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-転帰時における自立歩行の可否に着目した検討-
小林 孝至, 松嶋 真哉, 横山 仁志, 武市 梨絵, 渡邉 陽介, 中田 秀一, 中茎 篤, 相川 駿, 駒瀬 裕子, 峯下 昌道
セッションID: O-RS-1-1
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】
COPD患者は代謝亢進などの影響により低栄養に陥りやすく,安定期では低栄養の存在が継時的な身体機能低下と関連すると報告がある.しかし,蛋白異化亢進や食事摂取量低下が助長される急性増悪期において,栄養状態が理学療法に関するアウトカムへ与える影響は明らかでない.そこで本研究はCOPD急性増悪(AECOPD)患者の栄養状態を調査し,転帰時における自立歩行の可否との関連について検討した.
【方法または症例】
研究デザインは後方視的観察研究とした(2施設,H27〜H28).対象はAECOPDにて入院し,標準的な理学療法を実施した者とした.また,入院前に自力歩行が不可能であった者は除外した.転帰時における自立歩行の可否はlocomotion FIMを用い6以上を可能と判定した.栄養状態の評価は低栄養の有無(入院時%理想体重<80%)と入院後栄養摂取率(入院直後一週間の平均摂取量/目標摂取量×100)の2つを調査した.統計解析は転帰時における自立歩行の可否を目的変数,低栄養の有無と入院後栄養摂取率を説明変数とした多変量ロジスティック回帰分析を実施した.なお,交絡を調整するため年齢,COPD病期分類,市中肺炎重症度分類を共変量として投入した.
【結果】
対象は全101例(年齢77.4±7.4歳,%一秒量59.1±29.7%)であり, うち21例が転帰時に自立歩行が困難であった.栄養状態に関しては,低栄養を有している者が31例存在し,入院後栄養摂取率は平均78.7±31.7%であった.分析の結果,自立歩行の可否に対する低栄養の有無(無:0,有:1)の調整後オッズ比は3.9(95%信頼区間1.3-11.7, p<0.05), 入院後栄養摂取率(単位変化量10%)の調整後オッズ比は0.7(95%信頼区間0.5-0.9 ,p<0.05)であった.
【考察および結論】
AECOPD患者において低栄養の有無や入院後栄養摂取率は,転帰時における自立歩行の可否に関連する可能性が示された. そのため初期評価として栄養状態を評価することは重要であり,栄養摂取率の低い者は早期から栄養療法の併用を検討する必要があると考えた.
【倫理的配慮,説明と同意】
倫理的配慮として,当院における臨床試験審査委員会の承認を得た(承認番号:第369号).ヘルシンキ宣言に沿って,すべての対象者のデータを取り扱う際には十分に注意し、検討を行った.
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-多施設ICU入室中の要因について-
伊藤 武久, 飯田 有輝, 渡辺 伸一, 水谷 元樹
セッションID: O-RS-1-2
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景および目的】
ICUを生存退室した患者において退院後に生じる身体、認知、精神の機能障害としてPICSが問題視されている。今回、ICU入室中において退院時の抑うつ発生に及ぼす影響について明らかにする事を目的とした。
【方法】
ICU に入室し理学療法が施行された連続症例 764 名のうち、除外基準に相当する患者を除外し退院時に質問紙に対する回答が可能であった48例について後方視的に検討した。評価項目は入室時BMI、重症度、ICU在室期間、平均活動時間、退院時の指標として抑うつ発生の有無についてHADSを用いた。退室時指標として筋力にMRC score、握力、せん妄評価にICDSCを使用した。ICU平均活動時間はリハビリプロトコールの各項目を計測し、ICU在室日数で除した値とした。統計解析はロジスティック回帰分析(従属変数に退院時HADS(抑うつ)(8点以上/未満)、独立変数をBMI、MRC、握力、ICDSC、平均活動時間)を行った。また従属変数は同様に、抽出された因子との関係についてROC解析を行った。
【結果】
退院時抑うつと負の相関を認めた指標は入室時BMI、退室時MRC及び握力であった。退院時抑うつ発生の予測因子として入室時BMIが抽出された(オッズ比0.794、95%CI:0.65-0.97)。退院時の抑うつ発生と入室時BMIのROC解析結果はAUC:0.698、カットオフ値22.7㎏/m2
であった。また、ICUにおける患者活動時間と抑うつ発生の影響をみたところ、有意な関連を認めなかったが抑うつ非発生群における活動時間は中央値で32.0分であった。
【考察および結論】
今回、退院時抑うつ発生の予測因子として入室時BMIが抽出され、標準体重を下回る患者は抑うつ発生のリスク因子と考える。一方で直接的な影響を及ぼさなかったものの退院時の抑うつ非発生群におけるICUでの活動時間は中央値で1日30分であった。集中治療領域以外では抑うつに対する持続的な運動が推奨されており、今回の結果から早期運動の必要性と栄養管理の重要性が示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院倫理委員会にて承認を得ている(受付番号290920-03)。本研究は後ろ向き研究で個人の匿名性は確保されており、データ使用の同意についてはオプトアウトを用いた。
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濱田 和美, 入江 将考, 兵頭 正浩, 花桐 武志
セッションID: O-RS-1-3
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】
非小細胞肺癌(NSCLC)患者における術前の運動耐容能と、耐術能評価や術後合併症との関連性を示した報告はあるが、長期予後との関連についての報告はまだ少ない。本研究の目的は、胸腔鏡下肺葉切除術(TL)を受けた早期NSCLC患者における術前6分間歩行距離(6MWD)と長期予後との関連を調査することである。
【方法】
2005年6月~2013年12月に当院でTLを受けたNSCLC連続症例を対象とし、全例術前6分間歩行試験を行い6MWDを記録した。カルテより、患者因子、腫瘍因子、フォローアップ期間、死亡日を調査した。統計分析は、5年生存率をKaplan-Meier生存曲線(Log-rank法)で評価し、Cox比例ハザード回帰分析で5年生存率の独立因子を同定した。有意水準は5%とした。
【結果】
研究期間中にNSCLCと診断され外科的治療を受けた連続症例450例中、病理病期I~ⅡでTLを受けた患者224例が解析対象となった。フォローアップ期間(中央値)は56.9ヶ月で、All-cause mortalityは16.5%(37例)であった。6MWDを400mカットオフとし2群で比較した5年生存率は、6MWD≥400m群88.2%、6MWD<400m群は63.0%で、有意な関連性を認めた(P<0.001)。Cox比例ハザード回帰分析にて、年齢、病理病期で調整したモデルでは、6MWDは有意な独立因子であった(Hazard ratio: 0.41; P=0.012)ものの、Performance Status(PS)を加えて調整したモデルでは6MWDは有意ではなかった(Hazard ratio: 0.56; P= 0.138)。
【考察および結論】
本研究の結果から、6MWDは早期NSCLC患者の5年生存率に有意に関連していた。多変量解析の結果からは6MWDはPSを超えるものではなかったものの、病理病期で調整しても有意な独立因子であった。PSは主観的評価であり、それを補う客観的評価の必要性も論議されていることからも、術前6MWD評価の意義は高いことが示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に沿い研究計画書を作成し、当院の研究審査委員会(登録番号:15000-161)の承認を得ている(承認番号:2015-0005)。対象者全員に十分な説明を行い、同意を得て評価及び呼吸リハビリテーションを実施した。なお、ヘルシンキ宣言に準じ倫理的配慮に基づきデータを取り扱った。
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吉岡 幹太, 齊藤 哲也, 小和板 仁, 楯野 英胤, 宮澤 僚, 礒 良崇, 久野 越史, 角田 史敬, 大野 範夫
セッションID: O-RS-1-4
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景および目的】慢性閉塞性肺疾患(COPD)は呼吸困難のため活動量が低下し、身体機能の低下をもたらす。また、慢性心不全においても心機能低下のため運動耐容能が低下し、身体機能の低下をもたらすことが知られている。我々は以前に呼吸リハビリテーション(リハ)対象症例と心臓リハ対象症例の体組成を検討した結果、骨密度(BMD)にのみ有意差を認め、筋肉量・体脂肪率は呼吸リハ症例が少ない傾向にあったことを報告した。今回は慢性疾患のみを対象とし、リハプログラム立案に関連する因子について検討した。
【対象と方法】当院でCOPD・心不全と診断され、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)による体組成評価を実施された男性23例[COPD17例、心不全6例、年齢81.52(6.45)歳]を対象とした。COPD群と心不全群におけるDEXA・血液検査・呼吸機能検査・心機能検査データについて比較した。
【結果】[平均値(SD)]
筋肉量が7.00kg/m2未満だったのは65%(COPD66.7%、心不全50%)であった。Albが基準値(3.50g/dl)未満だったのは61%(COPD71%、心不全33%)であった。FEV1[1.20(0.57)vs1.99(0.31),p<0.05]、FEV1%[44.05(13.0)vs74.88(14.39) ,p<0.05]はCOPD群が有意に低値であった。体脂肪率[25.12(11.10)vs30.22(6.71)]、四肢非脂肪量[18.78(3.63)vs18.81(3.84)]、全身BMD[1.00(0.14)vs1.07(0.09)]に有意差はなかった。
【考察】2群間における身体特性に有意差はなかった。全体の65%に筋肉量の低下がみられ、一般的には虚弱なグループであった。また、全体の61%にAlbの低下がみられたことから、リハを実施する際の負荷量調整だけでなく、包括的介入の必要性が示唆された。2群間のDEXAに差がなかったことから、疾患によって一律的なリハプログラムを立案することは妥当ではないことが示唆された。FEV1、FEV1%に有意差を認めたことより、慢性疾患におけるリハプログラム立案に関連する因子は疾患特異的な項目であった。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は昭和大学藤が丘リハビリテーション病院の臨床試験審査委員会にて承認を得た。診療録から研究対象者の資料・情報を取得する際、オプトアウト等により研究対象者等に資料・情報の利用目的を含む当該研究についての情報を、研究内容説明書にて通知・公開し、研究対象者の資料・情報が利用されることを研究対象者等が拒否できる機会を保障した。研究対象者からの使用の中止の申し出があった場合には、当該情報は使用しない。
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川越 厚良, 清川 憲孝, 古川 大, 岩倉 正浩, 大倉 和貴, 柴田 和幸, 菅原 慶勇, 高橋 仁美, 若林 育子, 塩谷 隆信
セッションID: O-RS-1-5
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の予後に影響する因子は多岐にわたり,身体活動量(PA)は最も強く影響する因子とされる. しかし,COPD患者の予後に関連する因子について,PAを加味した検討は日本国内においては報告が少ないことが現状である.本研究では,後方視的に安定期COPD患者の予後に影響を与える因子について検討した.
【方法】対象は外来呼吸リハビリテーション通院中にPA及び呼吸・身体機能項目が測定され,カルテによる追跡調査が可能であった安定期男性COPD患者25例(年齢73±7歳, FEV1: 53.2±27.2%pred)である. 測定時点において,重篤な併存症を有する者,認知機能の低下がある者は対象から除外した. 対象者の平均追跡調査期間は85±17か月間であり,期間中にCOPDにより死亡した8例をnon-Survivor群(NS群),調査終了時点で生存していた17例をSurvivor群(S群)とし,2群間におけるbaselineのPA及び呼吸身体機能項目を比較した.また,予後に対するリスク因子の検討として,2群間で有意差がみられた項目を独立変数としたロジスティック回帰分析を行い,ROC曲線によりCut off値を算出した.
【結果】S群と比較し,NS群では大腿四頭筋筋力(QF, p=0.010)及び,1日の総歩行時間(gait, p=0.038)が有意に低値を示した. 年齢や呼吸機能,身体組成には有意差は認められなかった. 単変量による回帰分析ではQF(Odds比=0.907, p=0.035), gait(Odd比=0.961, p=0.040)が有意な因子として算出され, ROC曲線により,gaitにおいて有意なCut off値(167分/日)が算出された(AUC=0.75, p=0.034). 多変量による回帰分析では年齢,呼吸機能,身体組成, gait,QFを説明変数とした有意な回帰モデルが得られた(p=0.021).
