理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-YB-10-3
会議情報

ポスター
高用量ステロイド治療中患者の筋力と体重
長島 正明蓮井 誠永房 鉄之美津島 隆
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】

自己免疫疾患などの炎症性疾患の急性期治療として,一般的に高用量ステロイド治療(30~60mg/日)が実施される。しかし,高用量ステロイド治療によって,ステロイド筋症が危惧される。主に速筋線維の萎縮が惹起され,筋力低下から転倒リスクが高まる。一方,骨格筋は身体の40%前後の重量を占めている。そこで我々は,筋力の推移は体重の推移から推測できると仮説した。本研究の目的は,高用量ステロイド治療中患者の筋力と体重の推移の関係性を検証することである。

【方法】

対象は高用量ステロイド治療目的で当院に入院した患者で,運動療法目的にリハビリテーション科に紹介となりADLが自立している17例とした。クレアチンキナーゼの上昇がない間質性肺炎合併皮膚筋炎および多発性筋炎4名,微小変化型ネフローゼ3名,全身性エリテマトーデス2名,肺サルコイドーシス2名,成人スティル病1名,天疱瘡1名,顕微鏡的多発血管炎1名,血管炎1名,非IgA腎症1名,膜性腎症1名で,男性10名女性7名であった。平均年齢は50±14歳,平均在院日数は68±18日,運動療法開始から退院時までの平均期間は49±14日であった。運動療法は,有酸素トレーニングとして嫌気性作業閾値の強度での自転車駆動20-30分,筋力トレーニングとしてスクワット運動や上肢ダンベル運動をBorg Scale13-15の強度で週5回実施した。測定は運動療法開始時と退院時に実施した。筋力は筋機能評価運動装置BIODEXを用い膝屈曲90°位で等尺性膝伸展最大筋力を測定した。体重,ステロイド服用量を診療録より記録した。骨格筋量は体組成計インボディを用い計測した。運動療法開始時と退院時の比較に,対応のあるt検定を用いた。また,筋力変化率と体重変化率の関係は,Pearsonの相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。結果は平均±標準偏差で示す。

【結果】

運動療法開始時/退院時で,1日あたりのステロイド服用量は45±8/30±5mgであった。体重は56.8±12.6/54.2±10.7kg(変化率-4.0±4.6%),骨格筋量は23.5±6.1/22.1±5.8kg(変化率-5.7±6.0%),膝伸展筋力は右113±60/101±58Nm(変化率-9.3±24.9%),左109±59/101±60Nm(変化率-6.8±27.1%)で有意に低下した。体重変化率と右膝伸展筋力変化率(r=0.67 p=0.004),体重変化率と左膝伸展筋力変化率(r=0.57 p=0.018)は有意に相関した。

【結論】

高用量ステロイド治療中患者の筋力は,運動療法を実施したにも関わらず有意に低下した。高用量ステロイド治療中患者の筋力減少と体重減少は有意に相関した。したがって,高用量ステロイド治療中患者において,筋力測定をせずとも体重減少から筋力低下を推測でき,転倒リスクの把握に有益である可能性がある。

著者関連情報
© 2017 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top