理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-23-5
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ポスター演題
高次能機能障害による社会適応障害の問題行動予防
-在宅生活継続の為のチームアプローチ-
東 毅
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抄録

【はじめに、目的】

高次脳機能障害(左半側空間無視、遂行機能障害、注意障害、感情コントロール低下)により、社会適応障害としての問題行動を呈したことで、介護負担が増大し、通所型サービスの利用継続が困難となってきた利用者がいる。問題行動に対して原因追求と対応方法の検討の為に応用行動分析学を活用し、高次能機能障害の影響による社会適応障害としての問題行動を予防する為に介入した事例について、報告する。

【方法】

脳梗塞後遺症により、左片麻痺を呈した76歳男性。<Brunnstrom stage>上肢Ⅲ・手指Ⅱ・下肢Ⅳ<感覚>表在・深部中等度鈍麻<ROM>左肩関節屈曲70°外転60°、肘関節伸展−60°、左股関節−10°、膝関節−15°左足関節背屈-5°<MMT>上肢4、下肢4、体幹3<高次脳機能障害>左半側空間無視、遂行機能障害、注意障害、感情コントロール低下、特に社会適応障害として他者への暴言・暴力・威嚇行為がみられる。今回、利用者の社会適応障害に対して、感情反応の制御の為に、応用行動分析学にて問題点を評価し、落ち着いて座れている穏やかな時間の増加と他者に危害を加えない為のルールの定着を目指した。介入として座位安定の為のシーティング介入を実施し、社会的ルールの定着とシーティングの効果を持続する為に、施設内のルールと職員対応の統一だけではなく、他事業所やご家族とも連携を取ることで情報を共有し、対応を統一した。

【結果】

シーティング評価により、車いすの寸法・クッション・体幹サポートの選定により安定座位が確保されることで高次脳機能障害の方の適切な認知的反応を引き出すことができた。また、社会的ルールの定着とシーティングの効果の持続の為に、施設内のルールと職員対応の統一だけではなく、他事業所やご家族とも連携を取ることで情報を共有し、対応を統一した。その効果として、穏やかに過ごせる時間が増加した結果、社会適応障害としての不適切な行動を予防することで、介護負担感が軽減した。

【結論】

高次能機能障害を呈していても、環境と介入を適切に行なう為に先行刺激・行動・後続刺激を整備することによって、適切な行動を形成し強化することで社会適応障害としての問題行動の出現を予防することができる。シーティングによる座位の安定と、ご家族を含めた他事業所・多職種と連携し、対応を統一することが適切な行動を形成することに対して効果があり、在宅生活を継続していくために日常のベースとなる座位の安定と対応の統一は重要であると考える。その結果、穏やかに過ごせる時間が増加し、また、他者トラブル等の社会適応障害としての不適切な行動が減少し、介護負担の軽減も見られたことで、社会参加の機会である通所型サービスの継続ができた。

【倫理的配慮,説明と同意】

ヘルシンキ宣言に則り、対象者およびご家族へ高次能機能障害の影響による社会適応障害としての問題行動を予防する為に介入することを計画時に説明し、事例報告の目的、方法および発表する旨について説明し同意を得た。

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© 2019 日本理学療法士協会
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