理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-RS-4-27
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ポスター発表
進行肺癌患者におけるサルコペニア評価と身体機能評価
−早期肺癌患者と比較して−
兵頭 正浩入江 将考濱田 和美花桐 武志
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抄録

【背景】

肺癌患者の筋肉量減少は予後不良因子と報告されているので,体重減少のみでなくサルコペニアの評価は臨床的に有用である.しかし,身体組成と予後との関連は不明な点が多い.本研究の目的は,早期肺癌患者と比較することで,進行肺癌患者の身体組成の特徴を明らかにすることである.

 

【方法】

 2017年4月から2017年12月までに当院において,肺癌に対し胸腔鏡下肺切除術を施行した症例と進行肺癌に対する薬物療法の初回導入時にリハビリ介入を行った症例のうち,身体機能・組成評価を実施出来た症例を対象とした.身体機能は,6分間歩行距離(6MWD)と等尺性膝伸展筋力(下肢筋力)を,身体組成は,生体電気インピーダンス法を用いて四肢骨格筋量(SMI),細胞位相角(PA),体水分均衡(ECW/TBW)を測定した(何も手術前,化学療法開始前).早期肺癌群(早期群)と進行肺癌群(進行群)において,臨床データ,身体機能・組成を比較した.統計分析は,Fisherの正確検定またはt検定を用い,有意水準は5%とした.

 

【結果】

 研究期間内の呼吸リハ実施例の80例中,51例が解析対象となった(早期群:40例,進行群:11例).2群間の比較の結果,有意差があったのは,Performance Status(p<0.01),6MWD(p<0.01),下肢筋力(p=0.01),PA(p=0.01),ECW/TBW(p<0.01). 一方, 年齢,BMI,SMIには有意差を認めなかった.

 

【結論】

 早期群と比較して進行群は,予後不良因子とされているPS,PAが有意に劣っていた.一方,SMIやBMIは有意差を認めなかった.これは進行群でECW/TBWが有意に高いことから分かるように,筋の過水和がその一因であったと考えられる.身体機能が有意に低かったことからも,進行群における筋質の低下が結果に影響を及ぼしていた可能性がある.肺癌患者におけるサルコペニア評価には,単に筋肉量だけに着目するだけでなく,ECW/TBWも考慮することが重要であった.また,身体機能を併せて測定することで身体組成が正しく評価できることが示唆された.

 

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は,人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に沿い研究計画書を作成し,当院の研究審査委員会(登録番号:15000-161)の承認(承認番号:2015-0005)を得ている.対象者全員に十分な説明を行い,同意を得て評価及び呼吸リハビリテーションを実施した.なお,ヘルシンキ宣言に準じ倫理的配慮に基づきデータを取り扱った.

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© 2019 日本理学療法士協会
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