理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-14-3
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口述演題
地域高齢者における睡眠状況と社会的フレイルの関連性の検討
中窪 翔土井 剛彦牧迫 飛雄馬堤本 広大牧野 圭太郎島田 裕之
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抄録

【はじめに、目的】

 高齢期において重要とされるフレイルのなかでも、社会的な側面に着目した社会的フレイルは、身体機能低下や障害発生に影響を与えることが報告されており、予防すべきものの一つであると考えられる。一方で、高齢期の機能維持において重要な睡眠状況との関連性については、十分に検討がなされていないのが現状である。本研究は、地域在住高齢者を対象として睡眠時間および過度の日中の眠気(excessive daytime sleepiness: EDS)と社会的フレイルの関連性を横断的に検討することを目的した。

【方法】

 高齢者機能健診National Center for Geriatrics and Gerontology - Study of Geriatric Syndromesに参加した65歳以上の地域在住高齢者5,104名のうち、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病の既往のある者、及びMini-Mental State Examinationが20点未満の者、欠損値がある者を除外した4,482名 (女性2,312名,男性2,170名,平均年齢72.0±5.5歳) を本研究の分析対象とした。睡眠状態の評価として、聴取した就寝時間と起床時間より睡眠時間を算出し、6時間以下、6~9時間、9時間以上の3群に群分けした。また、EDSは「日中、昼寝が必要なくらい眠くなることがありますか?」という質問に対して4件法で聴取し、「ほとんどいつも」と回答した者をEDSありとした。社会的フレイルは、独居である(はい)、去年に比べて外出頻度が減少した(はい)、友達の家を訪ねることがある(いいえ)、友達や家族の役に立っていると思う(いいえ)、毎日誰かと会話している(いいえ)の5項目のうち2項目以上該当した者をフレイルと判定した。睡眠時間およびEDSを独立変数、社会的フレイルを従属変数とした多重ロジスティック回帰分析(年齢、性別、教育歴、服薬数、BMI、うつ症状、歩行速度、MMSE、一日の平均歩行時間、喫煙歴、飲酒歴、慢性疾患で調整)を実施した。有意水準は5%未満とした。

【結果】睡眠時間が6時間以下の者は462名(10.3%)、9時間以上の者は770名(17.2%)であり、EDSを有する者は636名(14.2%)であった。また、社会的フレイルの有症率は495名(11.0%)であった。ロジスティック回帰分析の結果、睡眠時間が9時間以上(OR=1.46,95%CI: 1.14-1.87)およびEDSを有すること(OR=1.32,95%CI: 1.02-1.71)が有意な関連性を示した。

【結論】

 睡眠時間が長いことおよび過度の日中の眠気を有することが社会的フレイルと関連していることが明らかとなった。社会的フレイルを中心としたさらなる機能低下を予防するための理学療法的介入を講じる上で、睡眠状況の把握、改善の重要性を示す一助となると考えられる。今後は因果関係を示すために縦断的な検討が必要である。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、著者所属機関の倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い、対象者には本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明を行い、書面にて同意を得た上で本研究を実施した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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