理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-10
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ポスター発表
パーキンソン病患者におけるバランストレーナー施行前後の即時効果の検討
動的・静的バランス能力、歩行能力に着目して
青砥 桃子平野 和宏高橋 仁中島 卓三三小田 健洋林 友則鈴木 禎安保 雅博
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抄録
【はじめに、目的】パーキンソン病(以下、PD)は、振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害を主症状とする。これらの症状は歩行や日常生活動作で転倒の危険リスクとなる。近年、ドイツ・メディカ社は転倒の危険がない立位状態を保持し、安全な体重移動が可能なバランス能力の向上を目的に開発された機器、バランストレーナー(以下、BT)を開発している。現在、BTのPD患者に対する使用報告はなく、本邦においてはBTの報告自体が認められていない。そこで、PD患者に対するBT使用前後での静的・動的バランス、歩行能力の即時効果を調査することを目的とした。【方法】対象は当院神経内科医からPDと確定診断を受けた患者25名(男性:14名、女性:11名、平均年齢:74.1±6.5歳)、Hoehn&Yahrの分類I~IV(I:7名、II:11名、III:6名、IV:1名)とし、歩行に介助を要する者は除外した 。方法はBT使用前後にバランス、歩行能力の評価を行った。評価は、静的な指標にMulti Directional Reach Test(以下、MDRT)、動的な指標にTimed Up&Go(以下、TUG)を用いた。歩行の指標は10m Maximum Walking Speed(以下、MWS)を用い、歩数・歩幅も計測した。BTは骨盤、膝、足部を固定できるスタンディングテーブル様の機器であり、テーブル部分は体重をかけた方向へ水平面上で360度の方向に可動できる構造になっている。テーブル部分にはストッパーが付いており、体重を預けてもある一定の所で止まるため、転倒の危険がない。テーブル中央には付属のパソコンが設置してあり、上肢はパソコンの横に肘関節90度屈曲前腕支持で置き、骨盤は腸骨稜の高さで後方から腰サポーター、膝は最大伸展位で前方から膝サポーター、足部は踵部を踵カップ、前足部を足ストラップでプレート上に固定する。テーブル、各サポーター、踵カップは対象者の身長や足長、立位姿勢に合わせて設定可能である。テーブル部分の動きはパソコンと連動し、体重を前方へかけてテーブル部分を前方へ移動させればパソコン上のキャラクターが前方へ動き、後方へ動かせばキャラクターも後方へ動く。パソコンには課題が内蔵されており、今回はパソコン画面上のキャラクターを体重移動にて操作し、画面上で指定された目標物に到達させる課題を施行した。キャラクターが目標物に到達すると次の目標物が指定され、10秒以内に到達しない場合も次の目標物が表示される。目標物は1セットで12個出現し、これを3セット施行した。尚、セット間には1分間の休息を設けた。統計はWilcoxonの符号付順位和検定を行い、有意水準5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は本学倫理委員会の承認を受け、ヘルシンキ宣言に則り実施した。【結果】BT使用前・使用後の順に結果を示す。MDRT(cm)は、前方20.6±9.4・23.6±8.2、後方11.5±5.7・13.3±5.3、右方14.0±5.7・16.2±6.6、左方14.5±7.5・16.2±7.4であり、BT使用後は全ての方向で有意にリーチ距離が拡大した(p<0.05)。TUG(秒)は、右回り17.32±9.51・15.62±7.83、左回り17.22±8.80・15.44±7.11であり、BT使用後は左右回り共に有意に時間が短縮した(p<0.05)。MWS(秒)は11.86±5.37・10.58±4.30、歩数(歩)は24.0±9.7・22.0±7.7、歩幅(m)は0.47±0.16・0.50±0.15となり、BT使用後は、MWS時間は有意に短縮、歩数は減少、歩幅は拡大した(p<0.05)。【考察】BT使用後では、全方向のリーチ距離の拡大、歩行速度の向上、歩数の減少、歩幅の拡大によりバランス、歩行能力の向上が認められた。過去の研究では、足底圧中心点(以下、足圧)の移動距離が拡大するとリーチ距離も拡大し双方には相関があること、筋力に関しては体幹・下肢の筋力が前方・側方リーチ距離の拡大に影響を与えると述べている。BTは転倒の危険がない安全な環境で行うため、通常時よりも大きく体重移動が可能となり、足圧も大きく動いていることが予測される。これらのことから、BT使用後には足圧の移動距離が拡大し、体幹・下肢筋出力が賦活されたことが歩数、歩幅の変化に繋がり、歩行能力の向上をもたらしたと考える。更に、TUGは歩行、立ち上がり、方向転換、着座と様々な要素から構成されている総合的なバランス能力の指標であり、リーチ距離の拡大や歩行能力の向上がTUG時間の短縮に繋がったと考える。以上より、BTはPDの即時的なバランス、歩行能力の改善に有用な機器であることが示唆された。今後はBTを長期的に使用した場合のバランス、歩行能力への影響やBT使用前後での足圧の変化を追うことでBTの特性を検証していきたい。【理学療法学研究としての意義】PD患者にBTを使用した運動を行うことで足圧の移動距離が拡大、体幹・下肢の筋出力が賦活したことが予測され、これらが動的・静的バランス、歩行能力の向上に繋がったと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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