【考察および結論】COPD患者の予後に関するリスク因子として,QF, gaitが有意な因子として算出され,多変量解析では有意な回帰モデルが得られた.また,COPD患者の生存の有無に関連することが示唆される歩行時間のcut off値は167分/日であった.
【倫理的配慮,説明と同意】本研究に使用するデータ測定に関しては,秋田大学倫理審査委員会の承認を得ており(受付番号:658, 870),対象者にはデータの2次利用についての十分な説明を行い,書面同意を得て行った.また,カルテによる追跡調査については市立秋田総合病院倫理審査委員会の承認を得て,実施した(受付番号:43).
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白石 匡, 杉谷 竜司, 水澤 裕貴, 釜田 千聡, 東本 有司, 西山 理, 澤田 優子, 木村 保, 東田 有智, 福田 寛二
セッションID: O-RS-1-6
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)は,呼吸困難により身体活動(以下Physical Activity :以下PA)の減少をきたす.呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)においては運動療法と患者教育が中心的な構成要素である.患者教育は予防,診断,管理のすべてのプロセスにおいて重要な位置を占め,自己管理能力と疾患・理解は呼吸リハの効果に影響する.しかし,COPD患者の自己管理能力がPAにどのように影響するかは十分検討されていない.そこで本研究の目的は自己管理能力の変化とPAとの関連を検討することとした.
【方法または症例】対象は外来呼吸リハを実施したGOLDの重症度分類2~4度のCOPD患者30名.評価項目は自己管理能力(LINQ),運動耐容能(6分間歩行距離:6MWD),PAは3軸加速度計を使用しPAL(Physical Activity Level:1日の総消費エネルギー/基礎代謝量)とした.その他,年齢,呼吸機能,BMIなど基礎情報,健康関連QOL(SGRQ),うつ・不安(HADS)を評価した.評価は呼吸リハ介入時と介入後12週以降に実施し,呼吸リハ前後のLINQの総スコアの変化をもとに,LINQの改善群と非改善群の2群に群分けした.呼吸リハ実施前後のPAの変化量と各指標の変化量との関係,2群間の呼吸リハ前後の比較を分析した.
【結果】LINQ改善群が17名,非改善群が13名であった.6MWDは,両群ともに有意に改善した(前376±97m,後411±97m,p<0.05).PAはLINQ改善群のみに有意に改善した(1.33±0.08,1.37±0.08,p<0.05).また,呼吸リハ実施前後におけるPAの変化量はLINQと負の相関がみられた(r=-0.45,p<0.01).
【考察および結論】自己管理能力の向上は,運動耐容能の向上をPAの向上へと関連づける可能性が示唆された.COPD患者の身体活動を改善するために,単純な運動療法のみではなく,自己管理能力を獲得させ,生活習慣を変えていくことが重要である.
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は近畿大学医学部倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号25-248).倫理的配慮としてすべての対象者に本研究の評価の趣旨や方法,個人情報保護に関して説明し,同意を得た後に実施した.
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石橋 賢一, 水谷 元樹, 近藤 友和, 丸田 雄介, 坂口 硬太, 石坂 清志郎, 木全 叶
セッションID: O-RS-2-7
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【目的】誤嚥性肺炎(以下AP)を含む肺炎患者において、入院から3日以内に離床することが生命予後に大きく関与するとの報告があり、肺炎患者においても早期離床は推奨されている。しかし、AP患者は高齢や複数の疾患を罹患していることもあり、離床に難渋することもある。離床の遅延は生命予後だけでなく、入院期間延長や廃用による身体機能低下にも関連しており、今回当院でのAP患者の離床遅延の要因を検討することとした。
【方法】2016年4月~2017年3月にAP診断にて入院した全198例のうちデータ欠損例を除く157症例を対象とした。Mundyらの先行研究より、連続20分以上の車椅子乗車が可能な状態を離床開始の定義とし、3日以内に離床可能であった群をコントロール群(103例)、離床に4日以上かかった群を対象群(54例)に分類し、後方視的に調査した。調査項目は年齢、%IBW、要介護度、脳血管疾患・心疾患・APの既往歴の有無、入院時血清アルブミン値(以下Alb)肺炎重症度分類(以下A-DROP)、藤島式嚥下グレード、入院前FIM、絶食期間、入院前環境を調査した。統計は離床までの期間と各測定項目の相関関係をSpearmanの順位相関係数にて、また、コントロール群と対象群の差はχ²乗検定、Mann-WhitneyのU検定にて求め、有意水準を5%未満とした。
【結果】Alb(r=0.52、p<0.01)絶食期間(r=0.56、p<0.01)に相関関係及び有意差を認めた。また、A-DROP(r=0.36、p<0.05)AP既往(r=0.37、p<0.05)においても両群間において、相関関係は低いが有意差を認めた。その他の項目に関しては相関関係及び有意差を認めなかった。
【考察】APの既往がある症例においては、入院時より低Alb状態や重症度が高い可能性があり、これが絶食期間の延長に関与し、離床開始時期の遅延に繋がっていくと考える。今回の結果を踏まえてAP患者において早期より栄養状態を把握しつつ、栄養管理を踏まえた理学療法の早期介入が重要であると考えた。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承諾を得て行った。
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市川 毅, 田尻 さくら子, 横場 正典, 木村 雅彦, 山口 紗輝, 堀水 湧, 及川 悟, 近藤 哲理, 片桐 真人, 豊倉 穣
セッションID: O-RS-2-8
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】瞬時に鼻を啜る時に生じる最大吸気鼻腔内圧(SNIP)は,簡便で患者への負荷が小さい吸気筋力評価である.また,我々は瞬時に鼻をかむ動作(reverse sniff)時の最大呼気鼻腔内圧(RSNEP)が,呼気筋力評価になることを健常者で検証した(Ichikawa T, 2015).今回,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の急性増悪後のSNIPとRSNEPについて,理学療法(PT)介入前後の変化と,従来の呼吸筋力評価である最大吸気・呼気口腔内圧(MIP・MEP)および換気機能との関連性を検討した.
【方法または症例】対象はCOPD急性増悪で入院し,薬物・酸素療法およびPTを行った患者25例(男性19例,年齢77±6歳,入院日数27±19日)とした.評価時期はPT開始後7日以内(開始時)と退院時とし,SNIP,RSNEP,MIP,MEP,換気機能として努力性肺活量(FVC)および気流閉塞指標の対標準1秒量(%FEV1)を評価した.統計解析は,各指標の変化にpaired t検定,各指標間の関連性にPearson積率相関係数を用いた(有意水準5%未満).
【結果】PT介入前後の変化では,SNIP(開始時:43±20 vs 退院時:50±16 cmH2O),RSNEP(35±21 vs 46±25),MIP(45±18 vs 57±22),MEP(69±32 vs 84±34),FVC(1.94±0.58 vs 2.12±0.61 L),%FEV1(42±14 vs 47±15%)のすべてが改善した.また,SNIPとMIP(開始時:r=0.63,退院時:r=0.74),RSNEPとMEP(開始時:r=0.44,退院時:r=0.45)の間に正の相関を認めた.SNIP,RSNEP,MIPおよびMEPは,FVCとの間にそれぞれ正の相関(開始時:r=0.57~0.67,退院時:r=0.51~0.81)を認めたが,%FEV1はいずれの指標とも相関を認めなかった.
【考察および結論】SNIPおよびRSNEPは,MIPおよびMEPと同様にCOPD急性増悪後の呼吸筋力の回復を示す指標になると考えられた.ただし,RSNEPは,SNIPとMIPの関係と異なり,MEPと高い相関関係に至らなかったことから,MEPとは異なる圧発生の要素を含んだ指標である可能性が考えられた.
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,東海大学医学部臨床研究審査委員会の承認を得て実施した(受付番号:15R-149).すべての研究対象者に対しては,本委員会にて承認を得た同意説明文書の内容に則って,本研究の内容やプライバシーの保護,研究への協力は自由意志で決定できることなどを十分に説明したうえで,臨床研究への協力の同意を書面にて得た.また,研究対象者の個人情報およびデータの秘密保護に十分配慮した.
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-身体機能との関連-
韮澤 光太郎, 武市 梨絵, 横山 仁志, 渡邉 陽介, 中茎 篤, 中田 秀一, 松嶋 真哉, 相川 駿, 小林 孝至, 峯下 昌道
セッションID: O-RS-2-9
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】
COPD患者は急性増悪にて入退院を繰り返すことで身体機能やADLが低下する.近年,生命予後や急性増悪と関連する身体活動性(physical activity:PA)が注目されているが,入院期におけるPAの実態や身体機能に及ぼす影響は十分に検討されていない. そこで本研究は,COPD急性増悪患者の入院期におけるPAと身体機能との関連について検討することを目的とした.
【方法または症例】
研究デザインは前向き観察研究とした.対象は2016年3月~2017年12月にCOPD急性増悪にて入院し理学療法介入した17例(男性16名,平均年齢79.5歳,平均%1秒量74.2%)とした.評価項目はPAに加え,身体機能評価として下肢筋力と運動耐容能を測定した.PAはスズケン社製ライフコーダGSを用い,退院前7日間の歩数(歩/日)の中央値を入院期PAとして算出した. 身体機能評価は理学療法室での初回介入時(初期時)と退院時に実施した.下肢筋力は等尺性膝伸展筋力を,運動耐容能は6分間歩行距離(6MWD)を測定し,各項目の変化率{(退院時-初期時)/初期時×100}を算出した.以上から得られた結果より,入院期PAと身体機能の変化率との関連をspearmanの順位相関係数を用いて検討した.なお,測定値はすべて中央値(四分位範囲)で示した.
【結果】
入院期PAは1054(628−1479)歩/日であった.等尺性膝伸展筋力は,初期時23.3(20.2−26.5)kgf,退院時24.7(19.9−30.8)kgfであった.その変化率は2.4(-5.2−8.0)%であり,入院期PAと有意な相関関係を認めた(r=0.50,p<0.05).また,6MWDは初期時225(175−225)m,退院時225(188−280)m,変化率は18.0(-6.7−25.0)%であり,6MWDの変化率と入院期PAの間には相関関係を認めなかった.
【考察および結論】
COPD急性増悪患者の入院期PAは極めて低値であった.また,入院期PAは下肢筋力の変化率と関連があり,入院期の低活動により下肢筋力低下を招く可能性があることが明らかとなった.そのため,入院期の理学療法介入は運動療法に加え,PAを高める介入も重要であると考えられた.
【倫理的配慮,説明と同意】
倫理的配慮として,聖マリアンナ医科大学生命倫理委員会の承認を得た(承認番号:第2314号).全ての対象者にヘルシンキ宣言に沿って本研究の評価の趣旨,方法,およびリスクを説明し,同意の得られたもののみを対象とした.また,各評価結果と患者情報は個人情報として厳重に管理し取り扱った.
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遠藤 彬浩, 佐野 晋作, 額田 勝久, 奥谷 珠美
セッションID: O-RS-2-10
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
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【背景】
近年,重症の急性肺炎の管理として注目されている方法に腹臥位療法がある. 2014年のLeeらの報告によると腹臥位療法は10時間/日以上の腹臥位時間を確保できたプロトコルのみ有効と報告している.長時間の腹臥位管理を行うためにはマンパワーと安全管理に配慮が必要だが,特別な機材を必要としない方法である.今回,統合失調症が既往にあり,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)にて挿管人工呼吸器管理となった患者に対し,鎮静を行いながら腹臥位を中心とした早期からの長時間の体位ドレナージを実践し,著明な酸素化改善がみられたため以下に報告する.
