山本 幸夫尾谷 寛隆後藤 葉一横田 千晶
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キーワード: Pusher現象, SCP, 急性期脳卒中
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抄録

【はじめに,目的】

非麻痺側を自発的に“押す”ことで身体の平衡を崩し麻痺側に倒れるという「Pusher現象」は,移乗などの動作介助で大きく抵抗し,ADL向上が阻害され,入院期間の延長をもたらす。Pusher現象は急性期で多く見られる現象であるが,急性期におけるpusher現象の特徴に関する報告は多くない。本研究の目的は,近年の急性期脳卒中リハビリテーションにおけるpusher現象例の臨床的特徴を明らかにすることである。

【方法】

対象は2015年8月から2016年7月に理学療法依頼があった急性期脳卒中患者のうち,理学療法介入時にpusher現象陽性と判定した19例(平均70.8歳,男12例)。判定はScale for Contraversive Pushing(SCP)を用い,SCPの各下位項目>0を満たす場合とし,継時的なSCP測定によりSCPの各下位項目>0を満たさなくなった例をpusher現象消失(消失群),それ以外を残存群とした。両群間の病型,性別,年齢,病巣側,入院期間,リハビリテーション開始後の初回・退院時のFunctional independence measure(FIM),FIM利得,FIM効率,退院時の意識障害の有無,退院時下肢運動麻痺(Brunnstrom Recorvery Stage Test:BRST),半側空間無視・感覚障害の有無,転帰を調査し,比較検討した。FIM,BRSTは中央値で求め,p<0.05を有意差ありとした。

【結果】

消失群/残存群は10(出血6,梗塞4)/9例(出血8,梗塞1)で,pusher現象消失までの期間は平均15.6±8.7日であった。性別(男),年齢,入院期間に差はなかった。左病巣は20/67%で,残存群で多かった。初回FIMは33.0/22.0で差がなかったが,退院時FIMは57.0/37.0,FIM利得は20.0/11.0,FIM効率は0.7/0.5でいずれも消失群で高かった。退院時に意識障害ありは40/100%であり,残存群で高く,退院時下肢BRSTは2/2,退院時に半側空間無視ありは70/89%,感覚障害ありは90/100%であり,差がなかった。転帰は両群とも全例リハビリテーション病院への転院となった。

【結論】

Pusher現象の消失率は53%であり,消失までの期間は15.6日であった。残存群は左半球損傷例が多く,退院時まで意識障害が残存していた。Pusher現象陽性例では,右半球の脳梗塞例で転帰不良という報告が多いが,急性期入院例を調査した本研究では,左半球の出血例でpusher現象が多く残存した。これは出血による脳浮腫などの急性期病態との関連が疑われた。両群間で入院期間や初回FIMに差がないにも関わらず,残存群は退院時FIM,FIM利得,FIM効率が低かった。Pusher現象は急性期脳卒中リハビリテーションにおける日常生活活動獲得に悪影響を及ぼしている可能性がある。

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© 2017 日本理学療法士協会
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