理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-2-6
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口述演題
腰痛予防の取り組み 第2報
-廃棄物関連施設の職員に対する個別相談-
磯 あすか大田 幸作田舎中 真由美津田 泰士
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抄録

【はじめに】当施設では、平成25年度より地域自治体の廃棄物関連施設職員に対する腰痛予防の取り組みを継続している。集団体操を中心とした講習会では個々の身体機能に合わせた対応が難しいことから、平成26年度からは希望者を対象とした個別相談も行っており、その内容を報告するとともに課題について述べる。

 

【方法】平成26年度と27年度に、のべ19名に対して一人あたり15分~20分の個別相談を行った。内容はヒアリング(発症原因、診断名、治療歴、痛みの程度(Visual Analog Scale : VAS))、基本動作と関節可動域の評価を行い、その結果から腰痛予防のためのアドバイスと運動指導を行った。個別相談から3か月後または3か月後と6か月後にフォローアップのアンケートに回答してもらい、アンケート結果を踏まえてアドバイスを文章で伝えた。アンケートの内容は、腰痛予防講習会で行った体操を継続しているか、体調の変化、医療機関を受診したか、現在困っていることはあるか、痛みの強さはどの程度か(VAS)などであった。

 

【結果】対象は全員男性であり、平均年齢は47.3±5.6歳、仕事内容はデスクワーク、収集車の運転と収集作業、クレーン操作、焼却炉の整備、施設管理など様々であった。ヒアリングの結果、作業中の発症は47.4%であり、52.6%は作業中ではなく以前からの痛みが持続していた。診断名が明確なのは21.1%で、78.9%が診断名は不明あるいはあいまいな回答であった。治療歴は5.2%(1名)を除いて医療機関や治療院を受診しており、コルセットや湿布薬・内服薬の使用、鍼灸院の利用をしていたが、理学療法を受けているという回答はなかった。痛みの程度は、最大時は平均4.9±2.8、通常は1.7±1.7であったが、基本動作などの評価中に痛みが再現されたのは5.2%(1名)のみであった。ヒアリングと基本動作などの評価結果から予想された機能障害は、骨盤や胸郭のアライメント不良、股関節可動域制限、体幹および股関節の深層筋の弱化、仙腸関節安定性の低下など様々だった。3か月後のアンケートではVASは1.9±1.6、89.5%が講習会で行った体操を継続しており、そのうちの52.9%が体調は改善、36.8%が不変、5.9%が悪化という回答で、体操を継続しなかった10.5%の体調は全て不変であった。6か月後のアンケートは平成26年度のみ行っておりVASは1.7±1.9、90.9%が体操を継続していた。そのうち50%は体調が改善、50%は不変で悪化はなかった。体操を継続しなかった9.1%は体調は不変であった。

 

【結論】対象者の腰痛の部位や原因、機能障害はそれぞれで異なり、アドバイスおよび運動指導も個々に合わせた内容が望ましいと考えられた。3か月後、6か月後に体調が改善または不変であった職員が多かったことは本対策の一定の成果と考える。しかし、悪化した職員もおり、機能障害の評価・指導方法と効果判定の方法についてもさらに検討が必要である。

 

【倫理的配慮,説明と同意】結果の集計には個人が特定できないよう配慮し、学会発表の目的や方法について自治体担当職員に説明し同意を得た

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