理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-9-4
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口述演題
心不全患者におけるBMI低値の予後に対する影響
-3年間の追跡調査を通して-
佐藤 憲明椛島 寛子星木 宏之有吉 雄司津崎 裕司小笠原 聡美
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キーワード: 心不全, BMI低値, 予後
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抄録

【はじめに、目的】心不全になると異化亢進、食欲不振、消化管浮腫、炎症性サイトカインなどにより栄養不良の状態になり体重減少しやすいことは知られている。近年、心不全患者はBody Mass Index(BMI)高値の方がBMI低値よりも予後が良好であるとの報告が散見されており、本邦でもJCARE-CARD研究やKomukaiらが同様の報告をしている。しかしながらBMI低値は年齢に関わらず予後不良因子であるかは明らかになっていない。そこで本研究では心不全患者の予後をBMIと年齢で区分して検討することを目的とした。

【方法】対象は2009年1月〜2011年12月までに当院に入院した心不全患者243例とし、75歳以上群141例(平均年齢82歳 男性62例 女性79例)と75歳未満群102例(平均年齢64歳 男性72例 女性30例)に分類した。除外基準は入院中の死亡、退院時BMI不明とした。BMI低値の基準として、サルコペニア(下方ら、2012)や低栄養の診断定義(欧州臨床栄養代謝学会)で提唱されている18.5kg/m2未満を採用し、BMI25以上、18.5以上25未満、18.5未満の3群に分類した。primary endpointは全死亡または心不全による再入院(以下、event)とし、Kaplan-Meier法によりBMI毎のevent回避率を求め、generalized Wilcoxon testにより有意差を求めた。追跡期間は3年間とした。さらにCox比例ハザードモデルを用いて予後との関連因子を検討するとともに、調整ハザード比と95%信頼区間を算出した。説明変数は退院時BMIの他に、年齢、性別、高血圧有無、心房細動有無、糖尿病有無、虚血性疾患有無、LVEF、eGFR、心臓リハビリテーション有無とした。統計解析はSPSS ver21を用い、有意水準は5%とした。

【結果】75歳以上群では、BMI18.5未満が有意に予後不良であった(p<0.05)。一方75歳未満群ではBMI3群間で有意差を認めなかった。Cox比例ハザードモデルによるevent発生の有意な関連因子として、75歳以上群では年齢(HR1.070 95%信頼区間1.020-1.122)、eGFR(HR0.971 95%信頼区間0.957-0.985)、BMI(HR0.924 95%信頼区間0.854-0.999)が抽出され、75歳未満群では、eGFR(HR0.981 95%信頼区間0.966-0.997)、心房細動(HR0.482 95%信頼区間0.248-0.938)が抽出された。

【結論】BMI低値は75歳未満の心不全患者には予後に対して影響は少ないが、75歳以上の心不全患者にとっては独立した予後不良因子となることが示唆された。一般的に心不全患者に対して医療従事者は、浮腫による体重増加には敏感に反応するが、体重減少にはあまり危機感を抱いていない傾向がある。特に後期高齢心不全患者には体重増加と同程度に体重減少にも注意していくことがevent発生の予防において重要である。

【倫理的配慮,説明と同意】全ての患者に研究の説明をしてデータを使用することの同意を得た。また個人情報が特定されないようにデータ管理には十分配慮した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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