理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-19-5
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ポスター演題
地域要介護・要支援高齢者におけるフットケアの現状
菅野 沙紀宮田 裕希山崎 遥人小林 豊
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抄録

【はじめに】

65歳以上の高齢者の約70%が爪や足部変形、皮膚のトラブルなどの足病変を抱えていると指摘されている。こうした足病変は転倒予防や糖尿病・末梢循環障害による非外傷性切断のリスク軽減の観点から、医師や看護師による医療的な処置に加えて、理学療法士による靴の選定やインソール作成、歩容改善などの予防的なフットケアが欠かせないと指摘されている。また、直接的な介入だけでなく、医師・看護師への適切な情報提供などによる連携も求められている。特に地域在住の要介護・要支援高齢者では医療と介護の連携が不可欠であり、そのためには現状と課題の把握が非常に重要である。しかし、地域要介護・支援高齢者を対象にした調査は少なく、地域要介護・支援高齢者の足病変の実態が明確になっているとは言い難い。そこで本研究では地域要介護支援高齢者を対象に足病変及びフットケアの状況を調査した。

 

【方法】

 対象者は平成29年12月1日時点で当院の訪問リハビリテーションを利用していた65歳以上の介護保険の要介護・支援認定者51名、年齢82.3±8.03歳、女性35名、男性16名である。調査は訪問担当療法士による足部の観察・測定と本人及び家族へ聴取にて実施した。調査項目はフットケアに関する項目(爪切りの頻度と実施者、保湿剤の塗布の頻度と実施者、医師・看護師によるフットケアの実施率)、足病変に関する項目(爪肥厚、巻き爪、乾燥、胼胝、外反母趾の有無)、糖尿病の有無、転倒歴とした。足病変の有無と爪切り・フットケアに関する項目の関連について検討した。

 

【結果】

 爪が肥厚している群において爪を切る頻度が優位に少なかった。肥厚している群における訪問看護のフットケア実施率は13.8%であった。その他の項目との関連は認められなかった。

 

【結論】

 爪が肥厚している群では他の群で比較して、爪切りの頻度が少なく、ケアが不十分であることが示唆された。さらに同群においての医師・看護師によるフットケア実施率は13.8%と低いものであったことから、医療的処置を必要とする病的な爪に対しての介入が不十分であることが伺える。以上のことを踏まえ、足病変のリスクの高い地域要介護・支援高齢者と関わる機会の多い理学療法士の役割として、足病変のリスク評価に基づいた情報の提供に加え、適切な医療機関の紹介や受診の促しなど、医療サービス介入への起点となる必要があるのではないだろうか。

 

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言に沿っており、公益財団法人河野臨床医学研究倫理審査委員会の承認を得て行った。説明と同意に関しては居宅サービスの契約の際に重要事項説明書にて対象者の包括的同意が得られているものを調査対象とした。また、本研究に用いたデータベースは連結可能匿名化を行った後、暗証番号を設定して研究関係者のみが閲覧可能な状態で施錠の可能な管理場所に保管した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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