理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-2-3
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口述演題
臨床理学療法士の安全衛生委員会における改善活動報告
岩倉 浩司
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抄録

【はじめに、目的】平成28〜29年度、A市の安全衛生管理者として、臨床の傍ら安全衛生委員会の活動に従事した。A市は職員数約900人を有し、事務職員、看護師・理学療法士等の医療職、保育士、現業職員等多様な職種を有する職場である。安全衛生委員会とは、労働者の危険又は健康障害を 防止するための基本となるべき対策(労働災害の原因及び再発防止対策等) などの重要事項について十分な調査審議を行う委員会であり、総括安全衛生管理者、衛生管理者、委員で構成されている。安全衛生委員会で審議した内容として、脚立からの転倒(脳挫傷)、看護師の急性腰痛症、メンタルヘルスによる休職、転倒骨折等が挙げられた。この中で、事務職員へのVisual Display Terminals(以下、VDT)作業と看護師・介護士の腰痛の両調査と課題に対する改善活動を行った。今回、臨床の理学療法士が、安全衛生委員会において取組んだ改善活動の一部を報告する。

【方法】事務職員677名に対してVDT作業について、病棟看護師・介護士21名に対して腰痛について、それぞれアンケート調査を実施した。両アンケートの課題に対して、安全衛生委員会にて協議し実現可能で即効性のある改善を行った。

【結果】VDT調査については、有効回答は395名(回収率58.4%)だった。一日あたりのVDT作業時間で4時間以上は、345名であった。肩・頸の痛みは72.0%、腰の痛み45.0%、頭が痛い38.0%、昼休み以外の休憩は55.0%がしていないとの回答であった。対策としては、VDTタイマーの導入(作業管理)とストレッチ(健康管理)の励行、VDT作業のパンフレットの配布(教育)、5S活動(作業環境管理)を行った。導入後、「いつも長時間座り続けて仕事をしているが、タイマーが気づかせてくれた。」「朝、運動してからすると調子がよい。」との意見が寄せられた。看護師・介護士の腰痛については、21名(回収率100%)であった。腰に辛い作業として、特殊浴場のベッド〜ストレッチャーへの移動介助(71.0%)が挙げられた。対策として、ベッド〜ストレッチャーの移動を、段差解消ボードとスライディングシートを利用した移動方法への介助方法(作業管理)の改善を実施。改善後は、「介助作業がすごく楽になった。」「腰が楽になったし、人が少なくてよくなった。」との声が寄せられた。

【結論】安全衛生委員会での審議の結果、VDT作業に関しては、長時間の連続作業による静的姿勢が原因となる筋骨格系の痛みが問題であったと判断し、VDTタイマー導入、ストレッチの実施等を中心とした対策を行った。看護師・介護士に関しては、持ち上げ介助による負担の軽減を計るため段差解消ボード、スライディングシート等の福祉用具を使用した介助作業への改善活動を行った。双方ともに勤労者に有益な改善活動が行えた。

【倫理的配慮,説明と同意】A市安全衛生委員会の審査後に実施した。 質問紙調査の実施にむけて、調査への協力は自由意思によるものとし、調査研究に対して研究目的や方法、結果の処理について依頼文書(資料)を用いて説明した。質問紙調査への協力については調査用紙に記入、返信していただくことで了承を得た。調査は無記名とし、個人や施設が特定されないよう配慮し、調査への協力の有無による不利益を被ることがないこと、調査結果は研究の目的以外には使用しないこと、データの管理は記号化、数値化などの方法をとることにより個人が特定されないよう十分に配慮する旨、文書で説明した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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