主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに,目的】
半腱様筋(以下ST)腱を用いたACL再建術後には,ST腱は再生するとの報告があるが,再生腱の機能的な回復過程は明らかではない。本研究では,再生腱の受動張力を,絶対的な組織弾性の評価が可能な剪断波エラストグラフィ(以下SWE)を用い,横断的に評価することを目的とした。
【方法】
対象は,ST腱を用いてACL再建術を行った術後1~18ヶ月の22名とした。超音波SWE装置(AixPlorer, SuperSonic Imagine)を用い,背臥位股関節屈曲90°より他動的に膝関節を伸展した際のST腱の,剪断弾性率を計測し受動張力の指標とした。術後時期毎の剪断弾性率の健患比の平均値を求め,さらに両者の関係について剪断弾性率を従属変数,術後時期を独立変数として回帰分析を行った。
【倫理的配慮】
本研究は対象者の同意,および横浜市スポーツ医科学センター倫理委員会の承認を得た。
【結果】
剪断弾性率の健患比は術後1ヶ月で0.53,2ヶ月で0.57,3~4ヶ月で0.95,5ヶ月で0.97,11~12ヶ月で0.92となった。回帰分析の結果,術後時期と剪断弾性率の健患比は有意な対数回帰を示した(R2=0.43,P<0.001)。回帰式より,健患比は術後3ヶ月で0.8,11ヶ月で1.0までの回復が見込まれた。
【考察】
再生腱の受動張力は,術後3ヶ月で健側の8割程度,11ヶ月で健側と同等まで回復する可能性が示唆された。再生腱の受動張力の回復は,膝関節屈曲筋力の回復に寄与している可能性が考えられる。