理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-12-4
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ポスター演題
食道狭窄拡張術後に頸部拘縮が残存した患者に対して理学療法による姿勢・嚥下が改善した1例
西川 正一郎平 勝秀
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キーワード: 摂食嚥下, 頭頸部, 姿勢
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抄録

【はじめに、目的】

 頭頸部の角度により嚥下に関与する咽頭喉頭の機能は影響を受け、食道入口部に関しても頭頸部の角度は重要な嚥下の姿勢となっている。今回、食道狭窄拡張術後に頭頸部の前方突出位を呈した症例に対して、理学療法を行うことで日常生活の姿勢、摂食嚥下の改善に至ったので、ここに報告する。

 

【方法】

 本例は74歳男性、半年前より食後に嘔吐を繰り返しており当院受診。食道胃接合部通過障害、アカラシア疑いの診断にてX年X月精査目的で入院。5病日後に食道バルーン12-15mm使用して15mmまで拡張。翌日より3分粥開始、全量摂取可能となる。12病日後に再拡張にて18-20mmの拡張バルーンを使用し20mmまで拡張を施行した。その後5分粥にて全量摂取できるものの頸部の疼痛出現し、整形外科へコンサルテーションにて理学療法処方となる。レントゲン所見では頸椎がストレートネックを呈しており、問診では嘔吐を繰り返していた時期より頭頸部が前方突出位になっていた。13病日後に評価開始。主訴は胸鎖乳突筋の疼痛。安静時においても頸部屈曲位を呈して枕を高くして頸部は屈曲位であり、触診にて僧帽筋上部繊維、後頭下筋群の緊張が著明であった。日整会の関節可動域測定法にて頸部可動域(以下ROM)は伸展-20度 屈曲55度、左回旋10度、右回旋10度、左側屈10度、右側屈10度であった。車椅子座位計測基準ISO16840-1による眼縁と耳珠点を結ぶ線を移動軸とした角度は伸展方向へ5度、屈曲方向へ5度の可動域であった。嚥下評価の反復唾液嚥下テスト(Repetitive Saliva Swallowing Test:以下RSST)は3回であった。理学療法治療は頭頸部における関節において、頭部が伸展位拘縮、頸部は下部頸椎の屈曲拘縮を呈した前方突出位であったため、頭部伸展位の機能障害として後頭下筋群のうち主に小後頭直筋の短縮に対してストレッチを施行することで、胸鎖乳突筋の弛緩も見られた。頸部に関しては、安静臥位における過緊張を考慮して臥位にて伸展を促しながら自動運動を行い頸椎のC3~7における単関節運動をモビライゼーションした。

 

【結果】

 理学療法の介入5日目で、頸部周囲・胸鎖乳突筋の疼痛は消失。関節可動域はISO16840-1による眼縁と耳珠点を結ぶ線で屈曲20度、ROMは伸展15度、左回旋70度、右回旋70度、左側屈30度、右側屈20度であった。RSSTは4回であったが、飲み込みの主観は「飲み込み易くなった」と発言もあった。

 

【結論】

 本例は半年前からの食道入口部障害により頭部突出位を日常の習慣性で姿勢変化を来したと考えられ、理学療法士の視点でアプローチを展開できた。藤島らは嚥下障害に対して頸部可動域訓練を推奨しており、我々理学療法士による解剖学、運動学的視点の介入は有効であり、急性期医療においても更なる研究が必要である。

 

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究において、個人情報は特定されないよう配慮したデータの取り扱いに注意することを患者に十分説明し、発表の主旨を了解され同意を得た。

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© 2019 日本理学療法士協会
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