理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-B-7-6
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病前サルコペニアの有無が脳卒中後急性期病院退院時の機能予後に与える影響
-前向きコホート研究-
野添 匡史山本 実穂久保 宏紀金居 督之島田 眞一間瀬 教史
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抄録

【はじめに・目的】

脳卒中患者の病前サルコペニアの有病率を検討し,病前サルコペニアの有無が脳卒中発症後急性期病院退院時の機能予後に与える影響を検討する.

【方法】

対象は2017年8月から2018年5月の間に伊丹恒生脳神経外科病院に脳卒中(脳梗塞・脳出血)発症に伴い入院し,同期間内に退院した者とした.除外基準として,65歳未満の若年者,発症後48時間以上経過して入院した者,病前modified Rankin Scale (mRS)≥4,脳卒中以外に身体機能障害を招く他疾患を合併している者,研究参加の同意が得られない者とした.対象者には入院3日以内にサルコペニアの質問紙票であるSARC-F(10点満点)を用いて病前のサルコペニア有無を判定した.サルコペニアの判定はSARC-Fのスコア4点以上とした.その他の患者属性として,年齢,性別,Body Mass Index(BMI),病型,病変側,合併症の有無,発症3日以内におけるNIH Stroke Scale (NIHSS)最低値,在院日数,急性期病院退院時のmRSについて診療録より抽出した.統計学的検定として,病前サルコペニアの有無で患者属性,在院日数,退院時mRSに影響を与えるか否か,Mann-WhitneyのU検定を用いて比較した.また,退院時機能予後不良(mRS≥4)に影響を与える要因を検討するために,年齢,性別,BMI,NIHSS,病前サルコペニア有無を独立変数,退院時mRS≥4を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.統計学的検定はSPSS ver15.0を用いて行い,有意水準はp<0.05とした.

【結果】

期間内に279名の脳卒中患者が入院し,除外基準に該当したもの及び測定協力が得られなかったものを除外した141例が解析対象となった.SARC-F≥4点となったものは27例(19%,サルコペニア群)であり,高齢でNIHSSが高値を示し,女性及び脳卒中既往者に多く脂質異常者に少ないという特徴があった.在院日数はサルコペニア群で有意に長く(24.3±13.0日:15.8±11.9日=サルコペニア群:非サルコペニア群, p=0.004),機能予後不良者も有意に多かった(14例(52%):19例(17%), p=0.0003).機能予後不良を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,NIHSS(p<0.0001,オッズ比1.93),病前サルコペニア(p<0.043, オッズ比3.75)のみが独立変数として抽出された.

【考察】

脳卒中患者の病前サルコペニア有病率は約19%であり,高齢者,女性,脳卒中既往者に多く,神経症状は重症化しやすかった.また,病前サルコペニアの有無は年齢,性別,身体組成,重症度とは独立した機能予後不良の要因であり,予後予測因子として重要と考えられた.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は甲南女子大学研究倫理委員会の承認を得ている.研究参加に対して全対象者に説明し同意を得ている.

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© 2019 日本理学療法士協会
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