【症例】
40歳男性.既往歴:統合失調症,気腫性膀胱炎.入院前ADLベッド上生活. BMI:13.12kg/m2.統合失調症の病状が落ち着かず医療保護入院中.夜間に脱衣行為があるため体幹抑制を行っていたところ,意識障害,低酸素状態となり当院救急搬送.両側肺背側に著明な肺炎像ありARDSと診断,挿管し人工呼吸器管理されICU入室となった.
【結果】
第1病日:救急搬送時P/F比:56.6.挿管後P/F比:88.63.第2病日:P/F比:173.2.第3病日:P/F比:255.3.ベッド上リハ開始, Nsと連携し翌日まで計14時間腹臥位管理実施.鎮痛剤offすると夜間体動激しく,攻撃性強く抜管のリスクあり再開,鎮静剤増量し過鎮静なくRASS:-1で経過.第4病日:P/F比:340. X線画像上,炎症・浸潤影の改善がみられ酸素化も改善.腹臥位・前傾側臥位管理継続.第12病日:日中人工鼻へ.第14病日:ICU退室しHCU入室.車椅子移乗実施.第23病日:HCU退室し一般病棟へ.第59病日:前医へ転院となった.
【考察】
本症例では統合失調症により攻撃性が強くなっており,抜管等のリスクも考えられた.過鎮静は呼吸筋・骨格筋萎縮やVAP等を引き起すリスクがあるが, 医師・看護師と連携しRASS:-1で鎮静・鎮痛を行うことで危険行動を抑制し,早期からの長時間の腹臥位・前傾側臥位管理が可能となり,背側の気道クリアランス改善・肺拡張の促進・換気血流比不均等が改善したことで酸素化が改善したと考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
今回の報告において本人及びその家族に対し十分な説明を行い, 承諾を頂いた.
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小林 武史, 藤原 裕太, 尾形 知美, 小野 央人, 三塚 由佳, 高橋 識至
セッションID: O-RS-2-11
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】近年間質性肺疾患 (以下ILD) に対する呼吸リハビリテーション (以下呼吸リハビリ) の有効性は多く報告されているが,ILD急性増悪期や膠原病関連間質性肺疾患 (以下CTD-ILD) に対する呼吸リハビリのエビデンスは明確でない.CTD-ILD増悪の急性期から,自宅退院に向けて呼吸リハビリを長期実施した症例を報告する.
【症例】65歳男性.2年前に関節リウマチとCTD-ILDの診断.リウマチによる著明な関節症状はなく,増悪前は仕事や活動的な趣味を行っていた.X-2日に急性呼吸不全のため入院となり,抗菌薬とステロイド投与および7L/分リザーバーマスク (以下RM) による酸素療法開始となった.
【結果】X日から6~8L/分RM使用下で急性期呼吸リハビリ開始した(FIM 92点、ベッド周囲基本動作でSpO2 80%前半まで低下,修正Borg scale 1).X+6日に再増悪し,非侵襲的陽圧換気療法 (以下NPPV) 開始となり,NPPV下で離床練習を実施した.X+17日に終日NPPV離脱し,X+21日に8L/分RMで歩行練習開始(10m歩行でSpO2 88%).また,積極的な運動療法とADL練習を開始した.X+38日から実施されたステロイドパルス療法にて酸素化が改善し,X+77日から5~7L/分オキシマイザーペンダントにて院内歩行開始.X+90日時点で,治療を継続中で,酸素流量が高流量であることを理由に,自宅退院が困難であり,呼吸リハビリを継続した.X+142日に,6分間歩行試験実施できるまで回復した(距離285m,SpO2 96→88%,修正Borg scale 2).在宅酸素療法(安静時2L/分,労作時3L/分オキシマイザーペンダント)を導入し,X+143日に自宅退院となった(FIM 123点).退院後は温泉旅行など趣味の継続ができている.
【考察および結論】重症例であり治療が長期化したが,急性期からの運動療法とADL練習の長期継続で,廃用やステロイドに伴う筋力低下によるADL障がいを改善し,自宅退院を可能にしたと考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
本学会における発表にあたり,検査データやリハビリ介入時に得られたデータ及び,リハビリの経過について報告することを説明し,書面にて同意を得た.また,同意の撤回はいつでも可能であり,その際に不利益になることは無いことを説明した.
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小柳 慎介, 清水 さくら
セッションID: O-RS-2-12
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景】破傷風は,開口制限や強直性痙攣・呼吸困難といった全身症状を呈する重篤な感染症である.破傷風患者に対する理学療法の報告は少なく,今回強直性痙攣期から理学療法介入を開始したため報告する.
【症例紹介】60代男性.診断名:破傷風.既往歴:糖尿病.入院前ADL自立.現病歴:6月中旬サンダルを履き屋根の上でペンキ塗り作業中,両膝・左第5趾を熱傷.7月中旬後頚部の疼痛が出現し徐々に増悪,開口制限も出現したため救急外来を受診され入院となる.
【経過・理学療法結果】1病日心拍低下,呼吸停止を認め鎮静下挿管人工呼吸器管理.Onset time48時間未満.3病日人工呼吸器関連肺炎(以下VAP)併発.4病日より理学療法介入を開始.RASS:-5.人工呼吸器設定SIMV+PS,FiO2:0.5.SpO2:99%.循環動態は安定.聴診:左肺水泡音.極軽度の刺激でも容易に強直性痙攣を誘発.この期間の理学療法は肺炎の改善・予防,拘縮予防を目的とした.体位調整は自動体位変換マットを利用し,ROM練習では四肢・頚部や口腔周囲を愛護的に実施.また看護師とも情報共有を図り特にケア後は留意頂いた.徐々に痙攣が緩和され鎮静薬減量に伴い26病日人工呼吸器装着下にて端座位開始.離床の際には特に呼吸・循環動態など自律神経症状に配慮した.RSTの介入もあり 35病日人工呼吸器離脱に至り歩行練習開始.47病日経口摂取開始.Barthel Index:95点,6分間歩行試験では315m完遂するも,屋外歩行や肩関節可動域(屈曲120度,外旋20度)に課題が残り59病日回復期病院へ転院となった.
【考察】Onset time48時間未満に加えVAPを併発した重症破傷風患者であったが病棟看護師とも連携を図り病期に適した理学療法を実施する事でADLの向上が図れた.また早期より口腔周囲へのアプローチを行った事で経口摂取の獲得にも至った.強直性痙攣期において肩関節可動域に影響を与える背筋・肩甲帯周囲筋等へのアプローチは今後の課題である.
【倫理的配慮,説明と同意】発表に際し本症例に対し口頭・書面にて説明し,同意・署名を得た.
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吉岡 佑二, 大島 洋平, 佐藤 晋, 角田 茂, 松田 秀一
セッションID: O-RS-3-13
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】食道癌周術期は,術後合併症予防,早期回復を目的とした術前リハビリ介入が重要であり,先行研究から術前身体機能は短期的な周術期経過に関与することが示されている.しかし長期予後に及ぼす影響は不明であり,長期経過を見据えた場合のリハビリの意義は不明確である.本研究の目的は食道癌術前身体機能および活動量が,術後3年生存率に及ぼす影響を検討することとした.
【方法】対象は2009年~2014年に,食道癌手術目的に当院に入院し,リハビリ介入を実施した116例のうち,術前に身体機能の評価を実施できた111例(平均年齢65.2±7.8歳,男性96名)とした.運動耐容能は6分間歩行距離(以下6MWD)にて評価し,上位25%をカットオフとして2群に分類した.身体活動量は日本語版IPAQ Short Versionを用いて平均的な1週間における活動量を調査し,先行研究に基づいて9METs*h/weekをカットオフとして2群に分類した.また6MWD,IPAQともに良好を高体力/高活動群,どちらか一方のみ良好を中間群,どちらも不良を低体力/低活動群の3群に分類した.診療録より術後3年間の生存,死亡を調査し,各群における術後3年生存率をKaplan-Meier法で算出し,Log-rank検定にて群間差を検証した.またCox比例ハザード回帰分析によって年齢,臨床病期で調整したハザード比を推定した.有意水準は5%とした.
【結果】術前6MWDは中央値555m(595-485),IPAQは中央値13.6 METs*h/week(34.9-5.9)であり.術後3年間の死亡は25例(22.5%)であった.術前6MWD,IPAQの良否はそれぞれ単独では術後3年生存率には影響しなかった(p=0.20およびp=0.20)が,高体力/高活動群は低体力/低活動群と比較し予後良好であった(調整後ハザード比0.21,95%CI:0.03-0.78,p=0.02).
【考察および結論】従来行われてきた術前の呼吸練習,筋力,持久力トレーニングによる運動耐容能の向上とともに,術前から活動性の高い生活を実践することで術後長期予後を改善しうる可能性が示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,研究の内容,目的,方法,生じる不利益,被験者になることをいつでも拒否できること,一度同意した後でも時期に関わらず撤回可能であること,プライバシーは最大限に尊重されることを説明した上で口頭にて同意を得て実施した.
また評価項目に関しては,通常診療内で測定する検査項目であり,適切なモニタリングや十分な監視下で試行し,有害事象発生が生じないように評価を遂行した.
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-術前呼吸機能と術後呼吸器合併症の関連-
渡辺 一彦, 成瀬 亜紀, 冨口 若菜, 小山 雄二郎, 水田 博志
セッションID: O-RS-3-14
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】
近年、食道癌根治術に対して術前呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)が術後呼吸器合併症の予防に有効であるとの報告が幾つかある。しかし、術後呼吸器合併症と術前呼吸機能との関連については未だ不明な点も多く、また術前リハビリテーション対象者の選定に術前呼吸機能はあまり考慮されていない場合もある。そこで今回、当院における食道癌切除再建術施行患者を対象とし、術前呼吸機能別に呼吸リハと術後呼吸器合併症との関連について比較検討した。
【方法または症例】
対象は当院にて2016年1月から2017年7月の期間に食道癌に対して食道切除再建術を施行した57名(男性50名、女性7名、年齢68.7±1.0歳)であった。対象者を術前呼吸機能検査の結果から%VC<80%またはFEV1%<70%の低下群と、%VC≧80%かつFEV1%≧70%の正常群に分けた。さらに各群を呼吸リハ実施の有無別に低下・実施群8名(男性8名、女性0名、年齢71.3±5.3歳)、低下・非実施群11名(男性9名、女性2名、年齢71.0±5.3歳)と、正常・実施群9名(男性6名、女性3名、年齢68.8±8.6歳)、正常・非実施群29名(男性27名、女性2名、年齢67.1±8.4歳)に分けた。低下群、正常群それぞれにおいて術後呼吸器合併症をカルテより後方視的に比較検討した。2群間の比較にはχ2検定を用いた。統計解析はSPSSver.20を使用し有意水準は5%未満とした。
【結果】
術後呼吸器合併症の発症数は低下・実施群1名、低下・非実施群5名(p=0.147)、また正常・実施群4名、正常・非実施群20名(p=0.174)であり、いずれも有意差は認めなかった。
【考察および結論】
呼吸リハの効果として、術前呼吸機能別にみると術後呼吸器合併症の発症数に有意差はなかった。これは、術前呼吸機能のみならず他の因子が関連し術後呼吸器合併症の要因となっている可能性がある。また、呼吸リハ実施群では術後呼吸器合併症が少ない傾向であり、術前呼吸機能を問わず呼吸リハの有効性が示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に則って個人情報の管理に十分配慮し、患者情報を診療録より抽出した。また本研究は開示すべき利益相反関係にある企業はない。
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及川 真人
セッションID: O-RS-3-15
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】
肺癌に対する肺切除術後の患者は,手術手技や術後管理の発展,在院日数の短縮によって,早期に自宅退院を遂げている。しかしながら,本患者群が,退院後にどのような身体症状や生活に関連した問題に直面しているかは不明である。今回,肺癌術後患者の退院後の身体症状や生活に関連した問題点を明確にするために,健康関連QOLを指標にその特徴と経時的な推移を調査した。
【方法】
当院呼吸器外科において待機手術予定であり,術前外来診察時より評価が可能であった肺癌患者57例を対象とした(年齢67.3±9.0,男性35例)。評価には,癌患者に特異的な日本語版European Organization for Research and Treatment of Cancer - QLQ -C 30を用い,術前と術後1,3および6ヶ月(1,3,6 POM)の時点で評価を行った。
【結果】
対象者のQOLは,総得点と身体および役割面の機能尺度,倦怠感および呼吸困難,痛み,睡眠障害の症状尺度が,術前と比較して1POMに有意に低下した。これらQOLの総則点や機能および症状尺度の大半の項目は,3POMで術前と同レベルまで回復したが,機能尺度の身体面と症状尺度の倦怠感,呼吸困難は,6POMでもなお,術前値まで回復しなかった。
【考察および結論】
肺癌術後患者のQOLは,身体や役割,倦怠感,呼吸困難,痛み,睡眠において障害を受けやすく,特に階段昇降や長・短距離の歩行など身体活動の質を反映する機能尺度の身体面や倦怠感,呼吸困難は障害が長期化しやすいことが明らかとなった。これらの結果を踏まえると,肺癌術後患者においては,外来によるリハビリテーションの継続など,症状の回復促進に向けた新たな展開の必要性が示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,長崎大学病院臨床研究倫理委員会で承認された後に実施した(承認番号:12092420-3)。全ての対象者に本研究の目的や意義,倫理的配慮について口頭および文書にて説明を行い,書面にて研究参加への同意を得た。
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柳田 頼英, 大曲 正樹, 山本 敦也, 千田 亜香, 町口 輝, 新村 阿矢乃, 有薗 信一, 俵 祐一, 神津 玲
セッションID: O-RS-3-16
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景および目的】昨今,肺癌における肺切除術後の身体活動量についての報告がみられるが,運動耐容能の指標である6分間歩行距離(以下,6MWD)との関係については報告がない.本研究では肺切除術前後の6MWD変化量に,手術後1週間と退院後の身体活動量が影響するかを検討した.
