理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-3-4
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ポスター演題
回復期リハビリテーション病棟運動器疾患患者における骨格筋指数変化量に関連する要因の検討
石本 泰星谷口 裕亮赤澤 直紀兵谷 源八
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抄録

【目的】

四肢骨格筋量の減少に加え,身体機能または筋力の低下を示す状態はサルコペニアと診断され,サルコペニアは,転倒・骨折の危険性の増大,日常生活の活動能力(ADL)の低下,および死亡率の増大と関連する事が報告されている(CruzJentoft et al., 2010)。また回復期リハビリテーション病棟運動器疾患患者におけるサルコペニア罹患率は51.3%であったとの報告がなされている(Yoshimura et al., 2017)。これらより,運動器疾患患者のADLの向上を図る上で,骨格筋量指数(SMI)を向上させる策を講ずる事は重要である。近年,運動と栄養の介入がSMIを改善させる事は明らかとなっているものの,回復期リハビリテーション病棟に入院された運動器疾患患者において,SMI変化量に関連する要因を検討した先行研究は見当たらない。したがって,本研究の目的は回復期リハビリテーション病棟運動器疾患患者におけるSMI変化量に関連する要因を検討する事とした。

【方法】

対象は2016年4月~2017年4月の期間に回復期リハビリテーション病棟に入棟された運動器疾患患者のうち入棟時にSMIの測定が可能であった44名とした。対象患者には1日3~9単位のリハビリテーションが提供された。SMIはBioelectrical impedance analysis法により測定した四肢筋肉量を身長(m)の2乗で除す事で算出した。そして,退院時SMIから入棟時SMIを差分する事でSMI変化量を算出した。統計解析はステップワイズ法による重回帰分析を行った。従属変数はSMI変化量,独立変数は入棟時年齢・在院日数・提供単位数と血清アルブミン値・総タンパク値・Body Mass Index・SMI・摂取カロリー・摂食率のうち,SMI変化量との相関行列表を作成し,p値が0.2未満であった入棟時SMI・摂取カロリー・摂食率と設定した。独立変数間における多重共線性の影響については,相関行列表を作成し検討した。その結果,摂取カロリーと摂食率はPearsonの相関係数が0.8を超える高いものであった。したがって,それら2つの変数は同一の解析モデルには投入せず,摂取カロリー投入モデルと摂食率投入モデルの2つの解析モデルを作成した。統計解析ソフトはR2.8.1を使用し,有意水準は5%未満とした。

【結果】

重回帰分析の結果,2つのモデルの分散分析表の有意確率はすべてp<0.05であった。また,それぞれのモデルの適応度は,摂取カロリー投入モデル;R=0.298,R2=0.088,調整済みR2=0.067,摂食率投入モデル;R=0.442,R2=0.195,調整済みR2=0.176であった。また各モデルにおいて摂取カロリー(p=0.049,β=0.298),摂食率(p<0.01,β=0.442)が有意に推定に寄与した。

【結論】

本研究の結果より,回復期リハビリテーション病棟運動器疾患患者のSMIの増加には,摂取カロリー・摂食率が高値である事が関連していた。近年,リハビリテーション栄養の概念が注目されており,本研究においてもそれらを支持する結果となった事は意義深いものであると考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言に基づき,個人情報の取り扱いに遵守して実施した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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