理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PE-5
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ポスター発表
職場内教育の充実に向けた取り組み,症例検討会に対する年代別意識調査
近藤 友加里福原 隆志吉田 香澄豊島 和之田安 義昌小貫 渉
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抄録

【はじめに】

理学療法士(以下,PT)の増加に伴い,臨床教育の充実は「質の担保」のためにも重要な課題である。当院では36 名のPT が在籍しており半数以上が経験年数10 年目未満であるため,職場内教育の充実に向けて様々な取り組みを行っている。その1 つとして症例検討会があり,臨床推論過程の理解と臨床実践能力向上を目的として実施し,一定の成果を得ている。新人教育については法人独自の教育システムを展開しているが,中堅職員に対する教育機会が少ないことが課題である。症例検討会は臨床能力やコミュニケーションスキルの向上に効果的であり,中堅職員においても自身の臨床実践を振り返る良い機会になると考えている。今回,症例検討会についての意識調査を行い,各年代の傾向や課題を把握し,職場内教育の充実に向けた取り組みを検討した。

【方法】

当院PT36 名を対象に,2017 年度に実施した症例検討会(計4 回実施)についてアンケート調査を実施した。質間項目は,①「臨床推論過程を理解する」という目的についてどの程度理解できたか,②症例検討会での経験を臨床にどの程度活かせているか,③症例検討会全体を通しての満足度,④症例検討会に対する意見・要望についての4 項目とした。質問①~③についてはVAS(Visual Analog Scale)法にて,④については自由記載で回答させた。得られた回答を新人(1 ~ 3 年目),中堅(4 ~ 9 年目),ベテラン(10 年目以上)の3 群に分類し,年代別に比較検討した。

【倫理】

今回の調査・報告にあたり個人情報の流出防止,匿名性の保持について十分に配慮を行った。

【結果】

アンケート回答数は30 名(83.3%)であり,内訳は新人7 名,中堅10 名,ベテラン13 名であった。質問項目①についてのVAS の平均値は新人73.6,中堅70.7,ベテラン85.5 であり「目的の理解度」はベテランが最も高い傾向であった。質問項目②については,新人69.3,中堅62.0,ベテラン62.4 であり「臨床への活用度」は中堅が最も低い傾向であった。質問項目③については,新人81.4,中堅72.9,ベテラン72.7 であり「症例検討会の満足度」は新人が最も高い傾向であった。質問項目④について,新人からは「先輩の治療を見られるので勉強になる」,「仮説検証作業の流れを意識して介入するようになった」等の意見が聞かれた。中堅からは「他のスタッフからの客観的な意見は参考になる」,「症例検討会以外に治療技術向上のための学習機会を設けて欲しい」,ベテランからは「症例検討会後も定期的に同じ症例に介入する機会があると良い」,「自分自身の意欲向上につながる」との意見が聞かれた。

【考察】

当院で実施している症例検討会では,臨床推論過程の各段階をより意識的に実施できるようにするために役割分担を設けており,新人にとっては評価から治療までの流れを理解する良い機会であると思われた。それに対して中堅職員は「目的の理解度」「臨床への活用度」とも各年代の中で最も低い傾向にあり,臨床推論過程の理解を深める目的で実施している現在のスタイルは,中堅職員のニーズとは異なっているものと思われた。内山は「中堅職員は教育・研究に関する組織内の期待が高まる。この段階で臨床実践能力に対する業務配分や目標設定に葛藤が生じやすい。」と述べており,当院においても職場で期待される役割と中堅職員自身が興味を持つ学習課題に差が生じているものと思われた。

【結論】

アンケート調査の結果,症例検討会に対する意識は年代別に傾向が異なることが明らかとなった。各年代の職員が課題達成に向けて主体的に活動できるよう,学習目標の設定や分野別勉強会の実施等を検討し臨床教育の充実に努めていきたい。

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© 2019 日本理学療法士協会
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