【方法】対象は2016年9月より2017年10月の間に,非小細胞肺癌の診断にて当院呼吸器外科で肺切除術を施行された104例.前方視的に手術前と手術後1ヶ月の6MWDを評価した.また手術翌日より手術後1ヶ月までの期間,身体活動量計を装着し歩数および活動代謝量を毎日測定した.身体活動量は手術後1週間の平均値,退院翌日から手術後1ヶ月(以下,退院後)までの平均値を採用した.手術前と手術後1ヶ月の6MWD,手術後1週間と退院後の身体活動量をそれぞれ比較した.また手術前と手術後1ヶ月の6MWDの差をΔ6MWDとして,Δ6MWDと身体活動量との相関関係を検討した.
【結果】脱落者10例と術後合併症発症者4例を除いた90例(67.0±9.1歳, 男性52例)が解析対象となった.対象者の6MWDは手術前567.3±109.3m,手術後1ヶ月は554.4±104.6mで差を認めず,Δ6MWDは-12.9±65.3m(中央値:-42.5,四分位範囲:-126.25-41.25)であった.手術後1週間の歩数は4070.6±1890.1歩,退院後は4528.1±2364.0歩,手術後1週間の活動代謝量は95.1±57.0kcal,退院後は104.3±104.3kcalでいずれも有意に増加した(p<0.001).Δ6MWDは手術後1週間の歩数 (p<0.05, r=0.22)と活動代謝量(p<0.05, r=0.23)との間に有意な相関関係を認めたが,退院後の歩数と活動代謝量とは相関関係を認めなかった.
【考察および結論】肺切除術後の運動耐容能の回復は退院後の身体活動量と関係なく,入院中の身体活動量が関係した.肺切除術患者の術後運動耐容能回復のためには,入院中急性期での身体活動量増加を目的とした理学療法介入が必要である.
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,当院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:第16-08).また,全ての対象者に本研究の目的や意義,倫理的配慮について口頭および文書にて説明を行い,研究参加への同意を得た.
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島村 奈那, 佐藤 晋, 大島 洋平, 吉岡 佑二, 濱田 涼太, 佐藤 寿彦, 伊達 洋至, 松田 秀一
セッションID: O-RS-3-17
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】
原発性肺癌肺切除術後の呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)は術後肺合併症予防に有効であるとされ、当院では全例に実施している。2012年に術後呼吸リハ早期終了基準(①自己排痰可能、②酸素投与終了、③胸腔ドレーン抜去、④肩関節可動域制限なし、⑤連続300m以上独歩可能)を設け、従来の画一的介入から術後の呼吸リハ期間の短縮を図ったが、術後合併症の増加は見られなかった。今回、終了基準導入による長期予後への影響を検討した。
【方法】
当院にて原発性肺癌(疑い含む)で肺切除を実施した患者を対象とし、終了基準導入前後の連続100名(未導入群50名、導入群50名)を後方視的に検討した。5年間の追跡不能(12名)、最終病理悪性所見なし(5名)、再手術例(7名)を除外した76名(未導入群39名、導入群37名)について、術後5年までの生存解析を行った。有意基準は5%未満とした。
【結果】
76名(年齢68.8±8.2歳、stageⅠ60名、Ⅱ13名、Ⅲ3名)のうち、5年以内死亡例は12名(15.8%)であった。術後呼吸リハ実施回数は未導入群6.5±2.0回、導入群5.2±2.0回、術後肺合併症、死亡率に終了基準導入前後で差は認めず、ロジスティック重回帰分析では病理病期(Ⅱ期以上対Ⅰ期:ハザード比22.6、95%CI 5.7-114.8)のみ術後5年死亡に関連を認めた(年齢調整済)。
【考察および結論】
術前術後の呼吸リハ介入は術後合併症予防に有効とされるが、術後にリハビリ終了基準を設けて術後リハ期間を終了することは術後リハ日数を短縮し、短期的にも長期予後にも影響を認めなかった。肺癌術前後の呼吸リハ介入について、さらなる効率化・短縮化が進められる可能性が示唆された。今後より多数例での検討が望まれる。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は診療記録から後方視的に実施した。当院公式ホームページ上に診療で得られた臨床データはデータベースに集積し研究に使用する可能性があること、データベースへの集積および臨床研究への使用は拒否することができることを明記している。またデータの取り扱いには個人が特定できないよう十分に配慮した。
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中村 真一郎, 永冨 史子, 森國 順也, 濱口 雄喜, 小川 拓也, 吉田 将和
セッションID: O-RS-3-18
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景および目的】肥満は腹腔内臓器に加え脂肪組織が横隔膜の動きを阻害することで,術後は容易に無気肺が生じやすく,呼吸器合併症のリスクとなる.今回,術前より気管支狭窄をみとめ肺癌術後に左肺炎をきたした高齢高度肥満患者を担当した.筋力,運動耐容能ともに低下したが,杖歩行にて自宅退院できた.その経過を報告する.
【症例紹介】83歳女性.身長148cm,体重77kg,BMI35kg/m2.活動性は屋内歩行自立.左大腿骨骨折後,人工骨頭置換術施行した入院中に左下葉肺腺癌と診断された.翌年に胸腔補助下左下葉切除術及びリンパ節郭清を施行した.術翌日,左肺炎を併発し,再挿管となった.術後5日目気管切開,術後18日目人工呼吸器離脱,術後24日目一般病棟へ転出,術後65日目退院となった.
【治療経過】理学療法は術後11日目に開始した.開始時は左無気肺と気管支狭窄及び粘稠痰の貯留を認めた.気管支狭窄と体型を考慮した体位ドレナージによる換気改善を促した.著明な膝伸展筋力(98N/80N)及び肺機能の低下(%VC:58%,%FEV1:62%)が生じ,起居動作に介助を要し,歩行は困難であった.人工呼吸器離脱後は早期から呼吸訓練を行い,広範な筋力低下と高齢症例であることを考慮し,筋力改善の課題は起居動作と歩行を中心に実施した.屋内環境及び肥満と運動耐容能低下による易疲労の観点から歩行は10mを反復的に実施した.さらにバランス課題を加え難度を上げながらADL練習を継続した.その結果,膝伸展筋力(168N/157N)及び肺機能の改善(%VC:66.3%,%FEV1:68.8%)によって起居動作の獲得,運動耐容能の向上が屋内杖歩行自立に繋がり,自宅退院となった.
【まとめ】術後呼吸器合併症により再挿管となった高齢高度肥満患者を担当し,病態と体型を考慮した理学療法が良好なgoalを達成できた.一方,肥満患者に起こりやすい無気肺や高齢患者にきたしやすい筋力低下は予防することが難しく,今後理学療法を行う上での課題にしたい.
【倫理的配慮,説明と同意】症例報告にあたり趣旨を症例に説明し,承諾を得ている.
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福田 浩巳, 西田 宗幹, 林 久恵
セッションID: O-RS-4-19
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】
本邦において,医療・介護関連肺炎(NHCAP)患者の再入院に影響を及ぼす因子について検討した報告は極めて少ない.本研究の目的は,再入院の要因を検討することである.
【方法または症例】
対象は,平成28年1月から12月にNHCAPが契機となり地域包括ケア病棟へ入棟した連続症例76名とした.
調査項目は,年齢,性別,入院時の診断・収縮期血圧・体温,入院時・退院月の血液検査・生化学検査,退院時のBMI・食事摂取経路・食事形態・食事摂取カロリー,入院時・退院時FIM score,入院から理学療法(PT)開始までの日数,再入院までの日数,社会的情報,退院後の社会資源の活用状況,退院前カンファレンスの実施,退院先への情報提供・指導の方法とした.退院日から1年以内に再入院した群を再入院群とした.
再入院の要因の検討は,従属変数を再入院の有無とし,単変量解析にて有意差を認めた因子を独立変数として,Cox比例ハザード分析(尤度比による変数減少法)を行いハザード比(HR)を算出した.統計学的解析には,SPSS ver. 24.0を用い,有意水準は5%とした.
【結果】
NHCAPが契機となり1年以内に再入院した者は47名(61.8%)であり,その中の66.0%は退院後3か月以内に再入院していた.再入院発生に対するHRは,血清アルブミン値が0.29[p<0.01,95%信頼区間(CI)0.12-0.70],FIM利得が0.36(p<0.01,95%CI 0.18-0.73),年齢が1.06(p<0.01,95%CI 1.01-1.10),入院からPT開始までの日数が1.03(p<0.05,95%CI 1.00-1.07)であった.
【考察および結論】
入院から早期に理学療法を行い機能的自立度の向上を図り,適切な栄養管理を行うことが再入院減少の一助となり得ることが示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,秋津鴻池病院倫理審査委員会の承諾を得て実施した.診療情報は,対象者の包括的同意が得られている事項のみを調査対象とした.なお,後方視的調査を進めるにあたり,個人の情報が特定されないよう得られたデータの管理は連結可能匿名化し,匿名化データはセキュリティー対策を行ったコンピュータ上でのパスワードを設定して管理を行い,個人情報が漏洩しないように配慮した.
