理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: T-2-2
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短期集中型HAL治療の取り組み
堀川 貴広後藤 剛牧本 卓也田中 和彦山口 啓二
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キーワード: 短期集中, 有効性, 安全性
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抄録

【はじめに・目的】

HAL®︎ (Hybrid Assistive Limb®︎)医療用下肢タイプ(以下:HAL)は平成28年4月より緩徐進行性の8つの神経・筋疾患に保険適用が認められるようになった。HAL医療用下肢タイプ適正使用ガイドの適正使用量によると、効果を得るために頻度は週2回以上、回数は最低9回程度の歩行運動療法が推奨され、必要とした期間は平均4.78週であった。当院では平成28年10月より、HALを導入し、緩徐進行性の対象疾患に対し、2週間入院で計9回の短期集中型プロトコールでHAL治療を実施している。今回、短期集中型プロトコールにおける有効性と安全性について報告する。

【方法】

平成28年10月20日〜平成30年3月31日までに当院にHAL治療目的で入院し、緩徐進行性の対象疾患に該当する筋萎縮性側索硬化症(ALS)3名(プロトコール施行数8回)、筋ジストロフィー6名(プロトコール施行数17回)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)3名(プロトコール施行数5回)、脊髄性筋萎縮症(SMA)1名(プロトコール施行数1回)、封入体筋炎1名(プロトコール施行数1回)の計14名(プロトコール施行数計32回)を対象とした。HAL治療効果は退院時における2分間歩行距離・歩行速度・重複歩距離の改善率平均を算出した。また有害事象の種類と頻度について情報を収集した。

【結果】

結果は疾患別で(a:2分間歩行距離/b:歩行速度/c:重複歩距離)の順番で記載する。ALS(a:126%/b:152%/c:151%)、筋ジストロフィー(a:113%/b:110%/c:104%)、SBMA(a:133%/b:110%/c:108%)、SMA(a:165%/b:152%/c:123%)、封入体筋炎(a:124%/b:135%/c:118%)であった。有害事象は靴擦れ15.6%(5件)、皮膚炎9.3%(3件)、腸骨稜発赤6.2%(2件)、上肢疲労感3.1%(1件)、下腿カフ部の擦過傷3.1%(1件)、合計で37.3%であった。

【考察】

HAL治験によると筋肉痛、関節痛、疲労感などの有無や程度が一般的に連日の運動療法を行う上での許容範囲内である場合は、理学療法士等は担当医師と相談の上、週4回までの実施を可能とし、3日以上の連続した実施は不可とすると記載されている。当院においては、運動前後に修正Borgスケールによる疲労の確認や疲労に合わせた休憩時間の調整。また週1回の医師とのカンファレンスで患者の状態把握をした上、週4回以上かつ3日以上の連続した運動療法の実施を可能とした。歩行の改善率は各疾患の2分間歩行距離、歩行速度、重複歩距離において100%を超える改善率となった。短期間で実施した当院プロトコールにおいても改善が得られる結果となり、治験同様に9回実施したHAL治療の回数に効果があったと考えられる。また有害事象は治験における63.3%と比べ37.3%と低い値を示し、大きなリスクに繋がる事象はなかった。

 最後に、当院のプロトコールにおいてもHAL治療効果を認め、大きな有害事象なく遂行できた。短期に集中して行うことで入院患者の時間的拘束が短縮され、患者のQOL改善に寄与すると考えられた。

【倫理的配慮,説明と同意】

対象となる患者の同意を得て、当院の倫理審査委員会に承認された。

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© 2019 日本理学療法士協会
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