理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-SP-05-5
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口述演題
パワーポジションでの腰椎角の違いが全身反応時間に及ぼす影響
福井 一輝浦辺 幸夫前田 慶明沼野 崇平藤下 裕文小笠原 沙映
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抄録

【はじめに,目的】

スポーツ競技では,相手の動きや合図に対して素早く反応できることが,その後の動作のパフォーマンスを向上させる。そのために,下肢関節を軽度屈曲位にし,体幹を軽度前傾位にすることが好ましいとされる(高山ら,2008)。この姿勢はスポーツ場面では,一般にパワーポジション(Power Position:PP)と呼ばれている。PPでの下肢アライメントと全身反応時間(Reaction Time:RT)の関係については知られているが,PPでの脊柱アライメントとRTの関係は不明である。

本研究の目的は,PPでのRTと体幹傾斜角度ならびに脊柱アライメントの関係を明らかにすることである。

【方法】

対象は,大学の運動部に所属している健常な男性13名とした(年齢21.1±0.9歳,身長170.6±4.9cm,体重61.9±7.3kg)。

RTの測定には,発光装置とセンサーマットからなる全身反応測定器(竹井機器)を使用し,対象の2m前方かつ高さ1.5mに発光装置を設置した。対象は,センサーマットの上に両足で乗り,任意のPPをとる。前方の直径15cmのランプを注視させ,ランプ点灯後できるだけ素早くマットから両足を浮かすよう口頭指示をした。課題動作を5回行い,RTの最高値と最低値を除外した3試行の平均値を算出した。

体幹傾斜角度ならびに脊柱アライメントの測定にはスパイナルマウス(Index社)を用い,第7頸椎から第3仙椎までの矢状面のアライメントを測定した。測定姿勢は,対象がとったPPと静止立位とし,各姿勢で3回測定し平均値を求めた。分析項目は体幹傾斜角度,胸椎後弯角度,腰椎前弯角度とした。

統計学的解析には,SPSS Ver.20.0 for Windowsを用いた。RTと各測定項目ならびにPPと静止立位での脊柱アライメントの関係をみるために,Pearsonの相関係数を用いた。危険率5%未満を有意とした。

【結果】

PPでの13名分のRTの平均値は,314.4±29.8msであり,体幹傾斜角度は,31.1±11.7°,脊柱アライメントは,胸椎後弯角度26.3±10.1°,腰椎前弯角度6.6±7.6°だった。静止立位での脊柱アライメントは,胸椎後弯角度31.3±10.3°,腰椎前弯角度19.0±4.9°だった。

RTとPPでの腰椎前弯角度に有意な負の相関を認めた(r=―0.56,p<0.05)。一方で,RTとPPでの体幹傾斜角度(r=0.26,p=0.39),胸椎後弯角度(r=―0.10,p=0.73)に有意な相関は認められなかった。さらに,PPと静止立位での胸椎後弯角度に有意な相関は認められず(r=0.51,p=0.07),腰椎前弯角度にも有意な相関は認められなかった(r=0.04,p=0.88)。

【結論】

PPでの体幹傾斜角度は,軽度屈曲位のほうがRTの短縮に好ましいとされている(高山ら,2008)。しかし,本研究では,PPでの体幹傾斜角度とRTに関連が認められず,むしろPPでの腰椎前弯角度がRTと関連することが示された。このことから,スポーツ選手の指導にあたっては,PPで腰椎前弯がどの程度あるかに注目すべきである。

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© 2017 日本理学療法士協会
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