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小沢 仁, 伊藤 慎吾, 清水 真治, 原田 智史, 市川 普隆, 藤田 大輔
セッションID: O-RS-4-20
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【目的】
入院期間の短縮化が進む中,介護保険領域での呼吸器疾患患者への呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)の重要性が高まる事が予想される。しかし,我々の経験上,介護保険下において呼吸リハが必要な利用者は一定数存在しているが,十分に呼吸リハを提供できていない現状を感じている。そこで,ケアプラン作成の要となる介護支援専門員(以下CM)の呼吸リハの認知度に関する基礎データが必要と考え,本研究はCMの呼吸リハの認知度と関連要因を明らかにすることを目的として実施した。
【方法】
対象は山梨県内の居宅介護支援事業所管理者256名のうちアンケートを回収できた134名とした(回収率52.3%)。調査項目は呼吸リハの認知度(1:全く知らない,2:知らない,3:知っている,4:よく知っている,5:とても知っている)とCMの保有資格とした。統計学的解析は呼吸リハの認知度と保有資格を医療系(看護師・保健師等)CMと福祉系(介護福祉士・社会福祉士等)CMに分類してカイ二乗検定の独立性の検定を行い,クロス集計表の残差分析によって関連を調べた。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
福祉系CMは呼吸リハの認知度を「1:全く知らない」と回答する者が多く,「3:知っている」と回答する者が少なかった(p<0.05)。医療系CMは呼吸リハの認知度を「1:全く知らない」と回答する者が少なく,「3:知っている,5:とても知っている」と回答する者が多かった(p<0.05)。
【考察】
本研究の結果,CMの呼吸リハの認知度は保有資格によって傾向が異なることが明らかになった。これは,過去の呼吸リハへの関わりが認知度に影響していると考えられる。平成29年度CM実務研修受講試験の職種別合格者数は,介護福祉士単独で構成比率の約7割を占めている。従って,CM全体に対して、呼吸リハの適応についての勉強会やケーススタディ等の学習支援をすることが、山梨県内の呼吸リハ普及に寄与できるものと考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
健康科学大学倫理審査委員会の承認(2016年第16号)を受けて実施した。同封した文書にて調査内容を記載し,回答の有無その他による不利益が一切ない事,また自由意思による参加である事を明記した。質問紙の返答をもって以上に同意したとみなした。尚,本調査に関連し開示すべき利益相反関係にある企業等はない。
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杉谷 竜司, 白石 匡, 釜田 千聡, 水澤 裕樹, 木村 保, 福田 寛二
セッションID: O-RS-4-21
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】
6分間歩行試験(以下6MWT)は,慢性呼吸器疾患の運動耐容能の評価として広く普及し,慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者の予後予測に有用な指標である.
“脈拍上昇率”は,6MWT時の低酸素刺激に対する応答性を示すとされており, SpO290%時点での脈拍数,最大脈拍数までの変化量の割合にて算出する(90%⊿脈拍数/⊿脈拍数×100).特発性肺線維症患者では自覚症状との関連があるとされる.
本研究では,COPD患者における6MWT時の脈拍上昇率の特性を検討する.
【方法または症例】
対象は,当院の外来呼吸リハにて労作時低酸素血症を認めたCOPD患者15例.
6MWTでは,歩行距離,Borg Scaleにて試験前後での⊿呼吸困難感,⊿下肢疲労を評価.パルスオキシメーターはAnypal Walk(フクダ電子株式会社)を使用.6MWT中のSpO2,脈拍数を計測ソフトウェアFHM-02V(フクダ電子株式会社)にて解析し,脈拍上昇率を算出.
統計学的解析はPearsonの相関係数を用いた(有意水準5%).
【結果】
年齢77.5±5.2歳.在宅酸素療法(導入/非導入)は5/10例.呼吸機能検査は,VC3.27±0.88L,%VC93.3±23.6%,FEV11.41±0.5L,%FEV152.6±19.8%,FEV1/FVC48.9±19.7%.GOLD stage(Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ)は,1/5/7/2例.
歩行距離384.1±116.2m,脈拍上昇率57.9±23.6%,⊿呼吸困難感2.7±2.1,⊿下肢疲労2.4±1.8.脈拍上昇率と⊿呼吸困難感には負の相関を認めた(r=-0.571,p<0.05).
【考察および結論】
脈拍上昇率が低いCOPD患者にて呼吸困難感が強かった.低酸素刺激は肺血管の攣縮を引き起こし,右心負荷が増大する.右心負荷は呼吸困難感や心拍数増加につながり,本研究でも90%未満での脈拍数の変化量が大きい患者にて呼吸困難感が強かったと考える.COPD患者の呼吸困難感を考察する上で心循環系の応答性も評価する必要がある.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則り,患者様とその御家族に書面での承諾を得てから報告している.
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-プロアクティブリサーチ活動により発見されたCOPD患者の特性より-
堀江 淳, 江越 正治朗, 中川 明仁, 松永 由理子, 宮原 一三, 高橋 浩一郎, 林 真一郎
セッションID: O-RS-4-22
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】
COPD患者のリハビリテーションを実施していると、一見、理解力に何ら問題がなさそうであるにもかかわらず、自己管理がほとんどできない症例をよく経験する。本研究の目的は、認知機能、パーソナリティーの特性を記述的、事例的に分析することにより、呼吸リハビリテーションの継続方法について提言することとした。
【症例】
プロアクティブリサーチ(積極的探索)活動で発見されたCOPD(PAR COPD)患者39名のうち、認知機能、健康心理学的特性、パーソナリティーに特徴のみられた7名とした。主要測定指標は、認知障害(MMSE)、軽度認知障害(MOCA-J)、前頭葉機能(FAB)、性格診断(エゴグラム)とし、副次測定指標は、呼吸機能、身体組成、四肢筋力、運動耐容能、健康関連QOL、社会背景とした。
【結果】
GOLD病期はⅠ期2名、Ⅱ期5名、GOLDカテゴリー分類は全員がカテゴリーAであった。握力は31±7kg、大腿四頭筋力は27±8kg、ISWTの歩行距離は324±70m、SGRQ(合計)は14±6点であった。一方、MMSEは25.7±2.2点と高得点であったにもかかわらず、MOCA-Jは18.3±2.0点、FABは11.4±2.5点であった。エゴグラムは活発力(FC)が10.3±5.4点、協同力(AC)が10.0±2.9点であった。
【考察および結論】
PAR COPD患者であることから、病期は早期で、症状は軽く、高い身体機能、身体能力を有していた。しかし、MMSEは高得点であるにもかかわらず、MOCA-J、FABは極端に低く、理解力、自己管理能力が十分に備わっているとは言い難い状況であった。また、エゴグラムは、FC、ACが特徴的に低く、無気力で、他者の指導を受け入れにくい性格傾向であることが示唆された。呼吸リハビリテーションの継続は患者の自己管理能力に応じて、自己管理経過観察タイプ、監視(外来継続)経過観察タイプかを判断しなければ、早期に発見できたCOPD患者であっても、その恩恵を維持していけないのではないかと推測する。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究実施に際しては、対象者に文書を用いて、口頭にて研究の概要、方法、利益と不利益、データ公表などについて説明した後、自筆署名の文書にて同意を得た。更に、京都橘大学研倫理委員会において研究の倫理性に関する審査、承認を受けて実施した(承認番号17-07)。
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秋山 歩夢, 辻村 康彦, 三川 浩太郎, 平松 哲夫
セッションID: O-RS-4-23
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】気管支喘息は慢性的な咳や痰,呼吸困難感を主症状とし,運動耐容能や健康関連QOL(HRQOL)が低下する.治療の主体は薬物療法であるが,運動療法の実施も推奨されている.しかし,国内では気管支喘息に関する呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の報告は少ない.そこで,本研究の目的は気管支喘息患者に対し,外来呼吸リハが与える影響を検討することである.
【方法】対象は喫煙歴がなく,薬物療法にて病状が安定しており,労作時の息切れを呈する気管支喘息患者24名.年齢:70.5±6.4歳,男性:3名,女性:21名.プログラムは薬物療法や疾患理解,自己管理に関する患者教育を主体に歩数計を用いた在宅運動指導を積極的に行い,運動療法は上下肢筋力トレーニング,有酸素トレーニングを6か月間実施した.評価項目は喘息コントロールテスト(ACT),6分間歩行距離(6MWD),身体活動量(歩数),HRQOL(SF-36)とし,介入前後で比較検討した.
【結果】ACT:21.0±2.6→23.7±1.3点,6MWD:419.7±93.2→483.4±85.3m,身体活動量:4834±2014→6522±2532歩と有意な改善を認めた.SF-36では身体機能,日常役割機能(身体),全体的健康感,活力,社会生活機能に有意な改善を認めた.一方で,体の痛み,日常役割機能(精神),心の健康には変化が見られなかった.
【考察および結論】運動療法や在宅運動指導は気管支喘息患者に対して運動耐容能や身体活動量の向上に有効であった.また,HRQOLにおいて,身体機能のみならず健康に対する感じ方や活動に対する意欲に関する項目に効果を示すことが明らかになった.さらに,喘息コントロールにも良い影響を与えることから,十分な患者教育を含んだ呼吸リハは多面的な効果をもたらす可能性が示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,対象者には口頭にて本研究の趣旨,方法に関する説明を行い,同意を得て行った.得られたデータに関しては,個人が特定されないように個人情報の保護に配慮して検討を行った.
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川原 一馬, 髻谷 満, 山根 主信, 角田 健, 大松 峻也, 大野 一樹, 千住 秀明
セッションID: O-RS-4-24
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】近年増加傾向にある非結核性抗酸菌症(以下NTM症)は,咳や痰,労作時の呼吸困難などの症状によりADLが制限されることが多く,呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)の適応となる.しかし,現在のNTM症の治療は薬物療法や外科療法が中心であり,呼吸リハの効果についての報告は少ない.今回,慢性期NTM症患者に対する呼吸リハを1年間持続して実施する機会を得たので報告する.
【方法または症例】70歳代の女性.X年,NTM症に対する薬物療法が開始される.X+3年に薬物療法の追加のため当院に入院となり,理学療法を開始した.主訴は咳・痰,労作時の呼吸苦,熱発である.在宅での ADLは全て自立していたが,軽度の熱発を繰り返すことで生活範囲は自宅内に留まり,QOLは低下していた.理学療法は自己排痰の習得,運動耐容能と活動量増大,QOL向上を目的に介入した.退院後は1〜2ヶ月に1度の頻度で理学療法の介入を行った.
【結果】介入当初は理学療法士による排痰の介助を行った.介入から1か月後には自己排痰が習得でき,自己排痰率[自己排痰量/(介入排痰量+自己排痰量)×100]は80%を超えた.自己排痰を習得したことで,繰り返す熱発が減少した.運動耐容能は漸増シャトルウォーキングテストで280mから340mに改善し,活動量は平均3900歩/月から4800歩/月に向上した.HRQOLは初回評価ではSGRQ(Total score)において48.0Pointであった.介入1年後には43.6Ponitと有意な改善(臨床的有意な最小変化量:-4Point)を認めた.
【考察および結論】呼吸リハはCOPDには有効であることが多くの研究ですでに示されている.NTM症患者はCOPD患者と類似した症状を有するため,コンディショニングや運動療法,患者教育など包括的なアプローチを行った.その結果,症状の改善,運動耐容能および活動量,QOLの向上が得られた.今後,NTM症患者に対する理学療法の効果についてさらなる検討が必要である.
【倫理的配慮,説明と同意】
学会発表を行うにあたり,ヘルシンキ宣言に基づき個人が特定できないように匿名形式で発表することを本人へ口頭で説明し同意を得た.
