理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-TK-08-2
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地域包括ケア病床における80歳台と90歳台の自宅退院患者の決定要因の相違について
西山 保弘江濱 勇気工藤 公晴柴田 良子
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抄録

【目的】

2025年に向けて地域包括システムの構築が急がれる中,地域の特性に応じたマネージメントが不可欠である。当院は,地域高齢化率31.9%の地域に拠点を置く地域密着型支援病院である。今回,当院地域包括ケア病床(以下,包括病床)を利用した80歳台と90歳台の患者の自宅退院の可否に影響を及ぼす要因の相違を多重ロジステック回帰分析で検討したので報告する。

【方法】

対象は2014年6月~2015年5月までの期間に当院包括病棟に入院した患者108名のうち,本研究の関連因子のデータ欠損があった症例,死亡例を除外した90名(男性22名,女性68名,平均年齢82.7歳)とした。その内,80歳台47名(平均84.5歳),90歳台19名(平均93.9歳)を抽出し,ロジステック回帰分析(変数増加法尤度比)を用いて自宅退院の可否を決定する関連因子を検討した。説明変数となる関連因子は年齢,性別,退院先,入退院時Barthel Index(BI),退院時BIの各項目点数,リハビリテーション(リハ)実施日数,家族構成数(家族数),在院日数,リハ実施総単位数,1日の平均リハ実施単位(平均単位/日),栄養状態としてBMI,入退院時Alb,入院時TP,食事形態,嚥下障害,排尿・排便障害,要介護度,認知度,住宅状況(入院前住居),等20項目をカルテより後方視的に調査した。統計処理は,マン・ホイットニーのU検定,カイ二乗検定,自宅退院の可否を従属変数,影響を与える関連因子で有意差を認めた因子を独立変数として尤度比変数増加法にて多重ロジステック回帰分析を行った。有意水準5%以下で実施した。

【結果】

全対象90人の自宅退院群と非自宅退院群の2群間において定量的データにマン・ホイットニーのU検定を行った結果,入院時BI,退院時BI,平均単位,家族数で有意差を認めた。カテゴリーデータのカイ二乗検定で2群間に有意差を認めた項目は,食事形態,排尿・排便障害,認知度,住宅状況であり嚥下障害,要介護度は有意差を認めなかった。80歳台は年齢,入院時BI,退院時BI,家族構成数,平均単位/日に有意差を認め,多重ロジステック回帰分析では,入院時BI,家族数が選択された。90歳台は,入院時BI,退院時BI,リハ日数,排尿排便障害に有意差を認め,多重ロジステック回帰分析では,入院時BIとリハ日数が選択された。

【結論】

本研究では80歳台の自宅退院者は,入院時BI,排尿コントロール,入浴,家族数が多いなどの要因が同様に上がり,90歳台になるとこれらの条件が変わった。慢性期の高齢者の地域包括ケア病床の自宅退院条件は80歳台と90歳台で異なることが分かった。

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© 2017 日本理学療法士協会
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