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本間 優希, 三浦 利彦, 石川 悠加
セッションID: O-RS-5-25
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景および目的】
神経筋疾患や呼吸筋力が低下した患者の気道クリアランスでは徒手や機械による咳介助(MI-E)が推奨されている。従来MI-Eの設定圧は±40cmH2Oでの使用が推奨されていたが、近年では分泌物喀出に十分な咳のピークフロー(CPF)を得るため、±55hPaを目標としたより高い圧設定での使用も提唱されている。当院では2013年よりCough asistE70を用いてMI-E使用時の呼気流量(MIE-EF)の評価を行っている。MI-Eの効果と使用状況、MIE-EFと呼吸機能の関係性について検討する。
【方法】
対象は当院に入院中の神経筋疾患患者で、2018年1月までにMI-E導を導入されており呼吸機能検査可能な患者とした。VC、最大強制吸気量(MIC)、自力のCPF{CPF(VC)} ,MICからのCPF{CPF(MIC)}、徒手介助による自力のCPF{assistCPF(VC)},徒手介助によるMICからのCPF{assistCPF(MIC)}、MIE-EFを測定。各CPFとMIE-EF間の比較検討をBonferroni法、MIE-EFへの呼吸機能の影響を重回帰分析にて検討した。
【結果】
対象患者は57名。平均年齢32.6±9.3歳(15-51歳)。疾患はデシェンヌ型筋ジストロフィー:44名、脊髄性筋萎縮症Ⅱ型3名などであった。57名のうち40名が2013年以降MI-Eの設定圧を±40からより高い圧へ変更していた。各検査の平均値はVC:405.4±323.4ml、MIC:1783.3±602.4ml、CPF(VC):63.9±63.9l/min、CPF(MIC):204.6±68.7l/min、assistCPF(VC):117.3±82.6l/min、assistCPF(MIC):252.7±76.3l/min、MIE-EF:336.6±76.3l/min。MIE- EFは各CPFよりも有意(p<0.001)に高く、MICと有意(p<0.001)な正の関係があった。
【考察および結論】
MICの維持と適切なMI-E条件設定により効果的な気道クリアランスの維持が可能と示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は対象患者の倫理面に配慮し、当院の倫理委員会の承認を経て行った。
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佐藤 善信, 山口 雄太, 森兼 竜二, 岡田 基紀, 星井 輝之, 岩﨑 洋一
セッションID: O-RS-5-26
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【目的】
機械による咳介助(MI-E)は,神経筋疾患を中心に国内外の多くのガイドラインで推奨されている.近年,MI-E機器の一つである旧モデルのカフアシストは,強制吸気及び強制呼気の設定圧が機種間で不均一になると報告された(Frigerio P et al.,2015).しかし,新モデルであるカフアシストE70における機種間の設定圧の均一性や旧モデルであるカフアシストとの吸気ピークフロー(PIF),呼気ピークフロー(PEF)を比較した報告は見当たらない.今回,カフアシストE70と旧モデルのカフアシストそれぞれの機種間の設定圧の均一性およびPIF,PEFを比較検討した.
【方法】
カフアシストE70とカフアシストのそれぞれ3台ずつを呼吸シミュレータASL5000に接続し,強制吸気および強制呼気の圧とPIF,PEFを測定した.駆動圧は,20/-20,30/-30,40/-40cmH2Oに設定した.コンプライアンス(C)は30,40,60mL/cmH2Oに,気道抵抗(R)は10,20cmH2O/L/sに設定した.
【結果】
装置の駆動圧を40/-40cmH2Oに設定した場合の3台のカフアシストE70の強制吸気および強制呼気の圧は,それぞれ40.0±0.1/-40.4±0.1,39.8±0.1/-41.0±0.5,39.9±0.1/-40.2±0.1であった(cmH2O).一方,3台のカフアシストの強制吸気および強制呼気の圧は,それぞれ38.8±0.1/-38.4±0.2,36.6±0.1/-37.8±0.2,38.3±0.0/-38.1±0.1であった(cmH2O).カフアシストE70のPIFは,設定条件が12種類ある中で2種類は有意に高値となり,8種類は有意に低値を示した.一方でカフアシストE70のPEFは,カフアシストのPEFと比較し全ての設定条件において有意に高値を示した.
【考察】
カフアシストE70は,旧モデルのカフアシストと比して安定した設定圧の均一性を示した.PIFは設定条件による違いを認めたが,PEFはカフアシストE70の方が高値であった.そのため,カフアシストE70は旧モデルのカフアシストよりも気道分泌物喀出能力に優れる可能性がある.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,人や動物を対象としていない.
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三浦 利彦, 本間 優希, 石川 悠加
セッションID: O-RS-5-27
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景および目的】
咳機能の低下した神経筋疾患(NMD)では、機械による咳介助(MI-E)を使用することにより、非侵襲的換気療法の効果を継続するとともに、窒息や誤嚥性肺炎を予防することで胃瘻を回避し、安全に経口摂取を継続するための摂食嚥下マネージメントも報告されている。
今回、進行性のNMD患者においてMI-Eの効果を継続するために、設定条件の変更を必要とした患者について検討する。
【対象方法】
対象は当院に入院中のMI-Eを導入された神経筋疾患患者で、2013年12月から2018年1月までにCough asistE70にてMI-E評価処方のあった患者とした。MI-E条件設定と使用時の呼気流量(MIE-EF)、条件変更理由を診療録より後方視的に調査した。
【結果】
対象患者は57名。平均年齢31.7±9.0(13-48)歳。疾患はデュシェンヌ型筋ジストロフィー:44名、脊髄性筋萎縮症Ⅱ型:3名、その他10名。NPPV使用状況は終日使用44名、睡眠時+日中使用5名、睡眠時のみ使用7名、未使用1名。全例、MI-Eの設定圧は±40cmH2Oで使用していたが、条件変更した患者は38名であった。MI-E条件の変更理由は、MIE-EFが270l/min以下に低下していた者が18名。その他は、分泌物の喀出不十分や肺リクルートメント(LVR)を目的とした設定圧の増加などであった。変更後のMI-E設定圧は±45cmH2O:5名、±50cmH2O:29名、±55cmH2O:3名、±60cmH2O:1名。変更後の平均MIE-EFは272.9±42.9l/min から342.1±38.1l/minに有意に増加していた(p<0.000)。
【考察および結論】
NMDでは進行による肺と胸郭コンプライアンスの低下や上気道狭窄などの影響により、MI-Eの効果が減弱する可能性がある。また、設定圧を増加することにより不随意的に声門閉鎖が起こりMIE-EFが低下する症例も報告されている。定期的なMIE-EFの評価により有効な気道クリアランス能力を維持するための条件変更が必要であった。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は対象患者の倫理面に配慮し、当院の倫理員会の承認を得て行った。
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釜田 千聡, 東本 有司, 白石 匡, 杉谷 竜司, 水澤 裕貴, 山縣 俊之, 木村 保, 福田 寬二
セッションID: O-RS-5-28
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景】
当院での外来呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)の効果として6MWD,SGRQ(total score),HADS(不安スコア)の改善を有意に認めている.呼吸リハの効果は下肢持久力訓練が最も有効であるとされる.しかし,呼吸リハを継続するためのモチベーションの維持が難しいとされる.
バーチャル運動負荷システムとは,風景画像とスタンプラリーを組み合わせ運動することで単調さの軽減と継続利用への動機づけを行えるとされる.
今回,近畿大学理工学部情報学科と共同で慢性呼吸器疾患患者の呼吸リハにおけるバーチャル運動負荷システムの活用について検討した.
【方法】
当院に外来通院中のGOLDstage1~4期の安定期COPD患者で,外来呼吸リハを12セッション(1-2セッション/週)以上,参加できた6例(男性6名 年齢78.0±4.6 在宅酸素療法1名)を対象とした.外来呼吸リハ介入前とバーチャル運動システムを使用した下肢持久力訓練を12週間介入後の2群に群分けした.
評価項目は運動耐容能(6MWD),QOL(CAT)とした.加えて,バーチャル運動システムを使用したCOPD患者15名にアンケートを実施した.質問項目は“運動の意欲”“運動の効果”“運動時の息苦しさ”とした.
統計処理として2群の各項目の前後の変化についてWilcoxon の符号付き順位検定を用いて検討し,有意水準を5%未満とした.
【結果】
6MWD(p<0.05)とCAT(p<0.05)に改善を認めた.バーチャル運動システムに関するアンケートの結果から運動意欲の向上,運動時の呼吸困難感の軽減を認めた症例が約50%であった.
【考察および結論】
バーチャル運動負荷システムを使用した呼吸リハによっても運動耐容能,QOLが有意に改善した.呼吸リハを継続するためのモチベーションを維持することは難しいとされる.本システムを使用することで運動意欲を向上させることができ,呼吸リハの継続に繋がるのではないかと考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は近畿大学医学部倫理委員会において承認され,各患者には同意を得て実施している.
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~背臥位との比較~
若林 みなみ, 間瀬 教史, 山本 健太, 野添 匡史, 小林 実希, 山本 実穂, 高嶋 幸恵, 木原 一晃
セッションID: O-RS-5-29
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】
近年の急性呼吸窮迫症候群に対する肺保護的換気法を考えると、呼吸理学療法プログラムによる肺への応力、歪みを含めた換気力学的変化を理解しておく必要がある。今回我々は、ポジショニングで使用される側臥位(SL)と背臥位(SP)の安静時呼吸(rest)と呼吸介助法時(assist)の換気力学的変化を観察したので報告する。
【方法または症例】
対象は健常成人男性5名。背臥位・側臥位にて1分間のrest後、assistを2分間行った。肺気量(V)、流量(f)、食道内圧(Pes) 、口腔内圧を測定した。Pes測定には食道バルーン法を用いた。得られたデータから径肺圧(Ptp)、肺抵抗(RL)、動的肺胸郭エラスタンス(Edyn rs)、吸気終末肺気量(EILV)、呼気終末肺気量(EELV)を算出した。肺への応力の指標はPtpの変化量(ΔPtp)、歪みの指標はΔV/機能的残気量(FRC)とした。
【結果】
EILVは、rest(SP:3.39±0.29L vs SL:3.91±0.27L)、assist(SP:3.22±0.28L vs SL:3.97±0.32L)ともにSPに比べSLが有意に高値を示した。EELVも同様の傾向を示した。ΔPtpはSPのassist(6.39±2.75cmH2O/L)がSPのrest(2.07±1.22cmH2O/L)、SL(rest:1.64±0.20cmH2O/L、assist:3.09±0.73cmH2O/L)に比べ有意に高値を示した。ΔV/FRCはSP(rest:0.18±0.04 vs assist:0.46±0.19)、SL(rest:0.15±0.03 vs assist:0.35±0.10)ともにrestに比べassistで有意に高い値を示した。RLはSPのassist(3.86±1.81cmH2O/L)がSPのrest(1.73±0.72cmH2O/L)、SL(rest:1.50±0.60cmH2O/L、assist:2.16±1.32cmH2O/L)に比べ有意に高値を示した。Edyn rsはSPのassist(11.7±4.3cmH2O/L)に比べSL(rest:6.4±1.9cmH2O/L、assist:5.9±1.0cmH2O/L)で有意に低値を示した。
【考察および結論】
SPに比べSLは、肺気量位が高く、肺抵抗や肺胸郭系の硬さも低いことがわかった。さらに、肺への応力が生じにくい肢位であることが分かった。
【倫理的配慮,説明と同意】
全対象者に対して事前に研究の目的・方法を説明し、書面による同意を得た。また、本研究は甲南女子大学倫理委員会の承認を得ている。
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-呼吸筋サルコペニアの操作的定義についての検討-
解良 武士, 河合 恒, 平野 浩彦, 小島 基永, 渡邊 裕, 藤原 佳典, 井原 一成, 大渕 修一
セッションID: O-RS-5-30
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
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【背景および目的】四肢の骨格筋と同様に呼吸筋も加齢による影響を受けるため、高齢期では呼吸筋力が弱化する。このような弱化は呼吸筋サルコペニアと呼ばれるが、その明確な定義については未だ検討されていない。本研究は呼吸筋力の指標としてスパイロメトリーで得られる最大呼気流速(PEFR)を用い、呼吸筋サルコペニアの定義のためのカットオフ値を検討した。
【方法】本研究所のコホート研究に参加した地域高齢者471 名を対象とした。サルコペニアはEWGSOPのコンセンサスの方法に日本人の基準を適応して抽出した。呼吸筋サルコペニアはPEFRの下位のものと定義した。PEFRはサルコペニアと関連があることからサルコペニアの有無に対するROC曲線によるカットオフ値を求め、この値以下のPEFRであったものの四分位下位1位・五分位下位2位における分布を観察した。性差を検討するために、PEFRを従属変数、性、その他の共変量の候補を独立変数としたステップワイズによる重回帰分析を行った。
【結果】ROC曲線の解析によりサルコペニアに対するPEFRの判別能は有意であった。重回帰分析の結果、PEFRの性差は約1.0L/secと見積もられたため、ROC曲線の解析と合わせてPEFRの呼吸筋サルコペニアに対するカットオフ値を暫定的に男性5.5L/sec、女性4.5L/secとした。このカットオフ値で定義した呼吸筋サルコペニアは、PEFRの四分位の下位1位に男性:100.0%、女性:60.8%が、五分位の下位2位に男性:88.0%、女性:49.6%が分布した。
【考察および結論】先行研究によれば、排痰能力を判別する咳嗽時最大呼気流速(CPF)は4.0L/secである。しかしPEFR値はCPF値に比べて元々低値であることを考慮すると、今回暫定的に決めた呼吸筋サルコペニアのカットオフ値はそれに比べて明らかに高い。女性では弁別が悪いことも加えると、PEFRだけではなく他の関連する要因も含めた基準を検討する必要がある。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は本研究所の倫理委員会を経て実施され、すべての対象者からは書面によるインフォームドコンセントを得た。
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中村 良太, 三浦 元彦, 竹澤 実, 三浦 真弓, 内出 智恵美, 加藤 幸, 高橋 健
セッションID: P-RS-1-1
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
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【目的】在宅男性COPD患者におけるIADLの関連因子をあきらかにする目的で、Frenchay Activities Index(FAI)と身体機能の関連を検討した。
【対象】在宅男性COPD患者で2012年4月-2017年3月にFAI、肺機能検査、6分間歩行距離(6MWD)、膝伸展筋力測定検査を行い、後方視的にカルテから結果が確認できたものを対象とした。結果が複数ある場合は直近の結果を採用した。対象数は27名、年齢74.0±9.0、GOLD分類(Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ)1/5/13/8名、HOT実施者10名、であった。
【方法】FAIと年齢・BMI・%VC・%FEV1・6MWD・膝伸展筋力間で単回帰並びに重回帰分析を行った。さらに70歳代一般男性のFAI標準値21.3を状態変数とし、抽出された因子で、ROC曲線分析を行った。
【結果】FAIは%VC(r=0.69)・%FEV1(r=0.45)・6MWD(r=0.78)・膝伸展筋力(r=0.72)と相関が有意であった。有意な相関を認めた項目とFAIの重回帰分析にて、6MWD・膝伸展筋力が抽出された(R2=0.68 調整済みR2=0.65)。ROC曲線分析の結果、カットオフ値は6MWD 378m(感度0.83 特異度1.00 AUC0.91)、膝伸展筋力403N(感度0.94 特異度0.89 AUC0.93)であった。
【結語】6MWDと下肢筋力はIADLに関連し、IADL予測の目安にもなりうる可能性が示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づいた規定に遵守し、個人が特定されないように匿名化し、データの取り扱いには十分注意した。
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加藤 幸, 三浦 元彦, 竹澤 実, 三浦 真弓, 内出 智恵美, 中村 良太, 高橋 健
セッションID: P-RS-1-2
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
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【目的】COPD患者の6分間歩行距離(以下6MWD)は予後予測指標であり、そのカットオフ値は334mである(ECLIPSE study 2015)。在宅男性COPD患者における6MDWの関連因子を明らかにする目的で、6MWDと身体機能の関連を検討した。
【対象】在宅男性COPD患者で2012年4月-2017年3月に6MWD、肺機能検査、膝伸展筋力、Frenchay Activities Index(以下FAI)を行い、後方視点にカルテから結果が確認できたものを対象とした。結果が複数ある場合は直近の結果を採用した。対象数は27名、年齢74.0±9.0歳、GOLD分類(Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ)1/5/13/8名であった。
【方法】FAIと年齢、BMI、%VC、%FEV1、6MWD、膝伸展筋力間で単回帰分析を行い、有意な相関を認めた項目と重回帰分析を行った。生命予後指標としての6MWD値334mを状態変数とし、抽出された因子で、ROC曲線分析を行った。
【結果】6MWDは年齢(r=-0.51)・膝伸展筋力(r=0.67)FAI(r=0.78)・%VC(r=0.69)・%FEV1(r=0.51)と相関が有意であった。重回帰分析の結果、年齢・FAI・%FEV1が抽出された(R2=0.73調整済みR2=0.69)。ROC曲線分析の結果、カットオフ値はFAI 10(感度 0.69、特異度 1.00、AUG 0.92)、%FEV1 30.8%(感度 0.62、特異度 0.86、AUC 0.74)であった。
【結語】在宅男性COPD患者の年齢・FAI・%FEV1は6MWDの関連因子であった。6MWDは加齢の影響を受けていた。FAIは在宅男性COPD患者の予後予測因子になりうることが示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づいた規定に遵守し、個人が特定されないように匿名化し、データの取り扱いには十分注意した。
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田村 宏, 玉木 彰, 名和 厳, 兪 陽子
セッションID: P-RS-1-3
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【はじめに】慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する呼吸リハビリテーション(PR)は,生命予後や疾患の進行予防において生涯にわたり継続的な介入が有益であると報告されている.しかしながら,PRが身体機能に与える長期的な影響について述べた報告は散見されるものの,呼吸機能においては明らかにされていない.そこで本研究では,3ヵ月のPRがCOPD患者の呼吸機能に対して長期的な影響を与えられるか明らかにすることを目的とした.
【方法】対象は2年間の経過観察が可能であったCOPD患者GOLDⅡ期14名(年齢77.9±5.1歳,BMI21.6±4.2,男性10名,女性4名)で,3ヵ月のPRを実施した介入群6名とPRの処方がされなかった対象群8名とした.PRは呼吸リハビリテーションマニュアルより呼吸法などのコンディショニングと筋力トレーニングを週1回,3ヵ月間,外来にて実施した.呼吸機能の評価はスパイロメーターを用いて1秒率(FEV1.0%),1秒量(FEV1.0),努力性肺活量(FVC),最大吸気量(IC),最大呼気流力(PF),1回換気量(TV)を測定し PR3ヵ月前,PR初期,6ヵ月後,1年後,2年後に測定されたデータを後方視的に抽出した.統計処理は,介入と期間を要因とした反復測定二元配置分散分析を用いて介入群と対象群を比較した後Tukey法による事後検定を実施した.有意水準は5%とした.
【結果】各期間における両群間の呼吸機能変化においてTVに交互作用を認め,介入群におけるTVのPR初期は0.63±0.31Lから6ヵ月後は1.15±0.16Lと有意に増加した(p<0.05).それ以降1年後,2年後ともに有意な減少を認めなかった.対象群は有意な経時的変化を認めず低下を示した.
【考察】TVはCOPD理学療法診療ガイドラインより呼吸機能の指標として長期効果を検討すべき重要な指標と提言されている.本研究より介入群のTVがPR初期より6ヵ月間有意に増加を認めたことから,COPD患者の長期的な呼吸機能の変化に少なからず影響を与えたものと推察された.
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,市立芦屋病院倫理委員会の承認を受けており,全ての対象者または家族に同意を得た.データは個人情報保護に十分に留意して管理した.
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田中 雄也, 金田 瑠美, 岡本 香保里, 井上 真実, 陣内 由美, 中澤 裕二, 松尾 聡, 津田 徹
セッションID: P-RS-1-4
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景】COPD患者に外来呼吸リハの介入を行うも急性増悪を繰り返す患者が多く認められる.冬季になると活動量の減少に加え,外来呼吸リハ通院の頻度が減少する.当院の外来リハを利用する患者は高齢で重症例が多く,状態を把握するためにも日誌の活用は重要である.しかし,既存の日誌が患者の生活背景に適合していなければ導入および継続が難しい.
【方法】外来呼吸リハ通院中のCOPD患者のうち既存の日誌を使用していない45名に対し,患者と相談のうえ項目(呼吸症状と歩数,体重,血圧等)を選択した日誌の記載を促した.拒否した17名とドロップアウトした8名は除外した.対象は6ヶ月以上,日誌を継続して記載できた10名(平均%FEV1:36.6%,男性:8名,平均年齢:74.3歳,HOT使用者:6名)とした.日誌開始時と日誌開始6ヶ月後に評価(肺機能:%FEV1,修正MRC scale;mMRC,BMI,筋力:握力・下肢筋力,運動耐容能:6MD,健康関連QOL:CAT,歩数)を行った.また日誌を使用した6ヶ月間と前年の6ヶ月間との増悪回数と在院日数,医療費を比較した.
【結果】6ヶ月前後での評価項目の比較は,%FEV1 +2.7±3.6%,mMRC +0.3±0.9,BMI +0.1±0.5kg/m2,握力 -0.4±3.2kg,下肢筋力 -0.1±0.1kgf/weight、6MD -2.2±21.7m,CAT +1.3±5.3点,歩数 +371.7±674.7歩/日であった.また,前年との比較は増悪回数 -0.2±1.1回,在院日数 -10.8±38.2日,医療費 -18981.9±94987.9点であった.
【考察】重症例が多く入退院もあり呼吸症状の悪化と身体機能の低下が認められた.患者自身が日誌の項目を選択することで導入が可能となった.日誌を毎日記載することで患者が自身の状態変化に気づくことができ,増悪回数の減少に繋がったと考えられる.PTが日誌の内容を把握することで,日誌および外来リハの継続ができ歩数の調整を促すことができた.外来呼吸リハに加えて,日誌を継続することで体重の維持と増悪入院が減少し医療費の削減へ結びついた可能性がある.
【倫理的配慮,説明と同意】全ての対象者に本研究の趣旨と目的、個人情報保護について説明し、書面にて同意を得た。
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大野 一樹, 髻谷 満, 山根 主信, 角田 健, 大松 峻也, 川原 一馬, 千住 秀明
セッションID: P-RS-1-5
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】
我が国における在宅酸素療法(以下,HOT)は,労作時のみ低酸素を呈する患者に対しても広く利用されている.しかし,これらの患者に対する長期酸素療法は,生存率やQOLなどに有意な改善は認めなかったと報告されている.今回,労作時のみ低酸素を呈する慢性閉塞性肺疾患(以下,COPD)患者に対しHOTを導入し,退院後も継続的に呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)を行ったことで,QOLの改善を認めた症例を経験した.本症例に対する取り組みについて,若干の考察をふまえ報告する.
【方法または症例】
70歳台,男性.職業は会社顧問.X年にCOPDと診断され,X+5年頃より労作時の呼吸苦が生じ,X+7年にHOT導入目的で当院へ入院となる.主訴は労作時の息切れ,mMRCはgrade2,GOLDの病期分類はIV期であった.血液ガス分析はpH:7.43,PaO2:70.6mmHg,PaCO2:48.1mmHgであり,準呼吸不全を呈していた.
【結果】
2週間のHOT教育を含む呼吸リハを経て,労作時のみ酸素の吸入(2.0L/min)が処方され,自宅退院となった.退院後,初回の外来受診時において,酸素チューブの操作の煩雑さを理由に,自宅内では酸素濃縮装置を使用していないことが判明した.携帯型酸素濃縮装置へデバイスを変更し,操作方法を教育した.その後はアドヒアランスが向上し,正しく酸素デバイスを使用するようになった.また,仕事も今まで通り継続することができた.その結果,導入3ヶ月後にはSGQRのtotal scoreは63.0→51.5,SF-36における身体的健康度は18.4→46.5,精神的健康度は55.6→56,CATは29→15点へと改善を認めた.
【考察および結果】
退院後も呼吸リハを継続して行ったことで,入院中には明らかにできなかった問題を発見でき,迅速な対応が可能であった.その結果,QOLや健康状態の改善を認めた.以上より,労作時のみ低酸素を呈する患者においても,継続的に介入することで,QOLや健康状態の改善などHOTの効果は十分に得られると考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
学会発表を行うにあたり,ヘルシンキ宣言に基づき個人が特定できないように匿名形式で発表することを本人へ口頭で説明し同意を得た.
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田畑 有加里, 嶋崎 勇介, 堀 竜次, 竹田 倫世
セッションID: P-RS-1-6
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景および目的】気道形態の動的変化が過大になる病態として、中枢気道の動的気道虚脱(EDAC)が知られている。今回、動作時の呼吸困難感の強いEDACを合併したCOPD一症例に対して、CPAPを併用した運動療法により改善を認めたため報告する。
【症例】76歳の男性でBMIは16.4であり、肺機能検査はVC2.8L(86.4%)、FEV10.66L(26.5%)、GOLD分類Ⅲ期(%FEV130.5%)であった。胸部X線検査は横隔膜の平低化を認め、動脈血ガス分析(ABG)はraでPaO299.7mmHg 、PaCO240.1mmHg、心エコー検査では異常を認めなかった。日常生活動作において修正(m)Borgスケール4から5の息切れがあった。身体所見は頸静脈怒張があり、末梢冷感が非常に強かった。性格は神経質であり抑うつ的な発言が多く臥床傾向にあった。6分間歩行試験は距離が185m、最高mBorgスケールは7、急激な喘鳴と共に呼吸困難感が出現していた。手指~前腕の末梢冷感が強く測定は不安定であったが、SpO2の最低値は94%であった。運動療法では自転車エルゴメータを10W3分間から開始し3セットを実施したが、それ以上の運動継続は呼吸困難感が強く難しかった。主治医と相談しNPPV(PHILIPS製V60)を装着し運動療法を実施した。設定はCPAPモード4cmH2Oとし、自転車エルゴメータ10W1分20W1分10W1分の3分間5セットの計15分間を5日間継続して実施した。
【結果】肺機能検査やABGに改善は見られなかったが、6MDは300mと115mの延長、最高mBorgスケールは3に軽減し、冷感は手指のみとなった。COPD assessment testは25点から17点へ改善し、自主的に歩行練習をされるなど前向きな気持ちの変化がみられた。
【考察】CPAPを併用し運動することで、EDACが軽減し気道抵抗と呼吸補助筋の仕事量の軽減、それによる動作時の過剰な換気亢進を伴わない運動経験ができたと考える。結果、急激な呼吸困難感の出現を抑え動作が安楽にできる経験を積んだことで動くことへ自信がつきQoLが改善したと考える。
【倫理的配慮,説明と同意】発表に際し症例へは十分に説明を行い書面にて同意を得た。また星ヶ丘医療センター倫理委員会の承認を得た(承認番号1805)。
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八木田 裕治, 坪井 永保, 杉野 圭史
セッションID: P-RS-1-13
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【緒言】
今回,高度のII型呼吸不全を合併した嚢胞性肺気腫患者に対し,酸素流量の検討や非侵襲性陽圧換気療法 (以下NPPV)の指導を行い,自宅退院が可能となった症例を経験したので報告する.
【症例】
症例は64歳,男性.201X年にCOPD(重症度4度),嚢胞性肺気腫と診断.
【臨床経過】
201X年8月に右II度の自然気胸のために前医で胸腔ドレーンを挿入し治療されるも,エアリークが遷延したため当院に紹介入院.201X年9月にミノサイクリン300 mg,OK-432 5単位による胸膜癒着術をそれぞれ1回ずつ施行したところ改善を認めた.その後,呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)を継続し,病棟内でのADLは自立レベルとなったが,201X+1年1月に療養病院へ転院.転院後に肺炎を併発し状態が悪化したため,再度当院に紹介となったが,その頃より高度のII型呼吸不全とmMRC 5の強い呼吸困難を来すようになり,NPPV療法を導入.使用時間を徐々に延長しながら1日4-5時間使用できる日も増加したが,患者の呼吸困難感は非常に強く,NPPVの使用が困難な日もみられた.自力でのNPPV装着が可能となった時点で一時退院となったが,退院2週間後にCO2ナルコーシスによる意識障害が出現し再入院.患者本人,配偶者の意向によりNPPVは使用することなく,II型呼吸不全のために死亡となった.
【結語】
今回,高度のII型呼吸不全を合併した嚢胞性肺気腫患者に対し,呼吸リハならびに在宅NPPV療法の導入を行い,一時的な在宅療養を実現した.患者の強い呼吸困難感に耳を傾けながらも,COPDに対する薬物療法に加えて呼吸リハおよびNPPV療法を導入する包括的サポートが大変有効であった.さらに患者本人が希望した自宅退院を目標にして,常に現状をフィードバックし治療の必要性,意義を教育することも欠くことができないと考えられる.
【倫理的配慮,説明と同意】
発表に基づき、当院の倫理委員会に提出し、同意を得た.
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松崎 文香, 齊藤 哲也
セッションID: P-RS-1-14
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景・目的】
慢性呼吸器疾患患者には,全身併存症の1つとして骨格筋の筋力低下や易疲労性,筋萎縮を認める.これらは運動耐容能や身体活動性の低下をもたらし,生命予後にも関係することが報告されている.今回,長期経過を評価できた慢性呼吸器疾患患者において,筋力改善に関わる因子を明らかにすることを目的として検討を行った.
【方法または症例】
慢性閉塞性肺疾患または間質性肺炎と診断され,昭和大学藤が丘リハビリテーション病院で外来呼吸リハを行った13例を対象とした.3ヵ月毎に体重支持指数(Weight Bearing Index:WBI)を評価し,リハ介入前の二重エネルギーX線吸収測定法(以下,DEXA)による体組成検査,血液検査,心機能検査,呼吸機能検査から筋力改善に関わる因子を検討した.
【結果】
リハ介入前と介入後3ヵ月のWBI(kgf/kg)に有意差が認められた[平均値(SD):介入前53.15(22.72)vs 3ヵ月63.31(32.18)].また,WBI改善群と非改善群の2群間比較では,リハ介入前の血清たんぱく質(g/dl)が低値だった症例に筋力の改善を認めた[平均値(SD):改善群6.56(0.55)vs 非改善群7.21(0.33)].
【考察および結論】
WBI改善群では,リハ介入前の時点で低栄養である症例が多かった.呼吸リハビリテーションに関するステートメントでは,栄養障害は呼吸筋力,運動耐容能,QOLなどとも密接に関連しているとされている.また,栄養関連学会のガイドラインでは,栄養療法単独での効果は限定的であり,運動療法との併用を奨励している.慢性呼吸器疾患患者の筋力改善においては,栄養指導を含めた包括的介入が必要であることを再確認できた.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は昭和大学藤が丘リハビリテーション病院の臨床試験審査委員会にて承認を得た.診療録から研究対象者の資料・情報を取得する際,オプトアウト等により研究対象者等に資料・情報の利用目的を含む当該研究についての情報を,研究内容説明書にて通知・公開し,研究対象者の資料・情報が利用されることを研究対象者等が拒否できる機会を保障した.研究対象者からの使用の中止の申し出があった場合には,当該情報は使用しない.
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梅原 靖孝, 古村 恭奨, 平間 礼菜, 川村 茜, 板垣 昌史, 佐々木 真衣, 川尻 隆晴, 河野 伸吾, 山本 祐司
セッションID: P-RS-1-15
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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【背景および目的】
当院は慢性期病院で、様々な疾患の患者が入院されている。このような方を対象とした肺炎発症に関わる因子の報告は少ない。今回、当院における肺炎発症因子を抽出し、今後の取り組みを考察する。
【方法】
2016年1月~2016年12月の期間に、入院中および入院された患者とし、診療記録から肺炎の記載がある患者40名を肺炎あり群、肺炎記載がない患者のうち乱数表を用いて選ばれた患者40名を肺炎なし群として、2群に分類した。
①調査項目は年齢、性別、BMI、FIM、栄養状態、呼吸器疾患・循環器疾患既往の有無、気切の有無、離床の有無、嚥下障害の有無、呼吸訓練の有無、食事摂取方法、サクション回数、酸素吸入量、リハビリ回数としχ2検定、Mann-WhitneyのU検定を用い2群間の差をみた。
②①で有意差がみられた項目をロジスティック回帰分析し、肺炎発症の関連因子を抽出した。
③②で採択された項目のうち量的変数をROC解析しカットオフ値を算出した。
【結果】
①年齢、性別、BMI、栄養状態、呼吸器疾患・循環器疾患既往の有無、嚥下障害の有無、離床の有無、サクション回数に有意差がみられた。
②肺炎発症の関連因子として年齢、性別、BMI、呼吸器疾患・循環器疾患既往の有無、離床の有無、サクション回数が抽出された。
③年齢70歳以上、サクション回数1回/日以上、BMIは17.02 kg/m2以下となった。
【考察および結論】
結果より、年齢は加齢に伴う免疫力低下、BMIは低栄養、離床の有無は筋力低下に伴う喀痰・咳嗽力低下、呼吸器疾患・循環器疾患既往の有無は感染性増加や心肺への負荷量増加、サクション回数は咳反射減弱などが肺炎の要因となり、今回、肺炎発症の関連因子として抽出されたと考える。性別はエストロゲンの違いと考えるが更なる検討が必要である。
今後は得られたデータの院内周知や評価表作成、実際の生活場面で我々が病棟ラウンドを実施するなど肺炎予防を意識した対応をしていきたいと考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
倫理的配慮、説明と同意は、当院の研究倫理に則り、当院教育学術委員会に研究内容を提出し、個人情報の配慮等を審査後、研究を実施した。
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鈴木 亮馬, 河島 徹, 満冨 一彦
セッションID: P-RS-1-16
発行日: 2019年
公開日: 2019/08/20
会議録・要旨集
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「背景」
今回,頻回に入退院を繰り返す気管支拡張症患者を計3年半にわたり担当した。最終的には緩和的な介入を行いつつも,積極的な排痰介助により,全身機能の維持が図れ,QOLの維持が図れたため報告する。
「症例」
60歳代女性。X日より感染増悪などにより入退院を繰り返すようになった。X日の評価では,身長:158cm,体重:35.6kg,BMI:14.6,修正MRC:Grade2,BSI(Bronchictasis Severity Index):13点(重症),%VC:52.6%,FEV1.0%:102%,6分間歩行距離:240m(4分で終了)であった。
「結果」
当初は,自己排痰可能であり,全身筋力や耐久性の維持のため,運動療法を中心に実施し,在宅での自主練習を指導した。X+154日頃より,呼吸困難感増悪による運動機能の低下をきたし,排痰不良が顕著となった。そのため,排痰介助などの介入を追加し,本人や家族に対して排痰方法の指導を実施した。また,1日複数回の介入も実施し始めた。入退院を頻回に繰り返したが,本人や家族の自宅退院への強い希望に対して退院支援をそのたびに実施した。X+561日に在宅酸素療法を導入,X+811日にオキシマイザーを導入となった。人工呼吸器は希望されなかった。そして,家族の介護負担の限界に伴い,X+969日に療養型病院へ転院となり,X+1019日に転院先の病院にて永眠された。
「考察」
気管支拡張症は,繰り返す感染増悪のため咳嗽や喀痰が増加し,細菌定着と気道破壊の悪循環を生じるが,排痰介助などが効果的であり,全身機能が維持されたと考えられる。最近の研究では,1日2回の排痰手技を自宅指導した結果,運動機能の変化はないものの,QOLが維持されたと報告され,本研究でも入院中ではあるが,同様にQOLの維持が図れたと思われる。本症例は,孫と過ごす時間の延長を希望されていた。入院は,長期間に及んだが,Needは達成されたと思われる。一方で,入退院の回数が増加する中,本人の症状悪化に対する精神的ケアなどに難渋した。
「倫理的配慮,説明と同意」
本報告は,ヘルシンキ宣言に基づき,個人が特定されないように匿名化し,個人情報保護の扱いには十分に留意した。今回の発表に対し,家族に口頭にて説明し同意を得た。
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